コンゴの少年兵の成長を描いた映画「魔女と呼ばれた少女」の日本公開を記念してトークショーが開催された。登壇したのは、戦場ジャーナリストの渡部陽一氏と、チャリティーランでコンゴの女性や子どもたちを支援するリサ・シャノン氏。戦場を見てきた2人が若者に伝えたいことは何か聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長)

渡部陽一氏とリサ・シャノン氏


どんな状況でも、必ずできることはある

——2005年からチャリティーランである「ラン・フォー・コンゴ・ウィメン」を開始して、現在までに110万ドル以上の寄付金を集め、6万6千人以上の女性や子どもたちの支援をしています。チャリティーランを始めたきっかけを教えてください。

リサ:2005年、アメリカ番組でコンゴの女性の現状を見てショックを受けました。その番組では、コンゴの混乱状態が第二次世界大戦以来最悪だと知りました。


しかも、アメリカにいる人たちがほとんど、その事実を知らないことがもっとショックでしたね。あるコンゴの女性は、兵隊に連れ出されて、レイプされ『殺す』と言われました。

このような残虐な行為をされても、誰からも慰められずにいます。非人道的な扱いを受けているのにも関わらず。この現状を受けて何もしないことは犯罪に加担しているかのような気分になり、何かをしたいと思い始めました。

——なぜ「走る」ことを選んだのですか。

リサ:走ることが自分にできる唯一のことだと思ったからです。それに、彼女たちと走るとエネルギーを共有できると思ったからです。

——日本に来日して、若者に伝えたいことは。

リサ:たとえ悲劇的な状況でも、必ずできることがあります。一人ひとりが勇気を持つことで、とてつもなく大きな力が生まれます。リスクを怖がらないで、一歩前に踏み出して欲しいです。

少年兵も、兵士も誰も戦いたくはない

——これまで数々の戦場を見てきました。渡部さんにとって正義とはどのようなものでしょうか。

渡部:私がカメラマンになった初心は、戦場で泣いている子どもたちの様子をたくさんの人たちに届けることです。世界中で起こっている戦争は、民族・宗教・環境戦争など種類は無数にあります。でも、それぞれの国から見ると、それぞれの言い分があり、どちらが正しいとは一概に言えません。

正義とは、どの国のどの地域でも、家族がみんな安心して暮らせる状況にすることだと思います。戦場で暮らしている家族も、日本で暮らしている家族も、生活の仕方はほとんど変わらないのです。朝起きて、ご飯を食べて、お母さんが子どもたちを学校へ送って、夜は家族と眠る。戦場だからといって、生活の暮らし方に違いはありません。

家族が安心して、このような暮らしができる環境を作ること。そのための一歩を踏み出すことが、正義に近づくことだと思います。

——無理矢理拉致されて家族の殺害を強制させられる少年兵やレイプされる子どもがいます。戦場を生きる子どもたちの思いはどのようなものなのでしょうか。

渡部:子どもたちも、どの兵士も、誰も戦争はしたくありません。どうして、子どもたちも、兵士も、武器を持って戦うのでしょうか。宗教や民族を守るためという大義を掲げている人もいますが、一番の動機は、家族を守るためです。

どの戦場でも共通していたのですが、最後まで生き延びる最も有効な手段は、家族と一緒にいることです。そこでは、自分たちの身を武器で守るのではなく、教育や医療で危険を回避しています。

そもそも、武器を持って戦う少年兵は誰も戦いたくないのです。でも、戦場では、家族を守るために戦わざるを得ないのです。

——日本の若者たちに伝えたいことは何ですか。

渡部:世界情勢と日本は必ず深く繋がっていると感じています。日本の若い人たちに伝えたいことは、『どんどん外国に飛び出してほしい』ということです。

外国へ行き、世界中の人たちの声を聞いてほしいです。びっくりすることや、信じられないことなど、たくさん降り掛かってくると思います。でも、それは必ず、若い人たちの将来へ、大きな力になります。

安全はもちろん最優先にして、自分が興味ある国へ行ってみてください。時間と余裕が許す限り、世界の声を聞いてほしいです。


リサ・シャノン氏の著書『私は、走ろうと決めた。——「世界最悪の地」の女性たちとの挑戦』

「魔女と呼ばれた少女」公式サイト