京都発のソーシャルアパレルブランド「JAMMIN(ジャミン)」。週替わりで様々なNPO団体とコラボしてオリジナルデザインのTシャツなどを販売し、Tシャツ1枚の売り上げごとに700円をコラボ先の団体へ寄付してきた。創業から5年。彼らが目指す、次の社会貢献とは?(JAMMIN=山本 めぐみ)

創業から5年、これまでに2,700万円以上をチャリティー

お話をお伺いした西田太一さん(左)と、世古口敦嗣さん(右)。オープンを目指している施設の前で

JAMMINの代表を務める西田太一(にしだ・たいち)さん(35)は30歳を目前にそれまで働いていた大手の開発コンサルタント会社を辞め、地元である京都府京田辺市でチャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」を立ち上げました。

アパレルに関しては全くの素人。「素人が簡単にできるような業界じゃない」「そんな甘くない」という周囲の反対を押し切り、試行錯誤を繰り返しながらJAMMINを少しずつ大きくしてきました。

国産にこだわった着心地の良い素材やチャリティーを感じさせないポップでおしゃれなデザインが人気で、これまでコラボした団体は239団体、チャリティー総額は2,730万円以上にのぼります。

JAMMINは、「チャリティーをもっと身近に!」を合言葉に、普段使いできるチャリティー付きアパレル商品を世に送り出してきた。現在、スタッフは5名。自社ブランドのTシャツを着て

アパレルブランドとして活動しながら、「障害のある人の働く場を作りたい」という思いがずっと心の中にあったという西田さん。創業から6年目を迎えた今、2019年4月を目指し新たに就労支援事業所B型をスタートさせる予定だといいます。

なぜ、障がいのある人の働く場を作ろうと思ったのか?話を聞きました。

きっかけは、ものづくりを通じて出会った家族

「地域に根ざした施設」を目指し、2018年7月より月に1回、「意見交換会」を実施。地域にどんな施設が必要か、障がいがある人にとって住みやすい街とはどんな街か等、毎月テーマを変えながら話し合ってきたという

西田さんが最初に障がいのある人の働く場を作ろうと思ったきっかけは、JAMMINの製品の縫製を請け負う工場の経営する男性とその家族との出会いでした。

「彼とは、これまで5年にわたってJAMMINの服づくりに携わってもらってきました。仕事を超えて付き合ううちに、ある時彼の娘さんへの思いを聞きました。彼女はダウン症。『どうしたって俺が先に逝ってまうやんか。そしたら、この子はどうなるんやろうって思うねん』と、彼が僕に言ったんです」

「当時は、僕たちもまだまだアパレルで精一杯の時期。自分の給料はもちろんなかったし、仕入れたTシャツの支払いにも困るような状況でした。けれど、この話を聞いた時に『いつか少しでも余裕ができたら、障がいのある人が働く場を用意したい』と思うようになったんです」

生まれ育った町の現状を知り、施設のオープンを決意

最初の頃はJAMMINが主体となって施設をオープンさせる予定はなかった、と西田さん。

「当初はJAMMINとしてではなく、大阪の方で縫製工場をやれないかという話があったのですが、すぐには難しいということになりました。そんな時に、過去にJAMMINとコラボした団体の関係者で『障害福祉にどうしても携わりたい』という方と出会って。縫製工場がすぐに無理なのであればJAMMINで何かできないかと思っていたので、そこで彼と意気投合して、少しずつ時間を作って話し合うようになりました」

「話し合いを始めてから、自分の住んでいる京田辺市の現状を調べてみると『働きたい』と就労の登録をしている障害のある人は500人以上いるにもかかわらず、市全体の就労支援施設の定員は140人ほどしかないことがわかりました。ほとんどの人が生まれ育ったこの街ではなく、市外に働きに出ているか、あるいは行き場もなく家の中に引きこもっているという現実を知った時に、『ここ、京田辺市でやろう』と決意しました」

「もう一つは、JAMMINとしてこれまでいろんな障害者支援の団体とコラボする中で、障がいのある人たちが抱える現状や生きづらさを知り、次第に『経営者として、自分にも何かできるのではないか』と思ったのもあります」

「農福連携」に可能性を見出す

オープンする予定なのは「就労支援事業所B型」。まずは農業に取り組む予定で、この秋からは畑となる定地で、草刈りと土作りを始めた。写真は、地元の農家さんから土作りのレクチャーを受けているところ

まずは農業に取り組む予定だという西田さん。なぜ農業なのかを尋ねてみました。

「京田辺市という場所は田園風景の残るのどかな場所ですが、京都市内・大阪市内へも車で30分の距離。朝採れた新鮮な野菜をそのまま都会へ届けられる立地です。JAMMINのオフィスの周りも田畑で囲まれたのどかな地域ですが、一方で高齢化が進み、耕作放棄地が増えているのも事実です。また、ベッドタウンで子育て世代が多く、安心・安全な野菜を求めている方たちも多いです。農業に取り組むにはベストな立地だと思いました。農福連携の可能性を強く感じています」

不安はないのか?という問いに、次のような答えが返ってきました。

「JAMMINを始めた時も『そんな甘くない』と散々言われました。立ち上げて3年間は自分の給料もなかったし、仕入れたTシャツの支払いにも困るような状況でしたが、本当に支えられて、なんとか5年目を迎えることができた。施設を始めると決めて、いろんな施設に見学に行かせてもらい、そこでたくさんの人に出会って、障がいのある人たちの可能性を感じたし、彼らができることはもっとたくさんあると思っています」

「障がいがあるからできない」モヤモヤをゼロにしたい

ここからは、西田さんと一緒に施設をオープンさせる世古口敦嗣(せこぐち・あつし)さん(31)に話を聞きました。

大学卒業後、ずっと福祉の世界で生きてきた世古口さん。重度の障がい者の訪問看護やデイサービスといった生活支援の現場で働いてきました。

独立を考えていたタイミングで西田さんと出会い、「障がいのある人が役割を持ち、生き生きと自分らしく輝く場所を作りたい」と話し合いを進めてきました。

世古口さんが10年にわたって障がいのある人たちと関わる中で見えてきたのは、生活する上での困難や生きづらさだったといいます。

生活支援の仕事を10年にわたって続けてきた世古口さん。「目が見えない彼女は自転車に乗ったことがありません。そんな彼女にタンデム自転車(座席が前後に2つ以上ある自転車)デートをお誘いしたときの写真。『風ってこんなに気持ちいいんだね』と彼女が僕に嬉しそうに伝えてくれました」(世古口さん)

「生活支援の仕事で出会ったBさん(40代)は脳性麻痺でした。体は少し動きますが、車椅子の生活を送っています。彼女は音楽が大好きで、『楽器やギターが触りたい』とずっと思ってきたのですが、周囲から『あんたには無理』と、一度も触らせてもらうことがなかったそうです」

「彼女と出会ってその話を聞いてある時ギターをプレゼントしたら、とても喜んでくれました。彼女が『次はスタジオに入りたい!』と言うので、二人でスタジオに入って、彼女が歌を歌って、僕がギターを弾いて、ドラムやキーボード、ベースのメンバーを呼んで、バンドを組んでライブをしたんです」

「ライブの後、泣きながら『ありがとう』と言ってくれた姿を見てすごく嬉しかったのですが、同時に違和感を感じました。僕は『これをしよう』と言われたことに乗っかっただけ。彼女のためとか、やってあげようとか、そんな気持ちでやったわけではなかったから…」

「彼女が30年間、ずっと『やりたいのにできない』というモヤモヤを抱えていたように、同じようなことが他の人たちにもあるのではないか、と思うようになりました。自分が携わることで、一つでもそのモヤモヤをゼロにできるんじゃないか。そう思った時に、ただの仕事だと思っていた障がい者福祉が『自分の人生を捧げて良い』と思えるものになったんです」

「役割」を持つことで、生きがいを感じられる

世古口さんが運営に携わるイベント「ミーツ・ザ・福祉」。「障がいのある人もない人も楽しめる」をコンセプトに、兵庫県尼崎市内の福祉施設や作業所を含むフード、クラフト、ワークショップなど60ほどの店舗が出店する大きなイベントだ

なぜ、長年働いてきた「生活支援」ではなく「就労支援」に携わりたいと思うようになったのか、世古口さんに尋ねてみました。

「一人の方との出会いがきっかけです。彼女はアスペルガーで、一般就労で清掃の仕事についていましたが、コミュニケーションが上手にとれず仕事を辞めることになってしまいました」

「その後就労移行支援の施設で働き始めましたが、月給は1万円足らずほど。以前の給料の15分の1しかありません。以前は働いたお金で親にプレゼントを買ってあげたり趣味にも時間を費やしたりしていた彼女が、収入が減ることで自信をなくし、自己肯定感を失って行動を制限してしまっている姿を見た時に、初めて『生活支援』ではなく『就労支援』を考えるようになったんです」

「好きなものを好きなように楽しむことに、障がいのあるなしなんて関係ないと思います。ぼくたちは楽しめる機会を提供していきたいですね」(世古口さん)

「生活も大切ですが、一人ひとりの『役割』が明確に出て、生きがいを感じられるのが仕事だと思いました。『役割を持つ』ということをもっと増やしていきたいと思ったときに、その一つが就労だと感じたんです」

農業をやることに対してはどんな思いがあるかを尋ねてみました。

「『百姓』という言葉は“百の仕事がある”という意味らしいんです。一概に農業と言っても作業はたくさんあって、それを細分化して千の仕事にした時に、その人ができることが一つでも二つでもあるはず。一人ひとりと丁寧に向き合いながら、それを見つけていきたいですね」

施設オープンのためのクラウドファンディングを自社で実施

これまで、5年にわたって毎週様々な団体とコラボし、オリジナルデザインを発表、売り上げの20%をコラボ先団体へとチャリティーし続けてきたJAMMIN。12月24日から2019年1月6日の2週間はJAMMINの新事業とコラボし、就労支援事業所B型オープンし農業を始めるにあたり、畑までの送迎車や農機具等を購入するための資金を集めます。

JAMMIN5周年記念デザインは3種類。Tシャツのほかにパーカーやスウェット、七分袖Tシャツなどから選ぶことができ、全額がチャリティーされる

「これまでのアパレルと同じように『僕たちが楽しいと思うこと』で、障がいのある人もない人も関係なく、たくさんの人を巻き込んでいくことが僕たちの使命だと思っている。これまでの5年間で皆さんに助けられ、支えられながら培ってきたことを、きっと新しい場でも生かせるはず」(西田さん)

5周年を記念したJAMMINオリジナルデザイン(3種類)のチャリティーアイテムは、JAMMINの主力商品であるTシャツのほか、パーカーやバッグ、キッズTシャツなど全59種類。今回はクラウドファンディングスタイルで、アパレル商品以外の返礼品も用意されています。

チャリティーアイテムの販売は、12月24日から年明け1月6日まで。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページから、施設オープンにあたっての二人の思いをご覧いただけます。是非チェックしてみてくださいね!

5周年を迎え、次のステップへ。JAMMINは2019年春の開所を目指して、障がいのある人が働く施設をOPENの予定です!

【JAMMIN】
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