2018年4月1日に障がい者の法定雇用率が引き上げられて半年。民間企業では従来の2.0%から2.2%に引き上げられ、障がい者の雇用について企業の関心が高まっている。エンカレッジ(大阪市西区)は、2013年から発達障がいを持つ若者の就労支援に取り組んでいる。代表の窪貴志(くぼ たかし)さんに、発達障がいを抱える若者の就職状況や同社の取り組みについて話を聞いた。(聞き手・オルタナS関西支局=古江 晃也)

インタビューを受けるエンカレッジ代表の窪さん

――発達障がいを抱える若者が就職活動で感じる課題は何でしょうか。

独立行政法人学生支援機構(JASSO)の調査によると、発達障がいを持つ大学生の就職率は約3~4割程度です。彼らの特徴は、得意なことと不得意なことに差があることです。

不得意なことの一例として、変化に対応することが難しかったり、自由に何かを選択してくださいといった曖昧な状況が苦手だったりします。

現在の就職活動は就活サイトを利用して企業とのマッチングをはかり、自分で各社の選考手続きをすることがほとんどです。選択肢が多い中から自分の行動を決めることが苦手な発達障がいの方は、就活の進め方がわからずにつまずいてしまいます。

――発達障がいの学生に対する企業の反応はどうでしょうか。

法定雇用率の引き上げが主な影響かとは思いますが、発達障がいに限らず、障がい者雇用に積極的に取り組む企業は増えていると感じます。

インターンシップの受け入れ企業からは「真面目に働く姿勢を見ていて、学ばされることも多い」、「曖昧な指示ではなく、具体的な指示をするように心がけることで自分たちの仕事が整理された」などの声をもらっています。

発達障がいの特性を配慮する必要があるので苦労もありますが、会社にとって良い影響があったという意見が多いです。

――エンカレッジを設立したのはなぜでしょうか。

若者のキャリア教育や障がい者雇用のコンサルティングをしていた経験から、働く機会をつかみにくい人たちのサポートをしていきたいと思ったことがきっかけです。

「発達障がい」とは見方を変えればコミュニケーションが苦手、自分から行動することが難しいなどの特徴を持っただけの人たちです。

働く意欲があるにも関わらず、苦手な範囲が人より広いがゆえに働く機会が他の人より少なくなってしまう。自分から働きたいと思っている人たちが、障がいのあるなしに関わらず働く機会が得られるような社会を目指すため、エンカレッジを設立しました。

――主な事業内容について教えてください。

発達障がいがあると診断された求職者を対象にした就職トレーニングや企業とのマッチングをサポートする「就労移行支援事業」、発達障がいや、コミュニケーションが苦手な大学生の「就職支援プログラム」の2つを軸に展開しています。

後者の事業として具体的には、「働くチカラPROJECT」と題し、ビジネスマナーやコミュニケーション、面接対策など、対象の学生たちが就活の中でつまずきやすいポイントのサポートをしたり、協力企業へのインターンシッププログラムなどを実施しています。これまでの5年間で約300人が受講しました。

新しい取り組みとして2018年3月に就職支援サービス「Boosterキャリア」をリリースしました。「Boosterキャリア」とは、大学生・求職者が長所や配慮事項などを登録し大学や支援機関に共有することで、各人に適した支援を受けられるだけではなく、企業とのマッチングをはかることもできるICTプラットフォームです。

このサービスの利用者数は現在380人ほど(2018年8月現在)。これまで自分の考えを伝えることが難しかった人たちも、事前に特徴を理解してもらえるのでコミュニケーションがとりやすくなり、より具体的な支援を受けることが可能になります。

――今後の展望について教えてください。

今後は発達障がいに限らず、人と話すことが苦手、社会になじめないなどの働きづらさを抱えた若者が、チャンスをつかんで働くことができる社会のシステムを作っていきたいです。

一人ひとりに寄り添った支援は続けていきますが、本人がいくら努力しても周りからのサポートが受けられなければ、その努力が生かされることは難しいです。社会の仕組みを考え、彼らが活躍できる環境、仕組みを整えていきたいですね。


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