札幌市東区の古書店シャンティブックスは、ネットの古書店として2012年に開業し、その後、2014年に実店舗での営業を開始した、旅をテーマに訪れた客との対話を重視するユニークな古書店である。今回は、シャンティブックスの店主である溜政和さんに、客との対話を通した古書店の担う役割について話を聞いた。(武蔵大学松本ゼミ支局=古城 佐和子・武蔵大学メディア社会学科・2年)

シャンティブックスの溜店主

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]活字文化が衰退したなかで、古書店業にとっても厳しい状況は続く。特に地方では古書店を営むことはとても困難だ。全国的に古書店の店舗数は、高齢化による廃業で減っている。その中でも地方都市札幌では、新規参入はほぼない。

まず若い人が、新たに古書店業を始めしようとするきっかけがないことが大きい。かつては若い時に古書店業界にアルバイトなどで入ることで、将来は自分で古書店を開業したいと思う人がいたが、今日では古書店の経営状況がどこも良くないため、多くの店では人を雇えず、新人が経験を積む場がなくなり、その結果、古書店業界に入る道筋が確保されていない。そのため特に地方都市では、新しく古書店が開業されることがないという。

こうした逆境にさらされる中で、店主の関心とこだわりのもとに、旅をテーマにした古書店として誕生したのがシャンティブックスだ。

「旅と旅を通した人生をテーマにした店舗運営については、強くこだわっていきたい」と溜さん。「ネットの普及により本を読まなくても情報が得られる世の中で、新しい世界を感じられるのが本。特に旅という非日常をテーマにした本を通して、自分が経験していない世界を知り、自分の人生に新しい価値観をもたらしてくれる。シャンティブックスは来店する人が、旅というテーマを通して何か人生の発見を得られるような店を目指している」と、ちょっと大げさかなと溢しながら話してくれた。

溜さんは、「古書店はリサイクル業」と言う。古書店の仕事は本を売る仕事よりも、ある意味でそれ以上に重要なのが、売るための本を調達する仕事である。いらなくなった本を顧客から売っていただくことで商品を確保し、それを新たな顧客に売ることで、古書店業は回っている。

シャンティブックス店内の棚

もう1つ実店舗を持つ意味として溜さんが重視するのは、店を訪れる客との対話である。シャンティブックスの独特な雰囲気のなかで、店主の溜さん自身がお客さんと旅や人生について対話する。なかには、4時間も同じ客と話したこともあるという。

このように本と触れ合うだけでなく、本をテーマに訪れた人が店主と対話することのできる空間が、シャンティブックスの大きな魅力であり、またかつて多くの個性的な専門古書店が持っていた機能ではないだろうか。

書架に置かれた本を手に取り、そこで語られているテーマを通して人生の生き方について店主と対話出来る場として、ネット社会においてもリアルな古書店の場は重要だと感じた。