私たちカエルデザインは金沢を拠点に、クリエイターズ社が運営する障がい者の就労継続支援施設「リハス」とともに、海洋プラスチックなどをアクセサリーにアップサイクルしています。(高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)
金沢は昔から歴史観光都市として人気の観光地で、北陸新幹線開通後さらに多くの観光客の方が訪れるようになりました。コロナウイルスの影響で一時期は観光客がまばらになりましたがGo Toキャンペーンの効果か、金沢の主要観光地は以前の賑わいが戻りつつあるようです。
11月、石川県では底引き網漁が解禁され、カニを中心に日本海の幸を求めて多くの観光客が訪れます。海産物は金沢の観光にとって無くてはならないものですし、金沢市民の日常の食としても大切な資源です。
もちろん金沢、石川県だけでなく、世界でも指折りの魚食文化を持つ日本人にとって日本の周辺のみならず世界の海から運ばれる海産物は日本人にとって不可欠な食材で、漁業は日本人にとってとても大切な産業です。
一方で、漁業は海洋プラスチックごみの主な発生源であることは、ほとんどの人は知らない不都合な真実です。
漁業を営む上で嵐などが原因でやむを得ず紛失したり、あるいは意図的に廃棄されたりする漁網やロープなどの漁具は、海洋プラスチックのうち、かなりの量を占めています。
昔の漁網やロープは麻などの天然素材でできていたのが、今ではほとんど全ての漁網やロープはナイロン製やポリエチレン製などのプラスチックです。
平成 31 年4月に水産庁が出した「漁業におけるプラスチック資源循環問題に対する今後の取組」という資料によると、日本で製造・利用されるプラスチック類年間約 1000 万トンのうち、漁網、ロープ、ブイ等の漁具として製造されるのは年間おおよそ2万トン(全体の約 0.2%)前後と推計されていますが、海域によっては海洋プラスチックの半分以上が漁具類の地域もあります。
プラスチック製の漁具は安くて軽くて丈夫で、漁業者にとってはスグレモノです。ですが、プラスチックであるがゆえに海中で微生物に分解されることはありません。
海中で分解されないプラスチック製の漁網やロープは幽霊のように海中や海底をさまようことから「ゴーストネット」と呼ばれ、それに海の動物が絡まると数日から長くて何十年もの間、死ぬまでその動物に絡み続けます。
「ゴーストネット」に絡まった海の動物は、溺れて餓死したり、締め付けられてできた傷によって感染症を引き起こしたりして死ぬか、動けない間に捕食者に襲われ、即死するかゆっくりと苦しみながら死ぬのです。
魚などの海洋生物を捕まえるために作られた丈夫なプラスチックの漁網やロープは人の手を離れて海に捨てられてもなお、その捕獲機能を人間とは無関係に果たそうとする――。なんて厄介な存在なのでしょうか。
カエルデザインでは今までプラスチック製のロープ、漁網はアップサイクルして来なかったのですが、「ゴーストネット」の深刻さを知るにあたって、色々試行錯誤してピアスとイヤリングを作ることにしました。
モシャモシャ、クルクル、糸が丸まってコロンとした姿が可愛らしくて、そしてとても軽くてピアスなら片耳約1グラム、イヤリングでも3グラム(金具込み)です。このアクセサリーも含めて、売り上げの一部は、海洋ごみの調査やクリーンアップを通じて海や川の環境保全を行っている非営利の環境NGO、一般社団法人JEANに寄付させていただきます。
私たちカエルデザインがアップサイクルできる「ゴーストネット」の量は本当に微々たるものですが、この軽くて小さくてかわいいアクセサリーが、海洋プラスチックの問題を身近なモノとして考えていただくきっかけの1つになってくれたらと願っております。