東日本大震災を契機に、NPOやソーシャルビジネスが続々と立ち上がり、2013年は「エシカル元年」とも言われた。しかし、消費や就職の際に、エシカルな選択をする層はまだまだ少ない。一人ひとりがエシカルなマインドを持つためには何から始めたらよいのか、安倍晋三首相夫人の安倍昭恵さんの考えを聞いた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)
――日本のフェアトレード市場規模は、2012年で72.8億円(英国2,500億円、ドイツ700億円)で、年間一人当たりのフェアトレード製品購入額は57円(スイス3,992円、アイルランド3,906円)です。(特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン調べ)エシカルなマインドを根付かせるために、どうしたらよいとお考えでしょうか。
安倍:この「エシカル」という言葉は、まだまだ知られていないと思います。トレンドになって、そういう選択をする人がかっこいいと思われるようになれば、今の世の中の空気ならドッと流れるはず。
同じような商品を選ぶときには、やっぱり、安いほうを選んでしまうもの。購入するときに、少しだけでも、この商品は誰が、どこで、どのように作ったのかと、思いを馳せられるようになると良いのですが。
そういう選択ができるようになるためにもまず、日本人が世の中で起きている社会問題を知らないといけないですね。世の中には、隠れている問題がたくさんあります。例えば、輸入木材。日本に輸入されている木材の約6割が違法伐採されたグレーな材木です。木は見た目だけではどこ産なのか分かりづらいですが、厳格なルールで管理された木材には、森林認証製品として「FSCマーク」が付いています。
でも、このマーク自体を知らないという人も多くいるのではないでしょうか。知ることから始めて、一緒にどうすれば広めていけるのか考えていきたいですね。若い人たちは、インターネットで情報を得ようとしますが、正直オススメはしません。発信者が明確に分かる情報をもとに知識を深めてほしいです。
――日本にあるNPO法人の数は5万を超えて、コンビニエンスストアの数と同じです。NPOを就職・転職先に選ぶ若者も増えています。安倍昭恵さんは今の若者をどう見ていますか。
安倍:今の若い人たちの価値観は、昔と比べて確実に変わってきていると思います。若者たち全員がそうとは言い切れませんが、一部の層では、自分一人よがりの考えではなく、みんなとつながって、この地球を守っていくんだと考える人たちがいます。
私が若い頃は、まさにバブルの時代だったので、「環境を大切に」と言いつつも、生活はまったくエコとかけ離れていたりする人が多くいましたね(笑)。でも今は、言葉だけでなくて、日々の生活にオルタナティブな考えを取り入れて、消費や仕事を選ぶ人たちが少しずつですが増えている気がしています。
――「つながって、問題を解決すること」が若者の特徴の一つだと見ていますが、民泊やカーシェアリングなど、シェアする動きが今後の日本の課題を解決する有効な手段になるとお考えでしょうか。
安倍:私もゲストハウスをつくることにしていて、そのことを発信すると、「ぼくもゲストハウスを運営しています!」「ゲストハウスの企画にかかわりたいです」との声をもらいます。そのたびに、なるほど!若い人たちはこういうシェアな動きに関心があるのだなと気づかされます。
自分が所有したいというよりも、みんなでシェアしたい、それも居心地の悪いシェアではなく、同じ価値観を持つ仲間たちとシェアしていきたいという感覚でしょうか。この動きは、一歩間違えると、自分たちだけの自己満足のように見えるかもしれませんが、この意識は確実に広がってきているでしょう。
つながって、みんなで良くなっていきたいという思いは、みんなで地球を支えあっていきたいという思いとリンクしている気がします。私はこのような意識を持つ若者の動きには期待していますよ。偉そうにしている頭が硬い大人たちよりもずっと。
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