中央大学4年生の大西美波さんは、大学入学後、インド、タイで住居建設ボランティアを経験。3年時には、フィリピン・イロイロ市を拠点とする特定非営利法人LOOB JAPANでインターン生として活動してきた。このほど、彼女は先住民族アティ族の生計を向上するプロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトを実施するに至った経緯などについて聞いた。(聞き手=Ready for支局・奥山 滉太)

※大西美波さんは、クラウドファンディングサービス・Ready forによる国際協力活動応援プログラム「Ready for VOYAGE」でクラウドファンディングに挑戦中です。ご支援の受付は、2018年5月21日23時まで。(https://readyfor.jp/projects/atiatiproject

大西さんとフィリピンの子どもたち

――はじめに、国際協力に関わりはじめたきっかけを教えて下さい。

住居建設の学生団体に所属している友人から話を聞いて、「そういう世界があるんだ、行ってみたい」と思ったのがきっかけです。

その三ヶ月後にはインドに行きました。住居建設のボランティアでしたが、それよりも現地で会った物乞いの方や、ストリートチルドレンとの出会いが衝撃的でした。授業やテレビの情報から、そのような人がいるのは知っていたのですが、実際に目の前にするまで、本当の意味でその存在を理解していなかったんだって。

ビックリし、どうすれば良いか分からなくなり、初めて子どもを怖いと思ってしまいました。生まれた場所が違うだけで、ものを乞い、まるで上下関係があるような関係性に違和感を覚えました。同時に、これまで何もしてこなかった自分に対し、情けないと思いましたね。この経験から、途上国の貧困問題を解決するために、人生の時間を使いたいと思うようになりました。

お金や食べ物を求め物乞いする子ども

――「貧困」というテーマが実体験をきっかけに具体的に自分ごとになってきたんですね。実際に現在のフィリピンでの活動に至るまで、どのようなことをしてきましたか。

インドに行ってから、「さまざまな国の人と出会って、どんな生活しているのか、どのように考えているのか知りたい」と思い、二年生の夏に約一ヶ月間、バックパックを背負い東南アジアを回りました。

その後、短期間では本質は見えないと思い、現地の人と同じ目線に立ち、本当に何が必要なのかを知るため、カンボジアとフィリピンのインターンシップに参加しました。

カンボジアでは、NPO法人の学生スタッフとして参加しました。このNPO法人ではカンボジアで学校を立てるスタディーツアーを開催しており、ツアーに参加する学生をお世話するアテンドリーダーとして活動しました。活動の傍ら大学のゼミでは、ミャンマーの教育について調べに行きました。フィリピンに関わり始めたのはそれからです。

国際協力活動にのめり込んでいった

――いろいろな土地での経験からたどり着いたフィリピンでは、どのような活動を行なったのでしょうか。

フィールドコーディネーターとして活動し、以下の5つの活動を行っていました。

・栄養不良の子どもたちと先住民族の子どもたちを対象とした、給食および食・栄養教育プログラム
・ダンプサイトで拾ったジュースパックのごみやチラシ・紙からできたフェアトレード製品の在庫管理や販促活動、商品企画
・日本から来た学生が参加するスタディツアーをフィリピン人スタッフと一緒にアテンド
・イロイロ市にあるTESDAという能力開発学校と、LOOBシェアハウスで日本語教育
・今回クラウドファンディングでもご支援を呼びかけている、アティ族の生計向上プロジェクト

――この5つの活動の中でも今回のプロジェクトはご自身が立ち上げとなって始めたとのことですが、きっかけを教えてください。

アティ族の方々とコミュニティで出会った際に、ニト製品を持っているのを目にし、素敵だなと一目惚れしたのが始まりです。詳しく話を聞いてみると、時間と労力がかかる割にフィリピンでは高く売れないという話を聞きました。

アティ族の方々は、差別を受けてきた歴史があり、現在も最低賃金の半分以下で生活をしているそうです。このニト製品を使ってその状況を少しでも改善できないかと思ったのがきっかけです。

元々原型となるニトのバッグとコインケースがあったので、それらを日本人が求める製品に改良し、質を上げることを中心に行いました。サイズや布など日本人好みなデザインを考え、強度を上げるためにマーケットに部品を探しに行き、長く使える製品にしていきました。

アティ族が住んでいるコミュニティからトレーナーを雇い、材料を買ってきてもらい施策品を作りました。写真に映っているようなショルダーバックを1つ作るのにも、だいたい丸二日かかります。今年の夏もトレーナーを雇い、時間管理をしっかりと行い、最大限効果的なトレーニングをできるよう準備をしています。

ニト製品の一覧

――この活動を通して、これまで一番大変だったことは何ですか。

一番大変だったのは、人の気持ちを動かすことです。現地の人たちにとっても、家・お金・食料といった支援がくることに慣れているからこそ、技術を身につけるといった、すぐに効果を実感しないものを理解してもらい、時間を「投資」して全力でトレーニングに取り組んでもらうことは、凄く難しいと感じました。

フィリピン滞在中に実施した5日間のトレーニング期間中に、個人面談を行い、なぜプログラムに参加したのかや、現在の状況などを聞いた上で、プロセスを理解してもらうことを心掛けました。また、私がなぜプロジェクトを始めたのか、今後どうして行きたいのかという想いをしっかり伝え、お互いの理解を深めていきました。

――それらを踏まえても、今でも抱えているこのプロジェクトの課題はありますか。

運営側として、何人かの学生メンバーがいますが、巻き込みきれていないというか、熱量に差があって。私一人でできることは小さいですし、一緒に頑張ってほしいと思うものの、力不足で、なかなか巻き込みきれていません。みんなを巻き込んでこそ意味があると思うので、クラウドファンディングを行っていく中で、解決していけたらと思っています。

――フィリピンの女性たちへの継続支援だけでなく、継続的に活動を続けるためのチーム作りも大切だということですね。この活動をきっかけに、今後、挑戦していきたいことはありますか。

世界には厳しい環境で暮らしている人がたくさん存在しています。しかし、その一人ひとりが可能性を持っているはずです。そしてまだ知られていない、素敵な民芸品が世界各地にはあります。途上国の人たちの可能性を、物作りを通して広げ、発信できたらと思います。

先日アースデイというイベントに出て、フィリピンでのトレーニングで作った商品を試作品として販売する中で、面白そうだねと興味を持っていただき、フィリピンやアティ族について関心を持ってくださったお客様がいたことが何よりも嬉しかったです。商品を素敵だなと手に取っていただくことで、途上国の人々の可能性を伝えていきたいです。

――最後に、クラウドファンディングにかける意気込みをお願いします。

「この世界に住む誰もが持っている能力を発揮できて、夢や選択肢を持って自分の未来を自分で決められる社会を作りたい」というビジョンを持ち現在活動しているので、そういった環境を整える一歩をつくるため、このクラウドファンディングが少しでも影響を与えられたらと思います。

すでに65%ものご支援をいただいています。活動に共感してくださった方々からいただいたすべてのご支援、応援のメッセージがありがたく、みなさんの期待に応えたいと、改めて責任を感じています。本当にありがとうございます。

また、国際協力に関心あるなしに関わらず、より多くの方にプロジェクトを知ってもらいたいです。学生にも出来ることがあるんだと感じてもらい、行動に移してくれる人が増えることを期待しています。最後まで頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします。

製品を手に持つ大西さん

実際に使っているニト製品を手に常に前向きな大西さん。彼女が挑戦しているクラウドファンディング のプロジェクトは、5月21日まで。

すでに支援者から届いた、たくさんの応援コメントを見ても、このプロジェクトが多くの人の関心を集めていることが感じられる。


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加