各地でクリーンビーチ活動をされている方は感じていると思いますが、赤や青や緑などのカラフルなプラスチック製品の破片、5ミリ以下のマイクロプラスチックは無数に見つかるのですが、ペットボトルの透明な大きな破片も、また小さな透明な明らかにペットボトル由来だと思われるマイクロプラスチックはなかなか見当たりません。

海岸で回収され洗浄した海洋プラスチック。ペットボトルの破片らしきものは見当たらない

これはずっと不思議でした。

それが、去年の11月、PETボトルリサイクル推進協議会が「ペットボトルはマイクロプラスチックにはならない」という発表を行いました。

PETボトルリサイクル推進協議会は、11月18日開催した記者説明会で海洋プラスチックごみ問題に触れ「ペットボトル(PET)がマイクロプラスチックになるような兆候は見られなかった」と結論づけた「マテリアルライフ学会第24回春季研究発表会」の報告を紹介した。

一般的に海に流出したPETは、長きにわたり紫外線や波の力を受けることで壊され小片化・微細化すると言われているが、同協議会が河川に約20年間放置されたPETなどの劣化状態を分析したところ若干の劣化とクラック(亀裂・ひび割れ)が認められた程度であったことが判明した。

「PETは非常に紫外線に強い樹脂なので業界人の間ではマイクロプラスチックにならないと感覚的に分かっていたが、18年の台風によって愛知県の庄内川と新川の中堤防で20年以上前に製造されたPETが多くサンプリングできたことで確認できた」と秋野卓也専務理事は振り返る。

(食品新聞 2020年12月2日 https://shokuhin.net/37939/2020/12/02/inryou/inryou-inryou/ )

ペットボトルはマイクロプラスチック化しないのです!

プラスチックと言ってもポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、そしてポリエチレンテレフタラート(PET)など多くの種類があって、それぞれに特性、使用用途がありますが、ほとんどの種類のプラスチックは、自然界に流出して海岸に流れ着くと太陽の熱と紫外線で劣化して、やがて小さいマイクロプラスチックになっていきます。

それに対して、PETは紫外線に強くてペットボトルは年月を経てもほとんど劣化することが無い、つまりマイクロプラスチックにならないのです!

金沢の専光寺浜で、2020年5月撮影

海洋プラスチックが大問題になっている大きな要因は、プラスチックが自然界分解されないまま劣化してマイクロプラスチックとなって海に漂い、沈み、時に有害物質を吸着して、様々な海洋生物に取り込まれ、それらの生命を脅かしていること。そして食物連鎖によってそれらのマイクロプラスチックがやがて人間にも取り込まれることです。人間への健康リスクはまだよくわかってはいないとは言え、わからないと言うことはリスクがあると言うことでしょう。

でも、ペットボトルは少なくとも数十年の単位ではマイクロプラスチック化しない。ならば、ある意味1つ驚異が減ったと言えるのでしょうか?

そんなことはありません。現実には座礁したクジラの胃の中から大量のプラスチックが見つかることがあって、その中にはペットボトルも含まれています。また数十年単位ではマイクロプラスチック化しなくても100年、200年後にはどうなるのかわかりません。

数十年単位ではマイクロプラスチック化ペットボトルであろうが他のプラスチックであろうが、私たちはできるだけゴミを出さないことと、出てしまったプラスチックゴミを回収する。その2つをやり続けるしかないのです。

今、福井県の小浜を中心に海洋ゴミの資源化に取り組むアノミアーナというグループが、海岸で回収したペットボトルからサングラスを作るという、おそらく世界初の取り組みをスタートさせています。次回はその画期的な取り組みについて詳しく紹介したいと思います。

アノミアーナさんが企画・販売する海岸のペットボトルから作るサングラス http://www.anomiana.org/