ペットショップで色鮮やかなさまざまな種類の鳥を目にするようになりました。自宅で過ごす時間が増え、鳥をペットとして迎え入れたいと考えている方もいるかもしれません。しかし鳥は長生きで、大きな鳥だと50年以上生きるため、飼い主の高齢化などによって行き場を失ってしまう鳥たちがいることをご存知でしょうか。こういった鳥を保護、日々の世話をしながら、新しい里親とつなぐ活動を20年間続けている団体があります。(JAMMIN=山本 めぐみ)

レスキューした鳥を保護、譲渡

TSUBASAでお世話しているタイハクオウムの「レオナ」。コロナ禍でボランティアさんもお客さんもいないが、スタッフの元で毎日元気に遊んでいる

埼玉県新座市を拠点に活動する認定NPO法人「TSUBASA(つばさ)」。様々な理由から飼い主と一緒に暮らすことができなくなったインコやオウム、フィンチなどを保護し、新たな里親を探す活動をしています。

現在は102羽の保護された鳥たちが、TSUBASAの施設で暮らしています。

「中には体調不良の子もいるので、日々のお世話には手が抜けません。毎日新鮮なお水とご飯をあげて、体重測定や触診、うんちのチェック、ケージの掃除もかかさず行います」と話すのは、スタッフの加藤絵里(かとう・えり)さん。身体面だけでなく精神面のケアも大切なため、鳥のおもちゃ作りやトレーニング、人や鳥同士のコミュニケーションの時間もおろそかにならないよう心がけているといいます。

日々のお世話のひとつ、鳥のケージの掃除中。ボランティアを募集できない現在は、保護している100羽を超える鳥たちに必要なすべてのお世話を、スタッフだけで回している

昨年からの新型コロナウイルスの流行により、現在はボランティアの受付も停止し、最小限のスタッフで100羽を超える鳥のお世話をしているといいます。さらに、以前は毎月定期開催していた里親会も、回数を減らさざるを得ませんでした。

「感染対策を徹底した上でなんとか里親会を開催し、昨年は25羽に新しい家族が見つかりました。それは本当に喜ばしいことなのですが、その前年(2019年)の譲渡数が45羽だったことを考えると、コロナ禍でなければもっと多くの鳥たちに素敵なご縁があったのかもしれません。運営もなんとかギリギリで試行錯誤の日々ですが、前を向くしかない、チャンスだと捉えてチャレンジしていこうと思っています」

鳥を飼う人が増えた一方で、
正しい知識を伝える機会は減少している

クルマサカオウムの夫婦「トラ」(左)と「サクラ」(右)。「イタズラ好きで好奇心旺盛なトラを、サクラは毎回一歩引いたところで見守っています」(高橋さん)

ステイホームが続くなか、「鳥を飼う方が増えていると感じるが、一方で鳥や飼育に関する正しい知識が得られないままに鳥を飼ってしまうケースがあるのではないか」と指摘するのは、TSUBASA代表の松本壯志(まつもと・そうし)さん。

「こういう機会に鳥と出会い、好きになってくださる分にはとても嬉しいですが、一方で現状ではセミナーや勉強会を開催して啓発活動を進めることが難しいというジレンマがあります」

「正しい知識を持たないままに鳥を飼ってしまい、咬みつく、懐かないといった問題行動によって、将来引き取りが増えてしまう可能性もあるのではないかと危惧しています。

また、鳥は大変愛情深い動物で、飼い主さんに大きな愛情を注ぎます。飼い主さんに依存するところがあり、今は飼い主さんが自宅にいても、状況が落ち着いて外に出るようになると、寂しさやストレスからご飯を食べなくなったり毛引き(必要以上に羽を引き抜いてしまうこと)したりする鳥も出てくるかもしれません」

オオバタンの「トキ」は松本さんが施設を作るきっかけとなった1羽。「TSUBASAに来た時から毛引きがあり、現在も綺麗に生えそろうことはありません。ですが、ほかの鳥となにも変わらず遊ぶことも食べることも大好きで、大きな段ボールを破壊することが毎日の日課です」(加藤さん)

「最近ではSNS上でも、鳥のかわいく愛らしい姿が多く発信されています。しかし一方で、毛引きによって毛が抜け落ちたり血だらけになったりした鳥の姿は積極的に表には出てきません。鳥へのイメージと実際の飼育とがかけ離れる、SNSで鳥の発信が増えることには、そういった危険な側面もあるかもしれません」

鳥のレスキューの最大の原因は
飼い主の「高齢化」

オカメインコの「こじゅうろう君」。「施設に来た時にはすでに17歳と高齢で、そして目が見えていませんでした。高齢で盲目のこじゅうろう君は、どうしても通院の頻度が増えたり生活にきめ細やかな配慮が必要になりますが、里親さんはそのすべてを受け入れたうえで家族に迎えてくださいました」(加藤さん)

鳥が長生きする生き物ということは、意外と知られていません。

TSUBASAが飼い鳥を保護する理由として最も多いのが、飼い主の入院や死亡、あるいは身体的にお世話をするのが難しいという「高齢化」が原因によるものです。

「以前、セキセイインコを6羽保護したことがありました。お世話をしていた飼い主さんがガンで入院されたのですが、ご家族は『保健所に連れていくか、逃してしまえ』という姿勢だったため、不憫に思った飼い主さんのご友人が、1年前から片道一時間半の道のりを通ってお世話されていました。しかしご友人も通い続けることが難しくなり、事情があって鳥を引き取ることも難しく、私たちのもとにレスキューの依頼が入ったのです」

施設で暮らすコガネメキシコインコの「ちゃっぴー」は14歳の女の子。「飼い主さまがご高齢のためにお世話するのが困難になり、TSUBASAがお引き受けをしました。人が大好きで誰とでも仲良くなれる明るい性格は、前の飼い主様からたくさんの愛情をもらっていた証だと思います」(加藤さん)

「このご友人のお世話がなければ、鳥たちは死んでいたでしょう。命のバトンがつながった瞬間でした。なかには病気を患っている子もいましたが、私たちの元で治療し、元気になって、今はそれぞれ新しい飼い主さんのもとで幸せに暮らしています」

「鳥を外に離してしまうのは簡単だし、誰にもバレないかもしれません。このご友人がいなければ、ご家族はそうしていたかもしれません。しかしそれは犯罪ですし、寒さや暑さが厳しく、カラスや猫といった天敵も多いなかで、飼い鳥は外では生きていけません」

飼い主のアレルギーも
鳥を手放す要因に

アオメキバタンの「シロ」は、高齢のおじいさんがお世話をしていたが、病気のために飼育することが困難になり、2000年にTSUBASA にやって来た。入社1年目のスタッフと。「年齢も、施設での生活年数もシロの方がずっと上ですが、シロはこのスタッフのことが大好きです」(加藤さん)

最近では、高齢化だけでなく飼い主の「鳥アレルギー」による引き取りやレスキューも増えているとのこと。

自身にもアレルギーがあるというスタッフの高橋麻由美(たかはし・まゆみ)さんによると、鳥は防水や保温の役割を果たす「脂粉(しふん)」という白い粉を身体から生成しますが、種類によってはこの量が多く、人が吸い続けるとやがて体内に蓄積されて体調に異変をきたすことがあるとのだといいます。

「目のかゆみや咳、鼻水やくしゃみといった他の動物アレルギーや花粉症に似た症状が出ますが、鳥アレルギーの場合、悪化すると間質性肺炎の発症や呼吸困難に陥ってしまうこともあります。今はアレルギー症状が無くても、今後アレルギーを発症しないとは言い切れません。誰にでも発症する可能性があります」

「人によって発症するタイミングや環境はさまざまですが、小まめに掃除をする、掃除の時にマスクをする、鳥と人の寝室を極力離す、アクリルカバーを使う、鳥吸いをしないなど、極力アレルゲンを吸い込む量を減らす対策をとることによって、リスクを減らし、発症のタイミングを遅らせることは可能です」

「長生きする鳥と一生を共にすることは難しいかもしれません。でも、できるだけ長く一緒に幸せに暮らしてほしいからこそ、事前にあらゆる情報を知り、鳥のいる生活を考えた上で飼うかどうかを決めて欲しいと思っています」

世代を超えた「命のバトン」を引き継げる社会を

キエリボウシインコの「オールド」(左)と、アオボウシインコの「つん」(右)。「オールドは施設でも最年長の57歳。つんとは施設で出会って以降、現在も深い絆で結ばれています」(松本さん)

「長寿の鳥に関しては『一世代では飼いきれない』ことを念頭に、命のバトンをつないでいくイメージでお世話をしていかなければならない」と代表の松本さん。ご自身の体験を語ってくれました。

「スタッフの一人が、アメリカ最大級の鳥のレスキューセンター『ガブリエル財団』へ3ヶ月研修に行った時の話です。保護されていた3歳のルリコンゴウインコと、施設を訪れた70歳のおばあちゃんが相思相愛になりました。しかしこの鳥は、80年ほど生きる鳥なんです。70歳のおばあちゃんが引き取ったら、最期までお世話をすることは不可能ですよね」

「日本人の僕の感覚からすると、長生きする鳥は、そのことが理由でなかなか引き取り先が決まりません。長生きするからこそ『最期まで面倒を見られない、終生飼養ができない』と断念される方がたくさんいらっしゃるのです」

「しかし、この団体の考え方が素晴らしかった。『おばあちゃんがこの先10年、この鳥を元気にお世話できたら、たくさんの愛情を受けたこの子には社会性が身について愛される鳥になり、彼女が亡くなった後も新しい飼い主さんが決まるだろう。命のバトンはつながれるだろう』と。そしてこの鳥は、おばあちゃんの元へと引き取られていったのです」

ルリコンゴウインコの「ウイリー」は21歳の女の子。この鳥の寿命は80年ほどとされている

「この話を聞いて施設を見渡してみると、TSUBASAにも同じルリコンゴウインコがいました。当時17歳だった『ウイリー』です。毎月のように里親会にも出ていましたが、長生きであることもあってか誰からも声がかからず、そのうち目つきも悪くなって毛引きをするようになり、もっともっと声がかからなくなっていました」

「アメリカでの話を聞いて、自分より長生きするこのウイリーも、世代を超えて命のバトンがつながれ、幸せに生きていくことができるようにしたいと思いました。1ヶ月目は咬みついたりしてこわかったのですが、2ヶ月目にはもうコロッと態度が変わり、僕の手だけでなく友人の手にも乗るようになりました」

「『人が愛情を持って育てれば、鳥はそれに応えて人に懐き、心を寄せるようになり、誰からも愛されるようになる。命のバトンのリレーができるんだ』と実感した瞬間でした。ウイリーは、すでに二人ぐらい『引き取ってもいいよ』と申し出てくれている友人がいます」

「鳥は、一生をかけて守っていきたい
地球の宝物」

「以前オーストラリアに行った時に、野生のモモイロインコを街中で発見、手に乗ってきて甘えてきました」(松本さん)

「鳥は、自分が人生をかけた、尊い地球の宝物。一生をかけて守っていきたい地球の宝物」と松本さん。「繊細でありながら聡明なところもあって、これだけ人の心を釘づけにする生き物は他にいないのではないか」と話します。

そんな松本さんは今後、鳥と人とがより幸せになれる社会を目指し、鳥業界を変えていきたいと話してくれました。

「鳥にはPBFDという感染症があり、発症するとほとんど助かりません。罹患率は14%、つまり100羽中14羽です。ではどこでこのウイルスに感染するかというと、飼い主さんのもとではなく、ブリーダーかペットショップが感染の多くを占めています」

ルリコンゴウインコの「ルリ」(左)とカタリナコンゴウインコの「カタリーナ」(右)。「過去に子育ての経験もある、正真正銘の仲良し夫婦です」(加藤さん)

「鳥を繁殖させる際、『人が関わらない方が繁殖率が高くなる』といった昔の神話が今でも信じられているところがあり、ウンチやおしっこも放置した状態でケージを掃除しないまま2ヶ月も3ヶ月も不清潔な環境で鳥を飼育していることがあります。

日々の掃除や消毒を徹底しなければ、ウイルス感染のリスクは高まります。親が感染すると雛鳥にも感染しますから、できるだけこの環境を変えていきたい。愛鳥家の方たちの理解を得ながら、対立したり批判したりするのではなく、より良い形でこの環境を変えていくことができたらと思っています」

TSUBASAとしては、「鳥を飼い始めたばかりの飼い主さんやまだ鳥を飼っていない方、鳥に興味のない方も含め、広く浅くたくさんの方に基本的な鳥の知識を伝えていくことができたら」と皆さん。今日も保護した鳥たちを世話しながら、活動を続けています。

保護した鳥たちの健やかな生活を支援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「TSUBASA」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

2/1〜2/7の1週間、JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が「TSUBASA」へとチャリティーされ、鳥の健康を維持する上で大切な温度管理のための冷暖房や看護に欠かせない保温にかかる光熱費、感染症検査や健康診断にかかる費用など、保護した鳥たちの健やかな生活環境を守るための資金として使われます。

「JAMMIN×TSUBASA」2/1〜2/7の1週間限定販売のコラボアイテム(写真はスウェット(カラー:杢ホワイト、価格は700円のチャリティー・税込で7600円)。他にもTシャツやパーカー、トートバッグやキッズTシャツなど販売中

コラボデザインには、愛鳥家の多くが最初にその魅力に取りつかれるという小さな鳥のなかから、セキセイインコと文鳥を描きました。まるで愛らしい鳴き声が聞こえてくるようなリアルな姿に、団体設立20周年を祝うフラッグを添えました。

チャリティーアイテムの販売期間は、2/1〜2/7の1週間。JAMMINホームページから購入できます。JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

行き場のない飼い鳥を保護、新たな里親とつないで20周年。末長く、鳥と人とが幸せに暮らせる社会を築く〜NPO法人TSUBASA

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2014年からコラボした団体の数は300を超え、チャリティー総額は5,000万円を突破しました。

【JAMMIN】
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