ベアリングという言葉を聞いたことはあるだろうか?ベアリングとは「軸受」を意味し、”産業のコメ”と呼ばれるほど機械の回転軸に必要不可欠な部品。時計やパソコンといった身近な精密機器から、自動車や工作機械などの大きなものまで、ありとあらゆる機械を陰で支えている。(オルタナS関西支局=北川 由依)

そんなベアリングの製造を100年以上に渡り、手掛けてきたのが大阪に本社を持つ老舗メーカーNTNだ。本記事では、自社の役割を「世界をなめらかにする仕事」と位置付け、持続可能な社会づくりに貢献する、NTNのSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みをご紹介する。

技術革新で省エネルギーを実現

「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会をつくるため、2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs。2030年を年限とし17の国際目標が掲げられる中、NTNは自社事業を「世界をなめらかにする仕事」と位置付け、持続可能な社会づくりに貢献してきた。

特筆すべきは、NTNの本業そのものがエコな社会を実現するSDGsの取り組みであることだ。NTNは、高度な省エネルギー技術により、あらゆる場面でのエネルギーロスを低減。また、独自に自社商品の環境価値を見える化。1997年当時の商品の環境効率と比較を行い、新商品の環境ファクタを導出した。

商品ごとに環境効率を算出、世界の技術水準を踏まえて商品ごとに定めた環境ファクタ基準に照らし、S-eco、A-eco、B-eco、C-eco、D-ecoに分類

例えば、売り上げの6割を占めるハブベアリング及びドライブシャフトは、全て環境貢献商品。2019年3月期のCO2削減貢献量は、約140万トン(ガソリン約60万リットル相当)と、エネルギーロスに大きく貢献している。

ハブベアリング

ドライブシャフト

省エネルギーへの貢献は、17の国際目標のうち「7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当。まさに本業を通じてSDGsの目標達成に貢献する事例と言える。

自然エネルギーを活用し災害支援やまちづくりに応用

ベアリング商品以外でも、NTNはSDGsへの貢献を進めている。NTNはかねてより自然エネルギー商品を開発。小形風車・水車は、独自の翼技術を活用し、低炭素化社会の実現を推進してきた。

NTNマイクロ水車。小型で田畑の用水路に簡単に設置が可能なことから、「どこにでも設置しやすい」と好評だ

世界初流水式水力発電装置である「NTNマイクロ水車」は、将来性や実用性が評価され日経地球環境技術賞を受賞。CO2排出削減に貢献するとともに、自然環境・生態系保全に繋がる商品として人気を博している。

三重県桑名市に常設する「グリーンパワーパーク」

NTNが提案する自然エネルギーの活かし方を体感できる場も用意。三重県桑名市に「グリーンパワーパーク」を建設し、オリジナルの水車や風車、電気自動車を配置した。ここでは、風力・水力・太陽光を活用した発電装置により発電した電力を、電気自動車の充電や野菜栽培工場に活用する循環型モデルを体験してもらう。自社の技術を広く伝えることで、自然エネルギー普及に一役買う、社会貢献モデルの一つだ。

大阪大学と一般社団法人全国自治会活動支援ネットおよび企業による、ITを活用した防災や見守りに関する共同研究の様子

また産学官連携の共同研究にも参画。NTNが開発した風力と太陽光の2つの自然エネルギーで発電する「NTNグリーンパワーステーション」を実験機として、自然エネルギーとITによる減災・見守りシステム構築中だ。

「NTNマイクロ水車」や「グリーンパワーパーク」、そして産学官連携の事例はどれも、17の国際目標のうち「7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」、「11:住み続けられるまちづくりを」、「13:気候変動に具体的な対策を」の3つに当てはまる。

本業を通じてSDGsの目標達成に貢献を

ここまでご紹介したように、NTNが取り組むSDGsの多くは、本業を通じたものだ。しかし、取材を進めると、当初から本業自体がSDGsの取り組みに繋がると考えていたわけではないとわかった。
おそらく、NTNが自社事業をSDGsの取り組みとして捉え直すことができたのは、安易なCSRに手を出さず、企業としての本質を見つめ直し、SDGsの目標達成に結びつく要素を洗い出していったからだろう。

NTN広報・IR部にSDGs導入による社内的な効果を尋ねたところ、「ベアリングをエコ商品だと捉え直すことで、あらためて社会における企業としての存在意義を認識した」と回答を得られた。

SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成されているため、一見やることが多く、複雑だと思うかもしれない。しかし、数が多い分、丁寧にブレイクダウンすれば、必ず本業と結びつくことがあるはずだ。

NTNのようにまずはSDGsを自分ごととし、企業としてできるところから持続可能な社会づくりを進めてほしい。(PR)