地方創生に向けてSDGs(持続可能な開発目標)を推進する動きが加速している。内閣府は2年間で60のSDGs未来都市を選定し、優れた事業には補助金を支給、官民連携を促すプラットフォームも立ち上げた。最近では「SDGs金融」にも力を入れる。SDGs未来都市の担当者である内閣府の遠藤健太郎・地方創生推進事務局参事官に聞いた。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

SDGsという共通言語を生かして地方創生につなげる構想を描く遠藤参事官

――SDGs未来都市は現在60都市あります。選定都市数など中長期的な目標を教えてください。

遠藤:SDGs未来都市は2018年度から始まった事業で、2020年度までの3カ年計画で取り組んでいます。そのため、来年度も今年度と同様に30都市程度を選定する予定です。補助金(2018年度は1事業につき上限4000万円/2019年度は上限3000万円)を支給する自治体SDGsモデル事業についても、来年度も今年度と同じく10事業選定する予定です。

SDGs未来都市に選定された都市に対しては、直接的な補助金の支給はありませんが、予算面で弾力措置が取られたり、複数の省庁からなるタスクフォースからのサポートを得られたりします。民間企業へのプレゼンスも高くなりますので、選定されるメリットは大きいと思っています。

この取り組みは、自治体としてSDGsに取り組むためのロールモデルを探すもので、3年間で先進的な取り組みを国と連携して集めています。2020年度までに、全国の自治体の3割がSDGsに取り組んでいる状態をKPIの目標として設定しています。2018年11月時点で、SDGsに取り組んでいる自治体は約5%なので、2020年度末までに高めていきたいです。2020年度以降については、普及の度合いを見ながら検討していきます。

――自治体がSDGsに取り組んでいるかどうかはどのように判断しますか。

遠藤:自治体へのアンケート結果から判断します。「SDGsに関するビジョンの策定」「推進体制の構築」「関係者との連携」など質問は2~30問あります。

――アンケートの結果を審査する過程はありますか。

遠藤:基本的にはアンケート結果をベースに決めます。SDGsの取り組みについてはHPなどでオープンになっていますので、把握はできます。

――SDGsを軸にした官民連携を促すプラットフォームも立ち上げています。このプラットフォームに参画している、会員企業・団体数を教えてください。

遠藤:地方は人口減少や過疎化、担い手不足などで、維持発展していくためには、それらの社会課題をビジネスで解決していくことが期待されています。そこで、去年の8月にプラットフォームを立ち上げました。官民連携でSDGsを推進していき、地域課題の解決を狙います。

課題を抱えている自治体とノウハウを持つ企業のマッチングを図ります。立ち上げたときの会員企業・団体数の目標は900でしたが、今年の6月末時点ですでに829団体が参画しています。地方公共団体は338、関係省庁は12、民間企業などが479です。

プラットフォーム事業では、会員から自主的にテーマを出してもらい分科会も開いています。これまでに食品ロスや温暖化、地域エネルギーなど様々なテーマで行いました。会員費は無料で、株式会社の法人格を持っていれば入会できます。

SDGsと地方創生の流れを強固にするために金融支援を後押しする

SDGsを軸にした自律的好循環の流れをつくりだす

――地方創生に向けたSDGs金融も推進しています。どのような枠組みで進めていきますか。

遠藤:今年から金融面での動きも起こしました。金融機関によるSDGsを考慮した事業者への金融支援を後押しできるような流れをつくります。メガバンクや機関投資家らからなる「地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会」を立ち上げて、今年1月から3月まで議論を重ね、提言にまとめました。

さらに、今年6月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」で定めた基本方針に、「SDGsを原動力とした地方創生」に加えて「地方への資金の流れの強化」という一文も組み込みました。この基本方針は、来年4月から今後5年をかけて実施する総合戦略の礎となります。

地域の事業者にはSDGsを起点にビジネスに取り組むことを推奨し、金融機関にはその事業者を支援する可能性を探ってもらう仕組みです。これまでは投融資が難しい企業にも可能性を見出すようにして、SDGsで地方創生を加速する流れを強固なものにしていきたいのです。

フレームワークとしては、フェーズ1でSDGsに取り組む地域事業者を「見える化」します。「登録/認定制度」を構築して、SDGsに取り組む地域事業者をスクリーニングします。フェーズ2では、スクリーニングした事業者に対して、地域金融機関が投融資だけでなく、事業のモニタリングやフォローアップを行い、一緒になって販路を開拓し、成長戦略を描きます。

そして、フェーズ3では、国が、優れた取り組みを行った地域金融機関を表彰したり、機関投資家と地域金融機関の協業を推進したりしていきます。地域の課題は、全国的に見ると同様の課題が多くあるので、それらをまとめて対処するために、グリーンボンドやソーシャルインパクトボンドなどの金融サービスを立ち上げることも考えています。

さっそく長野県では、SDGsを推進する企業として80社県庁のホームページで公開しました。評価指標はポジティブ面もネガティブ面も両方あります。環境、社会、経済の3つの側面からの評価や「働き方」「環境負荷」などの非財務領域もチェックしています。



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