気候変動問題に取り組む国際環境NGO 350.org Japanの代表に元富士火災社長の横山隆美氏が5月20日付けで就任していたことが分かった。横山氏は米・大手保険会社のAIGに42年間勤務し、キャリアの後半は、AIG傘下のアメリカンホーム、AIU、富士火災の社長を歴任した。地球環境問題に関心が強く、同団体の活動にもボランティアとして関わっていた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

新代表に就任した横山隆美氏(写真提供:350.org)

350.org Japanでは、化石燃料や原子力関連企業に投融資している銀行から、預金を「ダイベストメント(投資撤退)」することを呼び掛けるキャンペーンを展開している。6月6日には、東京・丸の内で「1.5℃目標と整合的な金融とESG投資〜気候変動リスク開示と責任ある投融資のあり方〜」と題した勉強会を開催した。

同会では、6月8〜9日に福岡で開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下G20財務大臣会合)を前に、日本の金融機関が気候変動問題の解決に向けて果たす役割について議論を行った。

「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」では、2017年に金融セクターに対して気候変動リスクへの対応策強化を提言した。2019年2月時点で、世界トップ40に入る銀行の40%と20の世界的な保険会社を含む100以上の金融機関が石炭からのダイベストメントを発表した。(参考:IEEFA)

世界では金融の脱炭素化の潮流が起きているが、日本の大手金融機関は逆行している。2015年のパリ協定採択後の3年間で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の3行は、合計で1860億ドルを世界の化石燃料部門に資金提供した。(参考:RAN他「化石燃料ファイナンス成績表2019」日本語要約版発表)

石炭関連投融資に対する批判が高まる中、日本のメガバンクは昨年から今年にかけて相次いで石炭火力発電に対する融資方針を改訂。MUFGは原則新規の石炭火力発電へ融資を行わないとした。しかし、例外規定も設けられており、350.org シニアキャンペーナー東アジアファイナンスの古野真氏は、「高効率の石炭火力発電に限定するとしたSMBC、みずほとともにパリ協定の1.5℃目標と整合していない」と批判した。

350.org Japanは、麻生太郎財務相、黒田東彦日本銀行総裁、遠藤俊英金融庁長官、邦銀に対し、TCFD提言に沿った情報開示の実施、パリ協定の1.5℃目標に整合した投融資方針の策定、石炭火力発電・化石燃料開発への新規融資停止と自然エネルギー社会への移行を促す投融資の実施などを求める「ダイベストメント宣言」をこのほど提出した。

署名数は909人(うち、学生366人、10〜20代50%)、推定預金総額22億4450万円に上っている。

古野氏は、「金融の脱炭素化が1.5℃目標の実現の中核だ」と話した。企業が今後、気候変動に積極的に取り組む意義について、「企業のブランド価値を高めるだけでなく、将来の人材獲得という側面でも大きな効果が見込まれる」と強調した。

国際環境NGO 350.org Japan

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