行政・企業・NPOから地方創生に関するキーパーソンを集める「地方創生会議」。地方自治体職員と官僚をつなげる「よんなな会」。一度のイベントで地方創生分野で活躍する人々数百人をつなげ合わせるそれぞれのイベントの主宰者が、地方を盛り上げる「切り札」について話し合った。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)
脇雅昭氏(よんなな会発起人):
1982年生まれ、宮崎県出身。大学でやりがいを見つけられずにいる時に、アカペラに出会い熱中。「ハモネプ」で全国決勝へ。2008年に総務省に入省。入省後に熊本県庁に出向、2010年に本庁に戻り、人事採用、公営企業会計制度の改正を行う。2013年から神奈川県庁に出向し、現在は自治振興部、市町村課長として従事。広く深い人の繋がりを生かして、『よんなな会』を主宰し、官僚と47都道府県の地方自治体職員を繋いでいる。入省後に受験した司法試験に合格。
小幡和輝氏(地方創生会議発起人):
1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。当時は1日のほとんどをゲームに費やし、トータルのプレイ時間は30000時間を超える。その後、定時制高校に入学。地域のために活動する同世代、社会人に影響を受け、高校3年で起業。様々なプロジェクトを立ち上げる。2017年、47都道府県すべてから参加者を集めて、世界遺産の高野山で開催した「地方創生会議」がTwitterのトレンド1位を獲得。その後、1億円規模の地方創生ファンド「NagomiShareFund」を設立し、地方創生の新しい仕組みを構築中。GlobalShapers(ダボス会議が認定する世界の若手リーダー)に選出。
――地方創生に関して若者に期待することは何でしょうか。
小幡:大学生が社会に対してできることはたいしたことないのですが、若者の動きで、社会人に刺激を与えることができます。この刺激が重要ではないかと思います。脇さんは若者からどのような刺激を受けますか。
脇:若者と地方創生について話していると視点の違いに気付かされますね。例えば、商店街を盛り上げる施策について話していても、僕ら世代が持っていない視点を提供してくれます。
それに、何と言っても、若者にはパワーと時間がある。若者だからできないことを探すのではなく、若者だからこそできる強みを見つけて、ガンガン活かしていって欲しいですね。
特に、学生のうちに、志で共感した仲間と活動できることは将来への財産になります。学生たちには、この価値を生かし切ってほしい。
小幡:立場が関係なく、つながれるのが若者の特徴。学生のときにつながっていれば、社会人になっても組みやすいですしね。それにインターネットの発展で「調べること」や「つながること」へのコストが格段に下がりました。年齢や経験は関係なく、本質的には年功序列は意味がなくなると思います。必ずしも、年上が正しいわけではない。
今の時代に、「年下のくせに」という言葉を使っている大人は、はっきり言って終わっていると思います。ネットを駆使すれば、年下でも、経験がなくても知識はつけられる。もっともっと若者はチャレンジしていいと思います。
脇:そうだね。もっとチャレンジしてほしい。それに、大人に期待された役割を果たす必要もない。ぼくは、学生のことを、「スター状態のマリオ」だと思っています。大人は学生が話を聞きにくれば、絶対に時間をつくります。だから、会いたい人がいたら、積極的に会いに行ってみることをお勧めしたい。
そして、そのスタートはできるだけ早く切って欲しいなと思う。まだ大学何年生だからとかではなく。この前、18歳の水泳選手に会って、その子が無茶苦茶しっかりしていて。「18歳なのに、なんでそんなにしっかりしているの?」と聞いたら、「私はこの世界に3歳からいて、もう15年になるので、できて当たり前です」って。
僕は勝手に社会との接点の始まりを、大学を卒業した22歳に設定していたのですが、そんなラインは本当はなくて、自分でラインをどの時点で引くか次第だなと。
小幡:そのような自覚を持つためには、ぼくは起業が一番だと思っています。学生の期間内にお金にとらわれないで起業してみてほしい。この状態は人生の中でもう来ないので、守るべきものが増えていく社会人になってからでは、手掛けにくい領域にもビジネスで挑戦することができる。
■「公務員の志や能力が1%上がれば社会は変わる」
――今後、どのような取り組みを考えていますか。
小幡:地方創生に関するキーパーソンを全国から集める「地方創生会議」には、行政、企業、NPOなどさまざまな分野から、学生にとってロールモデルとなるような人物をお招きしました。この地方創生会議がプラットフォームとなり、全国のつながりを作っていきたいです。
また、今年1月に地方創生に特化した1億円規模のファンドを設立しました。株式による投資ではなく、売上連動支払(レベニューシェア)での投資を行います。そのため、経営者は経営権を保持した上で資金調達ができ、IPO等のエグジットを求められることもありません。そして、このファンドは投資基準の一つとしてクラウドファンディングを採用しています。
クラウドファンディングでお金が集まるプロジェクトというのは、「その地域に必要とされている取り組みである」という証明につながると考えています。
地方は都会に比べて、ベンチャー投資の環境が整っていないので、若者が起業する際に資金調達するハードルが高いです。銀行からお金を借りることも簡単ではありませんし、補助金だけで事業することも持続可能ではありません。将来的には地方創生に関するお金の問題をなくしていきたいですね。
脇:ぼくは、大事なのはどこまでいっても「人」だと思っています。だからこそ、公務員の志や能力が1%上がれば社会は良くなると思って「よんなな会」を開催しています。そして、地方創生には、当然ながら公務員だけでなく、その地域に思い入れを持つ仲間が必要です。
行政が困っていることをもっと堂々と発信していくことで、「それなら、おれができるよ」という仲間づくりを進めたいなと。特に、SNSが普及して、人と人とが人類史上一番繋がりやすくなっている今の時代だからこそできる、都会と地方、日本と世界、そういった空間を超えた仲間づくりを進めていけたらなと。
その「繋ぎ目」になれるのが公務員の強みです。幸せの基準が多様化する中で、戦闘力1万の1人のヒーローを作るよりも、戦闘力1の仲間が1万人生まれて、それぞれの人達の周りの幸せのために、協力しながら少しでも動けるような社会、作っていきたいですね。