今年の3月9日に政府が閣議決定したプラスチック新法案。プラスチックごみを減らすために、使い捨てのスプーンやフォークを環境に配慮した素材に変えることや有料化することなどが決まりました。小泉進次郎環境大臣は、去年7月から有料化したレジ袋を引き合いに出して、「レジ袋も賛否両論ありました。しかし今、間違いなく辞退する方のほうが世の中で多数派になった。世の中が変わっていくことになると考えています」と今回の新法案の意義を強調しています。

さて、レジ袋も使い捨てスプーンやフォークの削減も大事だとは思うのですが、この海岸の様子を見てください。

2020年1月12日 石川県金沢市の海岸で著者撮影
福井県小浜市の海岸の様子 2020年7月3日 著者撮影

ここはごみ捨て場ではなくて、海岸です。様々なゴミに混じって目立つのはペットボトル。どちらの海岸も日本海側なので海の向こうの国から流れ着いたペットボトルも含まれていますが、多くは地元の山間部や市街地から用水、川を流れてこの浜に打ち上げられたペットボトルです。

決して金沢市や小浜市の市民のモラルが低いわけではないのです。金沢市や小浜市のゴミ収集システムが他より劣っているわけでもないと思います。これは、きっとモラルやシステムの問題ではないのです。

PETボトルリサイクル推進協議会のデータによると2018年のペットボトルの販売量は244億本で、その回収率は91.5%。91.5%は世界的に見てもとても高い数字です。

ほとんどの家庭、オフィスで飲み終わったペットボトルはフィルムを剥がされ、洗われ、キャップを外されて資源回収に出されていると思います。そして多くの人が、そうやって回収されたペットボトルは企業がもう一度ペットボトルやその他のプラスチック製品にリサイクルしていると信じていると思いますが、実際は再度プラスチック製品にリサイクルされていたのは一部で、かなりの部分は埋め立てられるか焼却されるか海外に輸出されて来ました。

2017年までは、回収されたペットボトルの半分以上は、主に中国に輸出されていました。中国でそれらがどのようにリサイクルされていたか、廃棄されたのか、自然環境に流れ出していたのかは把握されていません。

そして2017年に中国が廃棄プラスチックゴミの輸入を禁止(業界ではチャイナ・ショックと呼ばれています)したことで、ペットボトルを含めたプラスチックゴミの行き場が無くなってしまいました。

中国が受け入れないなら国内でリサイクルすれば良いのにと言うでしょうが、原油価格が低下している状況ではペットボトルをリサイクルするよりは石油からプラスチックを作る方が経済的であったり、そう単純な問題ではないようです。

仮に、日本でのペットボトル回収率約90%でその全てがリサイクルされているとして、回収されない残り10%のペットボトルは自然環境に流れ出しているか、どこかに行方不明ということになります。

国内で1年に消費される244億本のペットボトルの10%、なんと24億本が行方不明、、、、。

そりゃ、海岸がペットボトルで溢れるはずです。

レジ袋の削減、使い捨てスプーンやフォークの削減も大事でしょう。で、この海岸にある大量のペットボトルゴミはどうするのでしょう?ペットボトルゴミ削減のために政府はどういう対策をするのでしょう?飲料メーカーはどう対応するのでしょう?そして私たち消費者は?

ペットボトルに対する政府の対応はわかりませんが、国内飲料メーカーは大きく動き出していますし、大企業だけでなく中小企業の新しい試みも始まっています。その辺りのことを次回に書いてみようと思っています。