1963年に富山県の氷見で生まれ、高校を卒業するまで氷見で過ごした僕にとって海は身近な存在でした。子どもの頃は海岸で貝殻やビーチグラスを拾ったりしたものです。(高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)

僕が生まれる前年の1962年、レイチェル・カーソンは著書『SILENT SPRING』(邦題『沈黙の春』(青樹簗一/訳、新潮社))で、「自然がつくり出したことのない物質」について警告しました。

自然に存在する物質は、長い時間をかけて人間やその他の生命が適応してバランスがとれている。一方で人間が実験室で生み出し、工場で作り出した様々な合成物質は、大地・河川・海岸を汚し、そこで変化するなどして影響は計り知れない・・・。

プラスチックも「自然がつくり出したことのない物質」です。

金沢の海岸のマイクロプラスチック、海洋プラスチック 2019年7月 著者撮影

日本でプラスチック製品が大量に製造され出したのは1960年初め頃のことで、でも僕が海で遊んでいた1970年代初頭は、海岸でプラスチックゴミを見かけた記憶はありません。

1970年代、日本は高度成長期にあったとは言え、モノを大事に使うという日本人の美徳が残っていた時代だったからかも知れませんし、そもそもプラスチックの使用量が桁違いに少なかったからかも知れません。日本人1人が1年間に使うプラスチックの量は、1960年では約5.8kgだったのが、2018年は82.2kgと約14倍も増えているのですから。

今から35年ほど前に、仕事でモルディブに滞在した時も、その10年後に仕事でハワイに行った時も、美しい海に感動したけれど、マイクロプラスチックには気が付きませんでした。足元の砂の中にはおそらく色とりどりのマイクロプラスチックがあったのかも知れないけれど。

そんな昔ではなくても、2018年の夏に奄美大島と喜界島に行った時も、僕はマイクロプラスチックには気が付かなかったのです。

そこには間違いなくあったのだと思います。でも僕はマイクロプラスチックという名前を2年前の夏はまだ知らなかった。人は往々にして知らないものは見えないものです。網膜はその姿を捉えていても脳が認知しないのでしょう。

喜界島 スギラビーチ 2018年7月著者撮影

まだ青という言葉を知らない赤ちゃんが、青い空や青い海を見た時に、赤ちゃんの網膜は青い色の波長を受け取り、それを信号として脳に送っているのでしょうが、脳には「青い」という言葉の認識が無いから赤ちゃんは青い空や青い海を見ていても、空や海が青いなあとは思わない。
だから人間は知る事が大切なのだと思います。

マイクロプラスチック、海洋プラスチックの事も、地球温暖化の事も、その他の様々な不都合な真実のことも。

何が起きているのか。そして何をすべきか。知らないと何もできないのです。そして、知ったからには行動しなければなりません。

1950年代以降、現在までのプラスチックの推定生産量は83億トン。そのうち3%が海に流出したとして海洋プラスチックの総量は推定2億5千万トン。そして毎年800万トンが新たに海に流れ出していると言われています。

茅ヶ崎で行われているマイクロプラスチックweek(茅ヶ崎0467主催)の様子 集められたマイクロプラスチックはカエルデザインに送られてアクセサリーにアップサイクルしている 2020年3月 著者撮影 

海洋プラスチック問題を解決する方法は2つしかありません。
1つはプラスチックゴミを出さない。そして、2つ目は海の、海岸のプラスチックゴミを拾う。どちらも誰でもできることです。

僕たちカエルデザインとリハスの障害を持つ仲間たちも金沢の海でプラスチックを拾います。そして全国各地でビーチクリーン活動が行われ、カエルデザインまで海洋プラスチックを送ってくださる皆さんも多くいらしゃいます。

みなさんもぜひ、マイクロプラスチック、海洋プラスチックの存在を知り、実際に自分の目で見て、考えて、できたら行動してくれたら嬉しいです。

1つ拾えば必ず1つ減らせるのです。拾わなければ減らない。当たり前ですけれど。

高柳 豊
エシカル、サスティナブルをテーマに活動するクリエイティブチーム、カエルデザインのクリエイティブディレクター。海外向けコンピューターシステムのシステムエンジニアを経てカルチャー教室で様々な文化教室の企画運営などを経験。その後、フリーランスになってから地域通貨の発行・運営、雑誌の出版編集、地サイダーやクラフトチョコレートなどの加工食品ブランドの立ち上げなど、商品企画、ブランディング、マーケティングなどを手掛けている。企画からデザイン、コピーライティング、写真撮影などクリエイティブ全般に携わる。
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