企業に「脱プラスチック」を働きかける高校生が日本にいます。「ハリー・ポッター」を愛読する彼女は本名は明かさず、自らを「Remus Hufflpuff(リーマス・ハッフルパフ)」と名乗ります。魔法は使えませんが、たった一人で「プラスチックの過剰包装をやめて」と声を上げると、短期間で1万7000人から賛同の声が集まり、企業と意見交換の場を持つまでに発展しました。(オルタナS編集長=池田 真隆)

画像はイメージ。リーマス・ハッフルパフとは、ハリー・ポッターに出てくるリーマス・ルービンの名前とハッフルパフというクラス名からつけた

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]2050年、魚よりプラゴミが海を支配

政府がレジ袋を有料化した背景にある「海洋プラスチックごみ問題」、世界では毎年800万トンのプラゴミが海に流出していて、エレン・マッカーサー財団と世界経済フォーラムが行った調査では、2050年にはプラゴミの量が魚の量を超えると発表されています。

2004年生まれのリーマス・ハッフルパフ(以下ハッフルパフ)がこの問題を知ったのは、中学2年生のとき。SNSで記事を見つけた母親から「こんな記事があったよ」と教えられたと言います。

魚よりプラゴミが多くなることやプラゴミが半永久的に残ってしまうことに衝撃を受け、同時にある疑問を抱くようになりました。それは、「何でプラスチックを使っているの?」。問いかけ先は、同世代の友人たち。

折しも時代は、タピオカブームの真っ只中、プラスチックの容器とストローでできた商品をいまかいまかと待ち望む大行列を横目に登下校していたと言います。自然や生き物を愛する家族に囲まれて育ったハッフルパフにとって、それは理解しがたいことでした。

「一時の娯楽や楽しみのために、地球環境に負の影響を与えていいのか」「そもそも、みんなはこの問題を知っているのか」という自問自答は、いつしか「いつかみんなの意識を変えたい」というモチベーションに変わりました。

その「いつか」が訪れたのは、それから2年後。高校に進学したハッフルパフが、新型コロナにより学校には通えず、自宅待機をしていたときでした。

スーパーマーケットに母親と一緒に出掛けたときに、「テイクアウトすることも増えたし、ゴミの量が増えたのよ」と聞かされます。「ゴミ」という言葉から、すぐに海に広がるプラゴミやそのゴミを飲み込んでしまう魚たちを連想し、「ゴミを出す生活がこの先も続いたらどうなってしまうのだろうか」と恐怖を覚えたそうです。そして、「何か自分にできることはないか」と動き出します。

流行りのタピオカを飲んでいる人を見るたびに、疑問が浮かんだという

署名サイトで「過剰包装やめて」

着目したのは、大好きなお菓子の「過剰包装」です。プラスチックを使っての過剰包装を、企業にやめるように呼び掛けようと考えました。署名サイトがあることはすでに知っていました。

中学の修学旅行で奈良公園に行ったとき、公園内にリゾートホテルの建設計画があり、それへの反対運動が起きていることを知りました。その運動を広げていたのが、署名サイト「Change.org」でした。

さっそくサイトに登録します。登録した名前は、「Remus Hufflpuff(リーマス・ハッフルパフ)」。亀田製菓とブルボンの2社を署名の提出先にしましたが、その理由は聞けば、「環境問題に率先して取り組んでいる企業なので話を聞いてくれると思ったから」とのこと。亀田製菓では、2030年度までに全商品を環境に配慮した包装に切り替えると発表しています。プラスチックトレーを全廃して、プラスチックの使用量を大幅に削減します。ブルボンは、ストローとしても使用できるというユニークなクッキーを開発しています。

「亀田製菓さんとブルボンさんが何らかのアクションを起こしてくれたら、ほかの菓子メーカーも動いてくれると思う」とハッフルパフは強調します。この2社を名指ししたのは、この2社だけを変えたいのではなく、この2社を起点に菓子メーカー全体に働きかけたいという思いからだと述べます。

立ち上げた署名キャンペーン

一人の声は「1万7000の声」に

署名を集め始めてわずか2カ月、一人の小さな声は、1万7838人の大きな声に広がりました。「100人集まっただけでもすごいと喜んでいたのに、こんなに集まるとは思ってもみなかった。若者一人の力では、社会は変えられないとあきらめていた人もいると思うが、一人でも声を出せば、協力してくれる人はいると実感した」。7月28日には亀田製菓に、29日にはブルボンに署名を提出して、両社の担当社員と意見交換を行う予定です。

友人たちにも変化が起きたと言います。海洋プラゴミ問題について、自分で調べる子や日ごろの会話で出てくるようになったと明るく話します。いまは、「200人に伝えたとすると、反応してくれるのは20人くらいかな」と寂しげに話しますが、少しずつですが、「着実にその数は増えている」と力を込めます。

それでも、反応はポジティブなものばかりではないそうです。批判を浴びて、くじけそうになることは少なくないと告白します。

環境や社会問題に取り組む人のことを、過激な活動家だ、危険人物だとみなす人も一部にはいるでしょう。

ですが、Z世代の動きを見ると、その取り組みは、ナチュラルで、軽快です。ハッフルパフは活動を続けるモチベーションをこう語ります。

「人間が利己的に快適さを求めたら、環境への意識は低くなる。でも、小さい生き物や自然環境などがあるから、幸せな暮らしがある。自然と一緒に生きることが、人間がしなければいけないことだと思っている」

将来はどんな人になりたいですかと聞くと、「思っていることを行動に移せる人になりたい」と待っていた答えが返ってきました。