子どもが売られない世界をつくるために、カンボジアやインドなどで15年間活動を続けている認定NPO法人かものはしプロジェクト(以下、かものはしプロジェクト)。カンボジア事業部を率いていた共同代表の青木健太さんはこのほど、新ブランド「SUSU」(スースー)を立ち上げて、独立することを決めた。11月7日、かものはしプロジェクト共同代表の 村田早耶香さんと青木健太さんによるイベント「カンボジアでの葛藤、貧困女性を救うために新たなミッションへ」が開かれこれまでの軌跡や独立に対する思いを語った。(聞き手=Readyfor支局・榎本 未希)

手作り雑貨を取り扱う「SUSU」を立ち上げた青木さん

※青木さんが代表を務めるNPO法人SUSU(スースー/団体設立準備中)は、クラウドファンディングサービス・Readyforによる国際協力活動応援プログラム「Readyfor VOYAGE」でクラウドファンディングに挑戦中です!ご支援の受付は、2017年12月27日(水)23時まで。(https://readyfor.jp/projects/susucambodia2

■「カンボジアでは確実に子どもが売られる問題はなくなってきた。しかし、ここに残る理由が私にはまだある」

15年前の2002年、同時大学1年生だった若者3人で立ち上げたのがかものはしプロジェクトだ。「子どもが売られない世界をつくる」というミッションを掲げ、活動を続けてきた。この数年で特に実感していたのは、「カンボジアで子どもが売られるということが少なくなってきた」という社会の変化だと青木さんは語る。

2009年から、現地での活動は警察と連携しながら行った。「売られる」子どもの数は年々減少してきた。それに伴いカンボジアからインドで事業を展開することを決めた。

喜ばしい成果を上げることができた反面、「自分が本当にやりたいことは何か」という一つの問いが生まれたと明かす。

1年という時間をかけ、悩みぬいた結果出した答えは、独立だった。目指したのは、カンボジアの貧困家庭出身の女性たちがものづくりを通じて、自信や誇りを身につけ生き生きと人生を歩むこと。

「ここに残る理由がまだあると思った」、そう力強く語る青木さん。同国の最貧困層の女性に対して雇用支援を行っていくという。

■「貧困家庭出身の女性たちが、自信を持って自分の人生を歩む世界」をつくりたい

SUSUのコミュニティファクトリーで働く女性をサポートする青木さん

青木さんが活動を行うカンボジアにある「SUSUの工房=コミュニティファクトリー」は単なる工場ではなく、学校のような場所だ。自分を管理する能力、時間の感覚を養う能力(社会のルールを振る舞いとして身につける)、他者と協調する能力などのライフスキルを育てるために独自に開発した60本近くのプログラムによりコミュニティファクトリーで働く女性たちをサポートしている。

カンボジアで今まで教育の機会にめぐまれなかった貧困家庭出身の女性たちが、ものづくりを通じて自信を持って自分の人生を歩む世界をつくりたい。都会には雇用が生まれているのに活躍できず、キャリアを前に進めることができない女性たちが一人でも多く活躍できる世界をつくりたいと語る。

■「より多くの人がワクワクを感じながら、前向きにその人らしく人生を歩んでいける世界を実現する」

そんな人生をかけた夢に向かって新たに踏み出すことを決意した青木さんは、共同代表の村田早耶香さんと15年間苦楽を共にしてきた。11月7日に開かれたイベントでは公開対談を実施した。これまでの活動を振り返り、お互いへの気持ちをストレートにぶつけ合う貴重な機会になった。

――青木さんの独立を村田さんはどう思いましたか。

村田:正直さみしいです。15年間、かものはしプロジェクトは私と青木、本木の3人で苦楽を共にしながらずっと一緒にやってきました。お互いの得意や苦手を補いながらやっていたので3人で一人前という気持ちでした。私一人ではここまで活動することはきっとできませんでした。

今は喜ばしいことにカンボジアで被害者がほとんどいなくなっています。しかし貧困層の自立という課題がまだ残っています。この課題を解決するために青木が残って引っ張ってくれるという事に対して、感謝しているし、今は応援しています。

――創業当時のことを教えてください。

村田:大学生の時に、売られた女の子の話を聞きました。その子は当時の私と1つしか歳が違わず、12歳のころから売春宿で働いていたんです。そして「学校に行きたかった」と言いながらエイズで亡くなったそうです。

この話を聞き、「この問題をなんとかして解決したい」と思い一人で活動を始めました。しかし解決するための方法が分からなかったので、いろんな人に話を聞きに行きました。そんな時に参加したイベントに青木がいたんです。

青木:当時社会起業家に興味がありました。社会問題を解決しながらもサステナブルに自分の生活もしっかりしているのがかっこよかったんです。社会起業家として何かやりたいと思っていました。しかしその「何か」がなかったのです。そんな時に村田さんと出会いました。

村田:何かが分からないけど何かやりたい、という青木と、やりたいことはあるけどそのやり方が分からない私でお互いの想いが一致したんです。この人となら一緒に世の中を変えていけるのではないかと思いました。

青木:村田さんに会ったときにパワーを感じました。「人生かけてこの仕事をしたい」という彼女が衝撃でした。児童買春という問題に出会ったときの絶望と、この問題に対して何かできるはずという団体としての熱という組み合わせが、この団体を続けるのによかったんだと思います。

――15年間続く関係性の中で、お互いが尊敬するところはどんなところでしょうか。

青木:村田さんは15年たった今でも、子どもが売られる問題を解決したいという志を持ちながらずっと続けています。だから今も人の心を動かし続けているんだと思います。

村田:青木は問題に立ち向かったときも前向きな言葉で終わるんです。その楽観力が、大変な状況に出くわしたときにみんなが一致団結して立ち向かっていける。そして自分のやるべきことをやろう、と続けて来られたんだと思います。

私たちは成果を出すことにどん欲でした。前に進むことだけを考えて、あきらめずにやるべきことをやってきました。いろんなことを乗り越えてきたので、大変な状況でもみんなで立ち向かえています。

――カンボジアの人とどのようにして信頼関係を築きましたか。

青木:これはずっと悩んでいます。でもひとつは「かっこつけないこと」だと思います。例えば工房でスタッフが辞めるときに、お互いの鎧を脱いで、相手としっかりと向き合うことが大事だと思っています。

きちんと話を聞いて、自分たちはどう変わっていくべきなのか聞いたり、裏表なく思ってもらうことが大切だと思います。

そして何より大事なのはあきらめないことです。NGO職員だとだいたい3年くらいで日本に帰国することが多いので、たとえ関係性を築けなくても終わりになるときがくる。だけど、私の場合は、10年近くカンボジアと関わり続けることでより深く信頼関係が築けたのではないかと思います。

――お互いにメッセージをお願いします。

青木:村田さんと一緒に活動してきて、ちょっとずつ社会に変化を起こせる、と実感することができました。引き続きこの道を進み続けてほしいです。いつかまた一緒に何か事業をしたいですね。

村田:これからもカンボジアの工房を発展してくれる人がいるということ事に安心できるし、感謝しています。今は被害者が生きる力を身につけることもひとつの課題です。例え、被害に遭うという最悪の状況を回避できたとしても、本当の意味で「心の回復」も伴わないと生きていくのがなかなか難しい。

そのために、ライフスキルトレーニングが必要になります。このカンボジアでの経験がいつかインドをはじめとする被害者の人たちの生きる力につなげていけると信じています。

イベントは青木さんの独立を温かく、また力強く応援する拍手に包まれて無事終了。対談が終わると、後方に並んだ、SUSUの商品を実際に手に取り、購入を検討する人の姿も多く見られた。

カンボジアの女性たちと、手に取った人全てを「頑張って、SUSU」と応援するこの商品から、資本主義を少しづつ柔らかくして行きたいと語る青木さんをぜひ応援して欲しい。

イベントの最後は”ハイ、スースー”の掛け声で記念撮影

■SUSUの商品購入は下記の画像をクリックしてください。


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加


オルタナ50号ではミレニアル世代を特集

第一特集は「ミレニアル世代を動かす6つの法則」

オルタナ50号(9月29日販売)では、「ミレニアル世代」を特集しました。ほかの世代と比べて価値観が異なるこの世代を企業はどう見るべきなのか。6つの法則にまとめました。詳しくはこちら

[showwhatsnew]

お知らせ オルタナSでは、社会問題の解決につながる活動を行う若者を応援しています。自薦・他薦は問いませんので、おすすめの若者がいましたらご連絡お待ちしております。記事化(オルタナS/ヤフーニュースほか)に加えて、ご相談の上、可能な範囲で活動の支援をさせていただきます。お問い合わせはこちらから