至る所で目にしたり耳にしたりする機会が増えた『ボランティア』という言葉ですが、人によってイメージはさまざま。実際にボランティア活動をした際にも、互いのニーズが合致せず、調整が必要になることがあります。「ボランティアが『非日常』ではなく『日常』として生活に根付き、よりよい社会を創出する力になれば」。そんな思いから、ボランティアコーディネーターを育成・推進する団体があります。(JAMMIN=山本 めぐみ)

「ボランティアコーディネーター」を育成

全国各地で活躍するボランティアコーディネーター。こちらは大学ボランティアセンターでの相談風景。「学内でボランティア活動の相談ができると、学生さんの活動へのハードルがぐんと下がります。丁寧に話を聞き、必要な情報を提供し、活動への背中を押すのもコーディネーターの役割です」

NPO法人「日本ボランティアコーディネーター協会」は、ボランティア活動の現場をコーディネートする「ボランティアコーディネーター」の育成、推進を行う団体です。

「ボランティアは私たちの生活に身近なものになりましたが、現場で起こり得ることとして、ボランティアにお願いしたいたいこととボランティアがやりたいことが折り合えないとか、ニーズが不明確なためにミスマッチが起こることがあります」と指摘するのは、団体事務局長の後藤麻理子(ごとう・まりこ)さん。

「そういった時に、あるいはそうならないために、ボランティアコーディネーターが調整役として間に入ります」

お話をお伺いした鹿住さん(写真上段左)と後藤さん(写真下段)

さらにもう一つ、「活動の内容だけでなく気持ちの面でもコーディネーションが必要になります」と話すのは、副代表理事の鹿住貴之(かすみ・たかゆき)さん。

「災害時などの場合、万全の態勢で現地入りしたボランティアと、被災して前を向くことが難しい被災者の方がいきなり出会うことになります。そうするとパワフルなボランティアと傷ついた被災者との間のテンションに温度差が生まれることがあります」

「ボランティアと聞くと、どちらかというと『労働力』のようなイメージがあるかもしれませんが、気持ちの面での寄り添いも非常に重要です。人の動きやそれぞれ関わる人たちの思いや状態を見極めながら調整をしていくのも、ボランティアコーディネーターの役割です」

そもそも、「ボランティア」とは

団体副代表理事の鹿住さんは、NPO法人「JUON(樹恩)NETWORK」の事務局長も務める。「過疎高齢化が進む全国20ヶ所以上の農山村地域で、都市住民が森林ボランティア活動や援農ボランティア活動を行っています。都市側の思い、農山村側の思いをコーディネートしてよりよい活動を目指しています」

ではそもそも「ボランティア」とは何なのでしょうか。お二人に尋ねました。

「労働者のように何か法律で定められているものかというとそうではありませんし、日本の国語辞典をひくと『無報酬で奉仕活動をする人』と説明されたものが多いです。ボランティアは外来語ですが、この言葉が日本に入ってきた時のまま『奉仕』とか『慈善活動』というイメージが今でも広く浸透しているように思います。あるいは『ボランティア=タダ働き』のようなイメージを持つ方も少なくないのではないでしょうか」

「私たちとしては、ボランティアの本質的な性質として『自発的であること』『社会的な活動であること』『対価を得る活動ではないこと』を柱として掲げています。そこに加え、

『決められたことをやるだけでなく、先駆性や開拓性を持ち、創意工夫を重ねてよりよい方法を見つけていくこと』で、ボランティアの力はより発揮されると考えています」

「人は皆、それぞれの価値観の中で生活し、動いています。ボランティアは誰かに言われて強制的にやるものではなく、無償でもそれぞれが意味を見出して自発的に活動するもの。自ら選び、決定し、責任を持ってやっていくことで、より活動が主体的なものとなり、自己成長にもつながりますし、関わる人や団体、地域にも良い循環をもたらします」

イベント運営を支えるボランティアを的確に誘導するコーディネーター。「持ち場に分かれる前にはボランティアコーディネーターによるオリエンテーションで役割と注意事項を確認します」

ただ、「ボランティアで人の役に立ちたいと」と思っていても、『実際に行動に移す方は多くない』と後藤さん。

「そこにはさまざまな背景や壁があると考えています。ひとつは情報の不足です。ボランティアをしたいけれど何をしていいのかわからない。どこで紹介してもらえば良いのかわからない。調べたら情報は出てくるけれど、あやしくないのかとか危なくないのかとか、情報の正確性や信頼度というところで二の足を踏んでいる方は少なくありません」

「あるいは、関心はあっても日々忙しく過ごしていて、なかなかあえてそこに時間を割けないということもあります。最初から自発的にパワフルにということでなくても、どこかで機会さえあれば参加して、そこで何か気づきや自己成長につながるような体験ができると、段階を踏んでより自発的なボランティアにつながりやすくなります。こういった環境を用意しサポートすることも、ボランティアコーディネーターの大切な役割です」

知識を深める「ボランティアコーディネーション力検定」

2017年、大阪で開催されたボランティアコーディネーター実務者研修の様子。テーマは「ボランティアプログラム開発」。魅力あるボランティア活動をプロデュースするための考え方や手順を少人数でじっくり学ぶ

団体では、より広くボランティアコーディネーションの考え方を理解して欲しいと「ボランティアコーディネーション力検定」を実施しています。1日の研修で受けられる入門的な3級、より実務者向けの内容としてボランティアを受け入れる際の心構えや終わってからのフォローアップまでを学ぶ2級、1級はさらに専門的になり、社会課題の解決のために自分の組織の中だけでなく他団体やセクターを超えて具体的な活動やプロジェクトを提案できるコーディネーターの育成を目指した内容となっています。

「ボランティアコーディネーション力検定」3級の試験直前研修風景(2017年、大阪会場)。「公式テキストによる自己学習を経て、当日はボランティアやボランティアコーディネーションについての講義を聞いて試験に向けておさらいをします」

「私自身も別のNPOで活動しながら感じることですが、ボランティアは『ボランティアに来てください。そして自由に何かやってください』では成り立ちません」と鹿住さん。

「受け入れ側がいかにその体制を整え、フォローできるか。その内容や対応次第では、次はないかもしれません。あるいは次はもっと楽しみに参加してくださるかもしれません。そのあたりの心構えやスキル、しくみやプログラムとして、いかにより良いものを提供していくことができるか。ボランティアコーディネーターが入ることによって環境を整備し、より内容の濃い活動を提供することができます」

団体立ち上げのきっかけは阪神・淡路大震災での経験

1995年、阪神・淡路大震災直後に現地入りしたボランティアコーディネーターたち。「ボランティア希望者を募り、活動先が決まったボランティアたちを現場に送り出すためのオリエンテーションを実施しているところです。コーディネーターが活動の流れや注意してほしいことなどを伝えます」写真提供:社会福祉法人大阪ボランティア協会

団体設立は2001年。設立のきっかけは1995年に起きた阪神・淡路大震災での経験でした。

「震災前から、普段からボランティアコーディネーターとして活動している人たちはそれぞれその重要性をなんとなく認識していました。阪神・淡路大震災でその重要性が皆の共通認識として明確になりました」と当時を振り返る後藤さん。

「震災直後、大阪ボランティア協会が神戸に被災地の人たち応援するために災害ボランティアを推進する拠点を立ち上げました。関西のメンバーからのSOSを受け、私も含め全国各地でコーディネーターとして活動していた仲間たちがシフトを組んで現地入りしました」

「そこでいざ一緒に活動をしてみると、直面したことのない初めての出来事であり、初めて行く場所であり、さらに初めて出会う人たち同士であっても、コーディネーター同士であればものの数分、数時間で状況を共有し、チームで判断し、スムーズに仕事できるということを経験したのです」

「この経験から『コーディネーターとして共通する専門的な知識や経験の蓄積はやはりある。これをかたちにして、皆と共有できないか』という思いが膨らんでいきました。話し合いを重ね、2001年に団体が誕生しました」

「自らの意思で、活動を選ぶ」

阪神・淡路大震災の被災地にて、被災者から寄せされたニーズを壁に貼り出し、ボランティア希望者たちに説明する。「『この活動をしたい』と名乗りを上げるメンバーが定員に達したら、チームを結成します。騒然としたなかでもボランティアの自己選択を重視していました」写真提供:社会福祉法人大阪ボランティア協会

1995年当時は今と異なりボランティア自体に馴染みがなく、「災害時にボランティアが来てくれるという発想さえなかった」と後藤さん。そこで「ボランティアが助けにいきますよ」「助けが必要だったら気軽に相談してください」といったチラシを作成し、配付するところから活動をスタートしました。

ボランティアのことをとにかく地道に知ってもらう。その中で、少しずつ現地のニーズが見えてきたといいます。

もう一つこだわったのが、「ボランティアが自らの意思で活動を選ぶ」ことだったと後藤さんは話します。

「これは現在に至るまで、私たちが団体として非常に大切にしていることです。最近、『ボランティア派遣』という言葉を耳にしますが、私はこの言葉に少しの危うさと疑問を感じています。ボランティアは、タダ働きしてくれる都合の良い人足さんではありません」

「ボランティアを集めて、定員に達したら『ハイ、あなたはここ、次の方はあそこ』という機械的で事務的なやり方ではなく、ボランティアする人が『主体性を持ってその内容を選んでもらう』ためにはどうしたらいいかを強く意識しています。阪神・淡路大震災の現場でいえば、ただボランティアを集めて各所へ送り出すのではなく、正確な情報を集め、それを掲示して発信し、ボランティアしたい人が選べる環境づくりが意識されていました」

「当たり前のことですが、被災した方たち、またボランティアも、皆それぞれ異なる個性を持つ一人の人間です。情報をもとにボランティアが自ら『ここでやりたい』『これがしたい』と選べることは、そこに主体性や自尊心を生む重要なカギになったと思います」

「ボランティアは、日々の暮らしと地続きにあるもの」

2021年5月、運営委員会(オンライン)での全体写真。「全国に散らばる運営委員は29人。全員ボランティアです。普段はボランティア・市民活動に関わる仕事に携わる傍ら、本法人の活動にボランティアとして参加しています」

「ボランティアは生活に根ざしたものであってほしい」と後藤さん。

「今、ボランティアと聞くと、多くの方が災害時や単発的なイベントやフェス、最近ではオリンピック・パラリンピックといった、どこか非日常なものとして捉えられている部分があると思っていて、私はそれだけでは社会を変える力にはならないと考えています」

「ボランティアは決して非日常のものではなくて、日常の暮らしと地続きにあるものではないでしょうか。東日本大震災が起きた時、被災地ではボランティアは『遠くからわざわざ来てくれる人たち』というイメージが少なからずありました。でも被災地の方たちの話を聞いてみると、彼らもそれぞれに地域の活動や救援・復興のための何かに携わっていて、本人が自覚していないだけで、それも立派なボランティアなんですよね」

「どこか慈善活動とか偽善的なイメージもまだ残っている中で、一方でがっつり市民活動に携わっているような方からすると『自分の活動をボランティアという言葉で片付けてくれるな』『ボランティアと言われたくない』というところがあったりもして難しいなと思いますが…、ボランティアという言葉を使わなくてもそういった活動や意識が広がり、自分以外の誰かや何かのために、そしてお互いの幸せのために行動できる人たちが増え、豊かな社会が広がっていけばと願っています」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「日本ボランティアコーディネーター協会」と8/2(月)〜8/8(日)の1週間限定でキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が「日本ボランティアコーディネーター協会」へとチャリティーされ、ボランティアコーディネーターやボランティア活動の魅力や可能性を一人でも多くの方に伝えるため、国で活躍するコーディネーターの現場でのすぐれた実践を冊子にまとめて可視化したり、ICTを通じてボランティアの魅力に関する情報を発信するための資金として活用されます。

「JAMMIN×日本ボランティアコーディネーター協会」8/2〜8/8の1週間限定販売のコラボアイテム(写真はTシャツ(ベージュ、700円のチャリティー・税込で3500円))。他にもスウェットやパーカー、トートバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、地球とさまざまな植物、生き物を描きました。大地から伸びる植物は団体のネットワークによって広がる豊かな社会を、動物たちはそこに楽しみながら集う人たちを表現しています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

「主体性を持って活動する人を増やしたい」。コーディネーター育成を通じ、ボランティアの魅力を発信〜NPO法人日本ボランティアコーディネーター協会

山本めぐみ:JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2014年からコラボした団体の数は360を超え、チャリティー総額は6,000万円を突破しました。

ホームページはこちら
facebookはこちら
twitterはこちら
Instagramはこちら