シンガーソングライターの尾崎裕哉さん(27)が3月22日、「LET FREEDOM RING」でデビューした。尾崎裕哉さんは故・尾崎豊の息子。オルタナS編集部は2016年5月にインタビューしており、「音楽で社会問題を解決したい、父ができなかったことをしたい」と話した。なぜ社会問題に関心を持ったのか、そして、音楽活動で何を伝えたいのか聞いた。当時のインタビュー記事を一部編集して、再掲する。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)
■ミュージシャンの社会的責任
――裕哉さんは「Music save the Earth」を掲げ、「人種・貧困・環境などの社会問題を音楽で解決する」という志を持っています。なぜ社会問題に関心を持ったのでしょうか。
尾崎:ぼくが高校生のとき、進路について考えていた時期に、国際NGOルーム・トゥ・リード(RTR)創設者兼共同理事長のジョン・ウッドが授業に来てくれました。1時間に1つ、貧困地域に図書館をつくっている彼の言葉にすごく感銘を受けて、ぼくも将来は彼みたいに、世界にインパクトを与える人になりたいと思いました。
当時は、グラミン銀行を創設したムハメド・ユヌスがノーベル平和賞を受賞し、ソーシャルビジネスが話題になっていましたし、ap bankやライヴエイドなどで環境問題の深刻さを訴えていました。
高校では、environmental science(環境科学)という授業を受けていて、人間の活動がどれだけ自然環境に依存しているのかを示す指標である「エコロジカル・フットプリント」について教わっていました。
このままの活動を続けると、自然資源がなくなると分かったので、音楽で、社会に貢献したいという志が生まれました。
――社会問題を解決するために、音楽の役割は何だと思いますか。
尾崎:大学4年生のとき、東日本大震災から1カ月後の4月11日に、友人を乗せてぼくの車で石巻にボランティアに行きました。2日間、車内で寝泊りしながら、がれきや瓦の撤去をしたのですが、そのときに、このような状況で、音楽にできることは何か考えていました。
音楽は心のケアはできますが、物理的なケアはできません。だとしたら、ミュージシャンの社会的責任とは何か。ミュージシャンが本業を通して行うことといえば、感動や勇気などを届けることだと思いますが、ぼくはそれだけではなくて、何か踏み込んだことができるはずだと思っています。
――今後、音楽活動を通してどのようなメッセージを伝えていきたいでしょうか。
尾崎:ミュージシャンの存在価値は、歌を作ること以上に、生きざまを見せることにあると思っています。ぼくのなかでのミュージシャン像は、頼れる兄貴みたいな存在です。だから、ぼくもそうなりたい。ぼくの音楽を通して、社会問題にも関心を持ってくれたら素敵ですね。
父が歌っている映像を見て、音楽には人を熱狂させる力があると確信しました。父ができなかったこと、もしくは、やり残したことは、音楽を使って社会を良くしていくことだと思っています。だから、高校生のときに、ぼくは音楽で社会問題を解決しようと決めました。
ぼくはまだ、「we are the world」のような壮大な歌を歌える年頃ではないです。でも、社会問題は、小さな問題もあれば大きな問題もある。ぼくなりの視点で歌を作り、社会問題の解決に向けて活動を続けていくことの大切さを伝えていきたいなと思っています。
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尾崎裕哉:
尾崎豊の息子。1989年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。幼少期の10年間をボストンで過ごす。「人種・貧困・環境などの社会問題を音楽という手段によって解決しよう」という志のもと、「Music save the Earth」を掲げてシンガーソングライターとして活動中。自身のラジオ番組『CONCERNED GENERATION』ではディスクジョッキーを務めた経歴をもつ。