――全国を周って、まちづくりを行ううえで、軸にするものは何だとお考えでしょうか。

井上:大事なのは、外の人との交流ですね。自分たちだけでは良さに気付けなかったりするので。

――外部の人と内部の人とをうまくつなぎ合わせるために工夫していることはありますか。

井上:よく、「まちづくりのときに、対立しないのですか」と聞かれますが、それはまちづくりではないのです。何かに賛成・反対と意見を聞くことは、まちづくりではなくて、目の前にいる一人ひとりの考えを大切にして、その考えをつなげていくことがまちづくりです。

だから、対立は起きないのです。そもそも、対立が起きそうなアジェンダを選んではいけないのです。

長島町は鰤の町ともいわれるほど、漁業が盛ん

長島町は鰤の町ともいわれるほど、漁業が盛ん

――対立させないアジェンダを設定できるのは、日ごろから地元の人の声を聞いているからでしょうか。

井上:そうですね。なかなか話してくれない人には、お菓子やアイスクリームを買っていくなどしましたね。外とつながってまちを盛り上げていこうという意思を表示するために、会った人の名刺を役所の壁に張ることもしています。

まちづくりは、みんなが関心を持てば良いものができるのですが、興味がない人を無理やり引っ張ってくるものではないです。「楽しい」と思った人と協力しながら行えばよいのです。

――住民や外部人材を巻き込みながらできた施策はどのようなものがありますでしょうか。

井上:例えば、長島町には「ぶり奨学金」があります。これは、卒業後に長島町に戻ってきた場合は、その期間の奨学金の返還を免除するというものです。

ぶり奨学金が生まれた背景には、町内に高校がなく、寮費などで家計に負担が増したり、若者の人口流出につながっているという課題がありました。

準備を進めている段階ですが、バイオマスもそうです。通常、豚農家や鳥農家など養鶏家だけがフンの匂いを処理したいがためにやってしまいます。ですが、それはほとんど失敗していて、その理由は、供給量が少ないからです。

だけど、町全体に視点を広げると、漁協にも、農協にも、そして、焼酎をつくるさいにも廃棄物が出ます。廃棄する量が増えれば収益もよくなります。バイオマスができると、長島町では生ゴミ処理に1億円かけていますが、このコストも削減され、みんながハッピーになります。

長島町には、地形と人口的な問題から、防災無線しかなく、地元メディアがありません。そこで、漁師や農家の人の働きぶりを発信する雑誌「長島大陸食べる通信」も立ち上げました。現在、その編集長を募集しています。

この雑誌を長島町につくることで、漁協組合の考えも変わってきました。これまでは、大量生産型の思考でしたが、外部から来たデザイナーと話すことで、漁師の個人向けブランドづくりがいかに大切か認識しだしました。

この雑誌は、地元の中学校にも置いてもらうので、雑誌を読んだ地元の子が、漁師・農家がかっこいいと思い、次の担い手が生まれるかもしれません。

もう一度言いますが、地域づくりは対立を解消するものではないのです。そもそも対立を起こすアジェンダ設定がおかしいのです。そのために大事なことは中の人だけでなく、外の人もしっかり入って議論することです。

長島町ではスタンバイで人材を募集している。スタンバイはビズリーチが運営する媒体で、掲載費・成功報酬などすべて無料。写真は11月4日に開かれた記者会見で、ビズリーチの南壮一郎社長と

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◆長島町では、24の職種で人材を募集中。詳しくはこちら

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