大阪・西成の「あいりん地区(釜ヶ崎)」で、1977年からこどもを見守り続けてきた団体があります。高度経済成長期には日雇い労働者の町として栄えた釜ヶ崎。厳しい暮らしの中で、それでも目を輝かせて遊ぶこどもたちの姿が忘れられなかったという一人の女性。「こどもたち一人ひとりの命をど真ん中に、生まれてきてよかったと思えるような支援がしたい」。今日に至るまで、こどもたちと向き合い続けています。(JAMMIN=小林 泰輔)

貧困・人種・複雑な家庭事情…
背景に関係なく、すべてのこどもを受け入れる

週末、「こどもの里」でお昼ご飯を食べるこどもたち。おいしいー!と見せてくれた笑顔

大阪・西成にある認定NPO法人「こどもの里」は、こどもたちの権利を守るために、学童保育やプレーパーク、ファミリーホームや自立援助ホーム、一時保護などを行っています。

大阪市からの委託で学童保育を行っていますが、対象となる条件を満たしたこどもだけでなく、誰でも受け入れていると話すのは、「こどもの里」を立ち上げた理事の荘保共子(しょうほ・ともこ)さん(75)。

お話をお伺いした荘保さん

「学童保育の補助の対象は基本的に小学生のこどもで、週4日以上来ること。それだと来られないこどももいます。私たちは対象外のこどもたちについても、補助金なしで受け入れています」と荘保さん。遊びに来るこどもの年齢は0〜20歳と幅広く、外国にルーツのある子や複雑な家庭背景を持つ子、ハンディキャップのある子など実にさまざま。火曜日の定休日を除き、週末や祝日、年末もオープンしており、いつも30人ほどのこどもたちが訪れ、賑やかな雰囲気があふれています。

補助金が出なくても
こどもたちにとって必要ならやる

こどもの里のホールで遊ぶこどもたち。「こどもの里では、こどもたちがやりたい時に、やりたい遊びを自由にやっています」

親子の緊急一時保護やエンパワメント事業なども行っているこどもの里。「公的な補助は1円もありません」と荘保さん。「やっている支援に対して、該当する助成金の制度があれば活用しますが、それがなかったとしてもやる」と話します。

「活動で大切にしているのは『目の前にいるこどものために、できることをやる』こと。ファミリーホームや自立援助ホーム、こどもの緊急一時保護や訪問サポート…制度も何もない時代から、こどもの声や必要にあわせてさまざまな支援をしてきました」

活動の資金は、個人の寄付や自分たちで開催しているバザーの売り上げ、つながりのある教会や企業の支えなどで賄っているといいます。また、2002年に放映されたNHKスペシャル『こども 輝けいのち』第1集『父ちゃん母ちゃん、生きるんや』、2016年に上映されたこどもの里のドキュメンタリー映画『さとにきたらええやん』(重江良樹監督)を観た方からの寄付もあるといいます。

服はボロボロ、でも瞳はキラキラ。
こどもたちの笑顔が忘れられなかった

45年前、荘保さんが釜ヶ崎で活動し始めたばかりの頃の一枚。聖フランシスコ会「ふるさとの家」の2階の一室で活動はスタートした

1977年に釜ヶ崎で学童保育を始めた荘保さんですが、生まれは福島、育ったのは兵庫で、もともと縁があった場所ではないといいます。

「最初に釜ヶ崎に来たのは22歳の時。カトリック宝塚教会青年部のボランティア活動の一環で釜ヶ崎のこどもたちと出会いました。出会いが本当に衝撃的で。身なりはボロボロでも、皆、目をキラキラ輝かせながら一生懸命遊ぶんです」

その後も釜ヶ崎のこどもたちのことが忘れられなかったという荘保さん。放課後に居場所がなくて公園やゲーム喫茶で過ごすこどもたちを見て、「彼らが遊びに来られる場所をつくりたい」と学童保育をスタートすると、あらたな課題に直面します。

ファミリーホームで暮らす里子、こどもの里で夕食を食べるこども、スタッフの皆で一緒に晩ごはん

「あるお父さんは日雇いの仕事をしていて、幼いこどもを一人家に置いておくわけにはいかないので、早朝からこどもを預けなければなりません。遠くの現場へ出張となれば数日間預けなければなりません。その度に、児童相談所以外に預けるところがありませんでした。

「児童相談所にこどもを預けると、ネグレクトを疑われ、すぐにこどもを連れて帰ることができないことがあったんです。こどものために一生懸命働いているのに、親子がバラバラになるのはどうなんだろうと…」

「それがきっかけで周囲を見回すと、父子家庭、母子家庭、共働き家庭がとても多かったんです。親子がバラバラにならず、こどもが大好きな親と一緒にいられるように、こどもたちを預かる活動もスタートしました」

保育園が休みの日、朝からこどもの里に来ている4歳以下のこどもたち。皆でお昼寝

「今でこそヤングケアラーという言葉がありますが、当時から釜ヶ崎には、親や家族のお世話をするのが普通のこどもが少なくありませんでした。仕事で家にいない、あるいは精神疾患や病気を抱えている親に代わって、弟や妹の手を引き、小さな赤ちゃんをおんぶしてここに遊びに来るこどもたちがいたり、家でも家族のお世話をしたり、病院に付き添ったりしている子が目につきました」

「どんな環境であっても、こどもは親のことを想っています。その子にとって最善で安心できる環境をつくるためには、その子の親もケアしなければならない。私たちは保護者の方の通院などに付き添ったり、こどもの世話を手伝ったりもしています。その分、こどもにはこどもの権利があるので、今だからできる遊びや勉強を、精一杯やってほしい」

「最初はこんなに広げる予定はなかったんです。でも一人ひとりのこどもたちが必要な支援は何かと取り組んでいるうちに、どんどん広がっていきました。それが『学童保育』とか『ファミリーホーム』とか、後から名前がついていった感じです」

「生まれてきてよかった」と思えるように。
こどもたちの権利を最優先に

赤ちゃんからおとなまで、多種多様な人が集まるこどもの里。1歳の赤ちゃんと一緒に遊ぶ、小学1年生の少年

こどもたちと接する時、「こどもたちの権利が守られているか」を最優先にしていると荘保さん。

「中には、保護者に『お前なんか産まなきゃよかった』と言われ、生きる希望を見いだせない子もいます。でも『命こそ宝』です。何歳だろうが、皆一人の人間です。『生まれてきてよかった』『こんな夢をかなえたい』と、夢と希望を持って今を生きてほしい」

「こどもたちにはその権利があるし、だからこそ、ここは誰でも自由に来られる場所です。もしそれで人手がもっと必要なら、人を雇います。何よりもこどもたちの幸せを最優先に、その子の最善の利益を考えたいと思っています」

スタッフさんが一人のこどもの髪の毛を乾かしていると、「僕も膝にのせて~」とやってきたもう一人

45年を超える活動の中で、印象に残っている方の話を聞きました。

「30年もっと前でしょうか。ここに来ていた同級生の二人の女の子が印象に残っています。二人とも学校の遠足に行けないくらい貧困家庭でした。小学校高学年になると『なんで私がこんなめに遭うんだ』と反抗して、グループで家出するようになっていきました。見つけて家に帰しても、2週間くらいするとまた家出。その繰り返しが2年ほど続きました」

「小学校6年生の夏休みには、二人とも髪を金髪にして、シンナーに手を出すようになりました。小学校を卒業したタイミングで、リーダー格だった子がぴたりと来なくなり、後になって私は、彼女が児童養護施設に預けられたと知りました」

「3年後、高校に進学しなかったゆえに児童養護施設を退所しなければならなくなった彼女が、こどもの里を訪ねてくれて、こどもの里を拠点に自立を目指しました。その生活の中で、私は、彼女の小学校時代の過酷な虐待の事実を知ることになりました」

「家出を繰り返していたことは、彼女たちのSOSだったのです。それに気づかず、私は毎回、彼女たちを家に帰していました。リーダー格だった彼女は、小学校の卒業式の日、自分の足で児童相談所に出向き、『助けてほしい』と自らの意志で施設に入ったとのことでした。私だけが、何も気づいてなかったんです」

3月末に開催された「なんでもパーティ」の集合写真。「この日は小さい子から大きい子までみんなが揃う日です。みんな一緒に『はい、チーズ!』」

「小学1年生で出会って、その話を聞くまでに9年の歳月が流れています。10年近く経って、やっと、やっと意味がわかった。荒々しい言葉遣い、反抗的な態度…、一つひとつに、全部意味があったんやと。家出やシンナーは『私たちは、それでも生きたい』という彼女たちの心の叫びだったんです。『問題行動』ではなくて『正常な反応』だったんです」

「この経験が、私の原点。そこに行き着くまでに随分時間がかかりましたが、こどもたち一人ひとりの声をちゃんと聴くこと、声だけじゃなくて行動も含めて、言葉にならない声も全部聴くことが大切ということを、私は彼女たちから教えてもらいました」

現在、女性専用の自立援助ホームの開設に向けて動いているというこどもの里。外国籍の人や生活困窮世帯など、新しく居場所や支援を必要としている人のためにも今後、これまでのネットワークを活かしながら、拠点を増やしていきたいと荘保さんは話します。

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、5/1〜5/7の1週間限定で「こどもの里」とコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、釜ヶ崎の子どもたちに豊かな自然体験を届けるキャンプの活動のための資金として活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、爆発するように広がる、あふれんばかりのエネルギーを描きました。

こどもたち一人ひとりの、輝く命。その輝きが奪われることも失われることなく、好きなこと、やってみたいこと、心がワクワクすることに向かって突き進める社会を作っていこう!という思いを表現しています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

・「生きているだけですばらしい!」。こどもの命を真ん中に、こどもの権利を守り抜く〜NPO法人こどもの里
https://jammin.co.jp/charity_list/230501-kodomonosato/

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は8,000万円を突破しました。

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