若者の「本離れ」が深刻化している。特に大きな影響を受けているのが地方出版社だ。生き残っていくために、読者層を絞り込み、より地元に特化した本を出版する。苦闘する地方出版社を取材した。(武蔵大学松本ゼミ支局=園部 穂乃香・武蔵大学・社会学部メディア社会学科2年)

亜璃西社の井上哲さん

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]北海道札幌市にある出版社兼編集プロダクションの亜璃西社(ありすしゃ)。30年程前は、北海道でも出版業界は「花形」といわれていたが、近年では衰退産業になりつつある。

そんな同社で力を入れているのが、地元の読者を対象にした出版企画だ。かつては、観光客向けの温泉やグルメ情報誌を取り扱っていたが、いまでは、北海道民向けに知られざる自然や歴史、文化について紹介した本を作っている。

その一つが、自然図鑑や北海道のキャンプ場に関する本だ。北海道でキャンプする人の大半が内地からの観光客ではなく道民だという。ネット上では様々なレジャー情報があるが、キャンプ場に関する情報が集約されているサイトは少なく、情報を集めるのが難しいという背景がある。

年々増えるアウトドア志向の道民のニーズに応えるため、道民視点に立って、毎年改訂版を出しているという。

だが、厳しい状況は続く。それでも出版業を続けるやりがいはどこにあるのか。取締役専務の井上哲さんは、「北海道で暮らす自分たちが読みたい本を、自分たちで作るということが最大の面白さ」と語る。

「地方の出版社が担い手を育てるためには、出版社がこの面白さをもっとしっかりと発信していかなければならない」と述べた。