大阪市西淀川区に、今年で15周年を迎える、地域に根差した子ども支援を行うNPOがあります。「地域の大人たちが、子どもたちに気軽に『どないしたん?』と声をかけられる関係をいかに作っていくか、試行錯誤を重ねてきた15年だった」と振り返るのは、団体を立ち上げた西川日奈子さん。5年前に代表を息子の奈央人さんに譲り、二人三脚で活動を続けています。(JAMMIN=山本 めぐみ)

子どもたちの居場所や体験づくりのために活動

コロナによって経験が減っている子どもたちのためにと、様子を見ながらさまざまな企画を実施。「密を避けて屋外へ。淀川沿いを皆でサイクリングも企画しました。2人乗りのタンデム自転車もレンタルして、ワイワイと交代しながら風を切って走りました」

NPO法人「西淀川子どもセンター」は、子どもが自分自身を大切な存在と感じ、安心して納得した人生を送ることができるようにと、地域に根ざした子ども支援を行ってきました。しかしここ数年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、それまで定期開催していた子ども食堂の開催など、対面の行事の開催が難しくなったといいます。

「なかなかそれまでのように気軽に『ごはんを食べにきてね』と誘うことが難しくなりました」と話すのは、団体代表の西川奈央人(にしかわ・なおと)さん(42)。

緊急事態宣言が出てからは、子どもたちとのごはん会を一旦休止し、お弁当を持ち帰ってもらうスタイルにしたり、食事以外で密を避けて集まれる場を作ったりと、あの手この手で活動を続けていました。

「コロナによって子どもたちの体験がより減っていることは肌で感じていたので、羊毛フェルトづくりのワークショップやアロマセラピー、家にこもりがちな子どもたちと一緒に外に出て遊歩道をハイキングしたりサイクリングしたりと、様子を見ながら何らかのイベントを開催して、つながり続けていました」

同じ区内で活動する団体や自治体とネットワークを構築

毎週末に開催していた子どもたちとのごはん会「みんなでごはん!食べナイト?」は、大阪の新型コロナ感染状況を見ながら、一時はお弁当を作って持ち帰る形式に切り替えて実施していた

2019年には、西川さんたちの呼びかけで、同じ西淀川区内で子ども支援の活動をしている団体と「西淀川こどもネット」を立ち上げました。

「現在は区内で活動する11団体(+協力4団体)が登録しています。地域の中で、少しずつですがお互いの顔が見えるつながりができてきました」と奈央人さん。

登録しているのは、100人を超える規模の子ども食堂から外国にルーツのある子どもとその家族を支える団体までとさまざま。「お互いに課題や情報を共有したり、コロナ禍においては、ご支援でいただいた食糧や日用品を共有したりする時などにネットワークが前向きに活用されています」と話します。

「それぞれの団体さんにもしんどい時や浮き沈みもありますが、自分たちだけでがんばろうとすると潰れてしまう」と話すのは、奈央人さんの母で、15年前に西淀川子どもセンターを立ち上げた日奈子(ひなこ)さん(67)。

お話をお伺いした西川奈央人さん(写真左)、日奈子さん(写真右)

「点を線でつないで、『今日、他で誰かもがんばってるんやな』と思うだけでも力になるし、何かあった時に『こんなことがあったんやけど』と話せて、励まし合える場になればという思いもありました」と地域のネットワークへの思いを語ります。

「何よりも子どもたちのことを思うと、中学校の校区に一つぐらいのイメージで、子どもたちが自分の足で歩いていける場所に、何か子ども支援をしている拠点があるというのはすごく良いこと。少し離れた地域から通っている子に対して、『家の近所にもこんなところがあるで』と言えて、スタッフを紹介できたら、何かあった時に相談しやすく、子どもにとっても安心」と話します。

「子どもは、『親がめっちゃ喧嘩するねん』とか『何も食べてないねん』とか、自分が抱えていることを積極的には話しません」と日奈子さん。


「だから実際は、『何かあれば子どもが駆けこめる』ではなく、大人から『何かあった?』と子どもに声をかけたり、相談を受けられる関係性を作るのが大事。一度でもつながってお互いの顔を知っていれば、大人もその子を見かけた時、声をかけやすくなります。そういう関係性を、もっと地域に作っていく必要があると思っています」

「少しずつですが行政も協力してくださることが出てきました。体制を作っていくのはこれから。それぞれに活動している団体が、『うちで全部やろう』と思わなくていい。困っていることや得意なことを共有し合って、支え合っていけるようなネットワークにしていけたら」

バーチャルの世界に入っていく子どもも。大人が「リアルで関わる姿勢」を忘れない

コロナ禍でも、高校生世代の集まり「ときどき?Ourナイト!」は休止せずに開催。「月1でも、顔を合わせていろいろ話すのが楽しいようでした」

「今、小・中学生の不登校がすごく増えています」と二人。

「私たちも子どもと接しながら、子どもたちの生活が変わってきているということは感じます。価値観が揺らいできているんですよね。コロナで休校になって、『学校は絶対に行かなあかんところ』から、『あれっ、別に行かんでもいいやん』っていうのもあったと思います」

「なかには、昼夜逆転の生活を送っている子もいます」と日奈子さん。

「そうすることで自分の身を守っているのかもしれない。『さみしいな』とか『暇や』と感じてくれたらまだ良いですが、ネットやゲームなどバーチャルの世界に入り浸り、そこでつながりや仲間がたくさんできた気になって、リアルの世界で寂しさを感じることもないし、特に思い入れることがない。そんな子も増えてきていると感じます」

阪急・阪神百貨店をはじめとするH2Oリテイリンググループの社会貢献団体「H2Oサンタ」の支援で、百貨店から定期的にパンの寄贈を受けている。名付けて「サンタパン」。おいしいパンを子どもたちも毎回楽しみにしている&フードロス削減にもなり、一石二鳥

「バーチャルとリアル、どっちがメインかわからない生活になってきているから、傷つくことも少ない傾向があります。遊べる環境がない、経験ができない、子どもがそれを残念がっているわけではなくて、ネットの世界の方が安全で楽しかったり、待ち遠しかったりするんだと思うんです」

「そのことを頭ごなしに『あかん』と言うのではなく、子どもの生活が変わってきているということは認めつつ、大人として、子どもと接する際にリアルな関係性を築く姿勢は忘れずに持っておくことが大切ではないでしょうか」

「思い出」が、その人の生きる力になる

「いっしょにごはん!食べナイト?」の様子。密を避けて広めの配置での食事。「いただきます」の歌も小声で楽しく

「『子どもたちがちょっと頼りにできる、親戚のような存在になりたい。気軽に集まれる親戚の家のような場所をつくりたい』と思って活動を始めました」と日奈子さん。日奈子さんは保護司として、鑑別所や少年院から帰ってきた子どもたちも見てきました。

「施設を出て地域に戻ってきても、家庭環境も周囲の環境も何も変わってはいない、そこにまた子どもを返したところで、同じことが繰り返されてしまう。子どもたちの環境をなんとかしないとと行政に訴えても、なかなか耳を傾けてもらえませんでした」

「一方で犯罪を繰り返したり、行き場がなくて公園で寝泊りしている子がいるという事実が衝撃で、『なんとかしないと』と成り行きでスタートした活動でした」と振り返る日奈子さん。

2022年度は「体験する」をテーマに、アートに触れる機会も実施中。写真は演劇ワークショップ。「椅子に座る・立つ」をテーマに、みんなで状況設定して演じてみる体験

「『あんた、どないしたん?』と近所の大人が聞けて、子どもが『ちょっとしんどいねん』とか『困ってるねん』と話せる関係を、地域に根付かせていくしかない。それを地域にどうわかってもらうか。振り返ってみるとそのための試行錯誤を続けてきた15年やったと思います」

「決してその子のせいではない事情で、不利益を被っている子どもは少なくありません。子どもたちは皆、すごく我慢強いけど、打たれ弱い。『もういいわ』『もうあかんわ』ってなってしまう前に、大人が子どもたち一人ひとりと向き合って、その子に合わせて何か一緒にやってみることで、子どもに何か、感じてもらえることがあったらと思うんです」

西淀川子どもセンターにて、明るく迎えてくださったスタッフの皆さん。「必要だと言う子がいるかぎり、活動を続けていきたい」。大人たちのこの明るさに、前向きな力をもらう子どもは少なくないのではないでしょうか

「子どもの中に一つでも、『これはおもろかったな』とか『こんな事やったな』というなつかしい思い出があったら、拓かれていく道はまた違ってくると思うんです。子どもたちと対等に、共に時間を過ごす中で、彼らが大人になった時に『あんな場所あったな』『あんな人おったな、なつかしいな』ってふと思い出してもらえたら」

「『なつかしい』と思える感覚、そんな思い出があったら、それが、しんどい時に自分を励ましてくれて、踏ん張る力になると思うんです。思い出って、自分の頭の中だけに留まっていたら思い出にはならなくて、誰かと共有することで、誰かと会話としてキャッチボールをすることで『思い出』になるんですよね」


「ごはんを食べるのもそう。一人で食べて『おいしいな』って頭の中で思っても思い出にならんけど、みんなで『おいしいね』ってワイワイ言いながら食べた思い出は、きっとその子の記憶のどこかに刻まれて、力になっていくと思うんです」

「つないだ手を握りきれずに、すり抜けてしまう子もいます。なかなか力は及びませんが、それでも出会えたことはご縁やから、私はあなたのことを忘れんと覚えておくよ、ということ。子ども本人の人生であって、その子がその子の人生を生きるしかないし、そのためには、本人がその気にならないと、何の役にも立ちません」

「子どもたちが何を楽しいと感じられるか、どんな思い出をつくっていくか。そのためには大人が、一つでも多い選択肢を用意してあげられることが大切。子どもたち一人ひとりが本来持っている力を発揮していくための、これからも支援ができたらいいなと思います」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は9/26〜10/2の1週間限定で「西淀川子どもセンター」とコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、団体の活動費として活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、雲の上で思い思いにくつろぐ人の姿を描きました。自分が心地良いと感じられる場所が地域の中にあることで、子どもたちの中に安心や自信が広がっていく様子を表現しています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

「あんなことあったな」。思い出がその人の糧になり、何かあった時に踏ん張る力になる。子どもたちに心温まる経験を〜NPO法人西淀川子どもセンター

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は7,500万円を突破しました。

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