「コミュニティFM」をご存知ですか。現在、日本全国にあるコミュニティFM放送局の数は334局(2021年3月現在、「日本コミュニティ放送協会」ホームページより)。阪神淡路大震災・東日本大震災の2度の大きな災害を経てラジオの役割が見直され、全国的にコミュニティFM放送局が増えてきたといいます。地域の活性化や課題解決の役割も担うコミュニティFMの可能性を、京都にあるコミュニティFM放送局に聴きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)
2度の震災以降、全国各地に広がったコミュニティFM放送局
放送エリアが区や市町村単位に限られ、地域により密着した情報を届けることができるコミュニティFM。災害時にはよりピンポイントで的確な情報を市民に届け、防災の役割も果たします。
「昨今の災害で電話がつながらない、テレビやインターネットにアクセスできないといった状況下でも情報を受け取ることができるラジオが見直された」と話すのは、京都市北区・上京区の情報をメインに発信するコミュニティFM放送局「ラジオミックス京都(NPO法人コミュニティFM京都)」放送局長であり、パーソナリティーの木村博美(きむら・ひろみ)さん。
「今やコミュニティFM放送局は全国各地にあります。立ち上げに至った思いや目的はそれぞれにあるので『コミュニティFM放送局とは何か』をまとめて定義することは難しいですが、私たちの認識としては、地域の細やかな情報を集め発信し、平時より地域の方たちとネットワークを築き、ラジオを聴いて使っていただくこと。それによって地震や台風など災害時にも役立ててもらえることが役割だと思っています」と話します。
同じ京都のコミュニティFM放送局「京都三条ラジオカフェ(NPO法人京都コミュニティ放送)」が全国で初めてNPO法人としてコミュニティFM放送局を開局、以後NPOとして運営する放送局も増えているといいます。
地元ならではの情報を発信、地域の人の日常を豊かに
「地域情報の発信拠点として、地域の特色を活かした番組や防災・災害・避難情報等を提供し、豊かで安全なまちづくりに貢献するということが私たちの大事な役割」と木村さん。そのためには普段から、地域の人たちとつながりを築いておく必要があると話します。
「普段の関係性があるからこそ、有事の際に機能します。いかに普段から地域の皆さんに放送を聴いていただき、情報を提供していただけるか。そのために地域の方々に参加していただく、一緒につくっていくということは意識しています。それがあってこそ、コミュニティFMとして人々の生活に本当に役立てられるものになるのではないでしょうか」
「情報を知ることで普段見ている街の景色が変わったり、生活がちょっといろどり豊かになったり。そんな番組を作れたら」と話すのは、スタッフでパーソナリティーの嵯峨根(さがね)さちこさん。
「全国区の大きな放送局とは異なり限られた人数で運営しているので、パーソナリティーそれぞれが情報を集め、番組作りから携わっています。地域の方たちともっともっと距離を近くして、『こんなのあるよ』とか『これを紹介して欲しい』といった情報提供やリクエストをどんどんしてもらえるような、生活の身近な存在に感じてもらえる番組作りをしていきたい」と話します。
災害時には行政とタッグを組み、必要な情報を届ける
地域密着だからこそ、停電や断水などの緊急時にも、必要な情報をピンポイントでリアルタイムに発信することができます。
「私たちの局では、緊急時には気象庁や京都府から送られてくる最新の情報を伝えられるようにしているだけでなく、放送エリアである京都市北区・上京区については自治体とも連携し、区役所から直接、割り込み放送ができるしくみも整備されています」
「緊急時、スタッフが放送局にいればすぐに対応できますが、必ずしもそういう状況であるとはかぎりません。私たちが間に合わなかった場合、区役所から強制的に放送に割り込み、地域の方たちに災害情報を伝えられるよう回線を共有しています」
地域の財産である「学生」と地域をつなぐ活動も
さらに開局当初より、大学生との取り組みにも力を入れてきたといいます。
「京都にはたくさんの大学があり、日本各地から学生さんが集まります。しかし学生さんは地域との関わりやつながりが薄く、せっかく京都に住んで学んでも、京都のことを詳しく知ることがないまま、卒業後には離れてしまうということも少なくありません」
「ラジオを通じて、京都に愛着を持ち、大学卒業後も京都で働きたい、暮らしたいと思ってもらえるようなきっかけづくりができたらと思っています。地域の人や企業さんにとっても、若い世代との関わりはプラスになります。より活気あるまちづくりに貢献できたら嬉しいです」
ほかのメディアに比べ、身近に感じられるラジオの魅力
パーソナリティーでもあるお二人に、ラジオの魅力について尋ねました。
「ラジオは耳から言葉で入ってくるので、自分の空間を邪魔せず、自分だけにしゃべってくれているような親近感が湧きやすい点が魅力だと感じています。私自身、パーソナリティーとして話す時は、『皆さん』ではなく、ラジオの向こうで聞いてくださっている『あなた』、その一人に話しかけるように心がけています」と嵯峨根さん。
「コロナの影響で飲食店さんも大変な思いをされているので、なんとか応援したい、と昨年は地域のお店のテイクアウト情報をラジオで発信しました。すると『行ってきました』と反応してくださる方がいたりして、本当に少しずつですが輪の広がりを感じています」
「幼い頃からずっとラジオが好きで、京都に来る前は首都圏でパーソナリティーの仕事をしていました」と木村さん。
「2011年の東日本大震災の時、毎日テレビをはじめとするありとあらゆる目に入ってくるメディアが震災の情報一色だった中で、点けたラジオからふと人の生の声が聞こえて、ほっと安心した自分がいたんです。当時からラジオの仕事をしていましたが、この時の経験からラジオの新たな可能性を感じました。人の話し声が聞こえるだけで、たとえ目には見えなくても人の気配を感じ、離れていても同じ空間で一緒にいるようなつながりを感じることができる。これはラジオだからこそできることなのではないでしょうか」(木村さん)
「地域のハブのようなラジオ局に」
「ここを通じて地域の交流が生まれたら」と二人。
「送ったメッセージやリクエストをリアルタイムで取り上げてくれたり読んでくれたりする一方でラジオは対面ではないので、双方の距離感が測れるツールだと思っています。直接コミュニティにつながるのはハードルが高くても、まずはラジオで間接的につながってみる。とっかかりとしての手軽さや身近さを生かしつつ、つながりやすさを生んでいけたらと思います」
「私たちがミキサーになって、地域の新たな魅力やパワーを発信していきたい。ゆくゆくは、ここに来れば地域の情報がなんでもあって、必要としている人にピタッとはまる情報を提供できるような、ハブのような場所になれたらと思います」
地域密着型の情報発信を応援できるチャリティーキャンペーン
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「ラジオミックス京都」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。
5/10〜5/16の1週間、JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が「ラジオミックス京都」へとチャリティーされ、学生をはじめとする地域の人たちと一緒に企画・出演する番組の制作費として活用されます。
JAMMINがデザインしたコラボデザインには、古いラジカセやラジオ、スマホを描きました。いずれもラジオが聞けるツール。世代を超え、ラジオを通じてコミュニケーションやつながりが生まれる様子を表現しています。
チャリティーアイテムの販売期間は、5/10〜5/16の1週間。JAMMINホームページから購入できます。
JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。
・地域に根付いた情報を発信、地域と人、人と人をつなぐ「コミュニティFM」の可能性〜RADIO MIX KYOTO(NPO法人コミュニティラジオ京都)
山本めぐみ:JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2014年からコラボした団体の数は350を超え、チャリティー総額は5,500万円を突破しました。