元サッカー日本代表監督で現在、中国のプロサッカークラブ「杭州緑城足球倶楽部」の監督を務める岡田武史さん。早稲田大学や立教大学でも教鞭を取り、森の生態系など環境学習を専門とする。「これからの時代を創るのは若者たち」という岡田さんからエシカル志向の若者たちへのメッセージを伺った。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

岡田武史さん


——岡田さんは大学で環境学習をテーマに教えていますが、岡田さんの目から見て学生の印象はどうでしょうか。

岡田:物事の本質に気付く能力は高いと思っています。例えば、車の免許を持ちたがらないし、セックスレスの若者も多くいます。でも、このことは、「もう地球環境が限界に来ている」と肌で感じているのではないでしょうか。車による環境汚染や、人口爆発を防がなくてはいけないという思いからこのような行動を取るのではないかと思っています。

もちろん、私たちの世代からすると、車を持ちたがらないし、恋愛もしたがらないことは考えられないことでした。ですから、世間的には「草食系」だと言われています。しかし、実際に接していると、そのような印象は抱きません。決して弱くはないと思います。

私たちの世代の価値観に当てはめようとするから、偏見の目で見てしまうだけで、若者たちの価値観に触れれば、新しい気付きを得るはずです。そして、それが本質をとらえているとわかります。

だって、「車と足どちらがいらないですか?」と聞かれたら、答えは決まっていますよね。「足」と答える人はいないでしょう。

——しかし、そうはいっても車がないと不便だと言う人も多くいると思うのですが。

岡田:もちろん、その通りです。多くの人がそのように言うでしょう。しかし、もうそんなことを言っていられない状況にきていると気付かないといけません。よく、環境学習の一環で学生たちを自然の森などに連れて行くのですが、それは「足るを知る」ためです。

自然の中にいると、絶対に人間が敵わないものがあるとわかります。なので、今できることで工夫しながら生活する術を身につけられます。この「足るを知る」ことを若者たちに伝えています。

——確かに、物質的に豊かな都心部ではそのような感覚に気付けないかもしれませんね。

岡田:便利・快適な社会の中では、そういった生きるための意欲はなかなか涌いてきません。だからこそ、満たされた環境にいる若者たちには何かに一歩挑戦してほしいです。エシカルなスイッチはすでに全員のDNAの中にあると思っています。そのスイッチを入れるためにも、とにかく自分の足で動いてみることです。

興味のあることなら、何でもいいと思います。自分の足で動かないと、この便利な世の中ではスイッチが入りません。

——そのエシカルなスイッチが本質をとらえているということですね。しかし、岡田さんと同世代の大人たちから理解を得るのが難しいという声も聞かれますが。

岡田:私と同世代の方には2つのことを伝えたいです。自分たちの価値観を押し付けずに若者たちをリスペクトすることと、引き際をしっかりと持つことです。

若者たちには自分たちの価値観を信じて、活動してほしいです。私はそのような若者たちの動きをサポートしていきたいと思っています。