インターネットを使った選挙運動であるネット選挙が解禁し、政治はどう変わるのか。低迷が続く若者の投票率は上がるのか。メディアアクティビストの津田大介さんに今後の政治の展開を聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

津田大介さん

——ネット選挙が解禁しましたが、仲介にネット業社が入ることによって、情報が透明化されるはずが、隠れてしまうかもしれないとの声もあります。

津田:結局のところ、ネット選挙が解禁して変わるのは、投票率です。投票を呼びかけることが、どれだけできるのかが問われます。短期的には、従来よりもお金がかかってくるでしょう。今までのビラやポスターでの宣伝も続けた上で、ネットにも広報していくので。資金力の差は大きな問題になります。

ただ、ネットは無料でできるので、支援者・支持者のなかで、ネットでの情報発信に精通している人をボランティアに巻き込めるかが焦点になってきます。
仲介業社に高いお金を支払うよりも、ネットでの情報発信に長けている支持者がいるだけで、状況は変わってくるでしょう。

——津田さんには声がかかってきていますか。

津田:私のところには来ていません。

——先の選挙は、東日本大震災・原発事故以来初の選挙でしたが、戦後最低の投票率を記録しました。ソーシャルメディア上での盛り上がりと、リアルでの関心事は異なっていたのかと思っています。ネットとリアルの差は何でしょうか。

津田:衆議院議員総選挙の年代別の投票率を見ても、どの年代もすごく落ちています。これまで8割ほどが投票していた60代も落ち込んでいます。これは、投票日が12月16日で、すごく寒かったということも要因にあると思います。

加えて、どこの党にも入れるところがなく、争点がわからなかったということもありますね。

——一方的にネットで盛り上がっていると勘違いしてしまったとの声もあります。

津田:ネットとリアルは近づいています。ネット上で、安倍政権に期待する政策のアンケートをしました。結果は、国防よりも経済対策が一位でした。これは新聞の世論調査でも同じことです。

——アメリカでは、オバマ大統領のミシェル夫人が自身のツイッターで、有権者一人ひとりへ投票を呼びかけるDM(ダイレクトメッセージ)を送りました。日本では、選挙を盛り上げるミシェル夫人的存在はいますか。

津田:ソーシャル上で影響力のある人が呼びかけていくことが大事になってきますが。誰かが出てくるかもしれませんね。

——インターネットを選挙活動に運用すると、政治はどうなっていくとお考えでしょうか。

津田:ネット選挙が解禁されたことで、今までより、多くのネガティブキャンペーンが出てくるでしょう。その都度、政治家が説明していく機会は増えていきます。

また、色々な人が政治に関する情報を発信することで、まったく政治に興味がなかった人も考えるきっかけを得ます。それが投票率につながるでしょう。

今までの選挙は、ポスターや街頭演説などでの印象が強かったです。ポスターと握手してくれたかだけで投票する候補者を決めるのではなく、政治家のサイトにアクセスし、候補者の考え方を見て決めるようになれば、結果も変わってくるのではないでしょうか。ネット選挙に過度な期待をしてもダメだし、恐れる必要もないです。

——ネット選挙が解禁したことによって、ソーシャルメディア上で影響力のある人が立候補することもありえますか。

津田:参議院の全国比例区だったらあるかもしれません。ただ、供託金が高いので、参入への障壁になっています。無所属は厳しいですが、どこかの党に所属すれば話は違います。