31歳の誕生日を目前にALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された一人の男性がいます。当事者として自らが広告塔となり、ALSのむごさと、撲滅への思いを精力的に発信してきた藤田正裕さん。発症から9年。彼が今、抱く思いとは。(JAMMIN=山本 めぐみ)
「生かされてるんじゃなく、自分で決めて生きている」
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日本には9,600人を超える患者さんがいると考えられており、原因究明の研究が多くの研究者によって進められています。結果として身体のあらゆる箇所の筋肉が萎縮し、徐々に身体が動かなくなって、手足だけでなく話したり笑ったり、最終的には呼吸することすらできなくなってしまう難病中の難病といえるのではないでしょうか。31歳を目前にALSと診断された広告プランナーの藤田正裕(ふじた・まさひろ、通称「ヒロ」)さん(39)。今この瞬間も、闘病を続けています。
この4月、ヒロさんはALS撲滅のために2012年9月に立ち上げた一般社団法人「END ALS」(東京)のチームメンバーに、次のようなメッセージを共有しました。
「発病してから今に至るまで、様々な段階を経験してきた。その都度、気持ちも変化してきた。そして、現在の気持ちを伝えます。ネガティブな感情→体が全く動かない状態で人と言えるのだろうか?機械に繋がれて生かされているだけなのか?先のわからない未来に希望はあるのか?本当に治るのか?ポジティブな感情→体は動かなくてもいろんな感情も感覚もあるし、人間として感じている生きている。生かされてるんじゃなく、自分で決めて生きている。 絶対にALSを殺す! 治って自由を手に入れる。両方の感情が共存して、毎日闘っている。これが今のありのままの自分だから、ありのままを世の中に伝えていきたい」(原文ママ)
新たな技術を使ったコミュニケーションを目指す
ALSは、思考はハッキリしているのに身体のすべての自由を徐々に奪っていく病気です。その中で唯一、眼球を動かす筋肉はALSに侵されにくく、視覚を用いてコミュニケーションをとることが可能ですが、ALS患者の10%強は目をも奪われてしまう完全な閉じ込め状態(Totally Locked-in State、TLS)となってしまうといわれています。
「まだヒロがそうと決まったわけではないのですが、長らく目の厳しい状況が続いています。徐々に眼球運動を使ったコミュニケーションが難しく、現在は毎日接してくださっているヘルパーさんの力を借りてコミュニケーションを図っています。目が閉じてしまうと、外とのコミュニケーションが遮断されます。その恐怖とヒロは闘っています」
そう話すのは、END ALSのメンバーである大木美代子(おおき・みよこ)さん。ヒロさんとは外資系広告会社マッキャンエリクソンの同僚として、ALS発症後は団体のメンバーとして共に歩んできました。
「現在、TEAM END ALSでは脳波を使って意思表示ができないか、様々な方のご協力を得ながら『NOHAプロジェクト』をチームで模索しています。まだまだ未知数なので、また発表できるようになったら、皆さまにシェアしたいと思っています」(大木さん)
「すべてありのままをさらけ出したい」
「ヒロはALSによって体の自由を奪われ、さらに唯一のコミュニケーション手段である目が閉じてしまったらどうしようという不安と闘っていることを想像すると、胸が締め付けられる思いです。研究が進み、1日でも早く治療法が見つかって欲しい。一人でも多くの方にALSを知ってもらい研究資金が集まることで、より早い治療法の確立につながると信じてチーム一同活動しています」と大木さん。
冒頭で紹介したヒロさんのメッセージについて、その背後はヒロさんのどんな思いがあったのかを尋ねてみました。
「これまでもヒロは、様々なコミュニケーションを通じて『ALSに絶対勝つ』という姿勢を示すことで、同じALSと闘う患者さん、それ以外の病気と闘っている患者さん、そのご家族、友達、仲間、健常者含めたくさんの方に勇気を与えてきました。ネガティブ、ポジティブな感情も含め、すべてありのままをさらけ出したいというヒロの意思を尊重し、ヒロなら絶対に勝てる!と信じて今後も活動したいと思います」
“I’m still alive”、『まだ生きている』に込められた思い
筆者がEND ALSと出会って3年。以来、毎年6月21日の「世界ALSデー」にあわせ、活動について取材をさせてもらっています。
今回、ヒロさんの「ありのままをさらけ出したい」というメッセージは、これまでの彼の発信とは少し異なる印象を覚えました。「生かされてるんじゃなく、自分で決めて生きている」というメッセージに、自由を奪ったALSをそれまでのように「拒絶」するのではなく「受け入れ」、その上で「絶対勝つ」とおっしゃっているのではないかと感じたのです。そのことを大木さんに伝えると、大木さんは少しの間をおいて、次のように話してくれました。
「団体を立ち上げた時から発信している“I’m still alive”、『まだ生きている』というヒロのメッセージに込められた意味を、一人のメンバーがヒロに直接聞いた時、ヒロは「いつの日か自分が居なくなっても、僕はみんなのなかで生きているよ」という思いが込められていると話してくれたそうです。
このメッセージを改めて見返してみると、身体が動かなくなっても、コミュニケーションをとるのが難しくなっても『僕には感情がある、生きて、まだここにいるよ』というメッセージでもあると感じています」(大木さん)
闘うヒロさんへ。友人からのメッセージ
ヒロさんがALSと診断されて今年で9年。ヒロさんが10代を共に過ごした同級生、後輩の方たちから、今回メッセージをいただくことができました。
・「本当に強い奴ってこう言う奴の事を言うんだろうな」–JESSEさん(RIZE/ The BONEZ)
「ALSと戦い始めて9年…きっと想像も出来ないほどの苦しみとムカつきと戦い続けてるんだと思うと胸が苦しくなる。本当に強い奴ってこう言う奴の事を言うんだろうな。この9年間で数えきれない人が僕にHIROさんが頑張って戦ってるおかげで今も諦めず生きれてます!ありがとうございます!って涙が止まらない時がいくつもあった。知らぬ間に本当のヒーローになってるぜHIRO」
・「『神様は乗り越えられない試練は与えない』って言葉を信じて、HIROが治ることをいつも祈ってます」–熊川順子さん
「『神様は乗り越えられない試練は与えない』って言葉を信じて、HIROが治ることをいつも祈ってます。HIRO、なにがあろうといつも思ってるよ。なかなか会いに行けないときもあるけど、心はいつも一緒だよ。きっともう少しでALSを食い止める手段ができるはず!それまで頑張って闘おう!HIROなら出来る!絶対に!」
・「彼の持つ勇気と強さは稀で、我々のお手本であり、毎日を精一杯生きなくてはと思わせてくれています」–Shenさん(Def Tech)
「ヒロは、人として最も想像を絶する状況に置かれています。彼の持つ勇気と強さは稀で、我々のお手本であり、毎日を精一杯生きなくてはと思わせてくれています」
ALSを終わらせるために。治療法確立を応援できるチャリティーキャンペーン
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「END ALS」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×END ALS」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円がチャリティーされ、ALSの治療法を1日でも早く確立するため研究を進めている京都大学iPS細胞研究所や慶應大学医学部などの医療機関への研究資金となります。
コラボデザインは、“END ALS. I’m still alive”という 団体立ち上げから変わらないメッセージを、タイポグラフィで力強く表現しました。
諦めず闘い続ける現在の姿と、ALSに打ち勝った日の勝利の光景を一文字一文字に込めています。
チャリティーアイテムの販売期間は、6月17日~6月23日の1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。
JAMMINの特集ページではJESSEさんやShenさんからヒロさんへのメッセージや、大木さんへのインタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
・「END ALS」。治療法が見つかり、ALSがなくなる日まで。共に闘い、病に打ち勝つ〜一般社団法人END ALS
山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。創業6年目を迎え、チャリティー総額は3,000万円を突破しました。
【JAMMIN】
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