映画レビュー「プラスチックの海」
海がプラスチックで溢れている―。わたしたちには何ができるのだろうか。世界70カ国以上、1200回以上の上映。17カ国語に翻訳され、短縮版が国連総会でプレミア上映された話題作「プラスチックの海」を見た。海底に沈んだ大量のペットボトルや漁網を見て、言葉を失った。プラスチックを誤って食べてしまった海鳥の死骸に顔をしかめた。(Lond共同代表=石田 吉信)
11月13日、アップリンク渋谷・吉祥寺・京都ほか全国順次ロードショー
多くの科学者や識者が警鐘を鳴らす、海洋プラスチック問題。年間800万トンものプラスチックが海に捨てられているという。その大半は海底に沈み、海面や海中を漂うプラスチックも永久に分解されず、マイクロプラスチックとなって食物連鎖の一部になっていく。プラスチックゴミによる海洋汚染の実態とは?そしてプラスチックが海に、プランクトンに、クジラに、海鳥に、人体に及ぼす影響とはー?デイビッド・アッテンボロー、シルビア・アール、タニヤ・ストリーター、バラク・オバマ他が出演。海と共に生きる全人類必見のドキュメンタリー。(プラスチックの海ホームページから引用)
ユナイテッドピープル配給で「プラスチックの海」が劇場公開された。
2016年の作品であるが、観賞後に抱いたのは「この作品は2020年の今、全人類が当たり前に知るべき内容である」という想い。
レジ袋有料化が始まり、2050年に日本政府がゼロカーボンを目指すことを表明した2020年。
私にとっても、本業で美容室を経営しているが、サステナビリティ対応の真ん中に「脱プラスチック」を置き、レジ袋を廃止し、海のゴミを1キロ除去する寄付の付いたmymizuのマイボトルを販売開始し、オリジナルシャンプーを「中身だけ売る」量り売りを始めた年になる。
今年はインスタグラムを開けば「サステナビリティ」「エシカル」「ゼロウェイスト」「SDGs」というキーワードが目に入ってくることが増えた。
マイバック、マイボトル 、マイストロー――。「使い捨て」からの脱却の動きが本格始動した年のように感じている。
⚫️毎年800万トンのプラスチックゴミが海に捨てられている。それはジャンボジェット機およそ5万機分相当。
⚫️2050年には魚の量をプラスチックが超える。
⚫️我々現代人は一週間にクレジットカード一枚分のプラスチックを食べている。
プラスチックに関する情報がどんどん入ってくるが、
僕はその中で、「本当かなぁ。」「それで私たちにどんな影響があるの?」と思うフシはあるにはあった。
ネットの情報の根拠はどこにあるのだろう?実際にこの目で見たわけじゃないし、当事者の話を聞いたわけじゃないし、科学やエビデンスが間違ってることもあるでしょう?と。
そんな時に役に立つのがまさに「ドキュメンタリー」だと思う。
自らエビデンスを取りに、現地の人の話を聞きに、海外を回るわけにはなかなかいかない。
ニュース記事だけでは懐疑的な部分がある。
そんな時の映像の迫力には一見の価値が大いにあると思っている。
「プラスチックの海」の中でも、有人で400メーターほど、無人で1600メーターほど海底へ潜水艦で潜っていくシーンがあるが、こんな映像は普通はお目にかかれない。
そして、その海底に沈んだ大量のペットボトルや漁網や様々なプラスチックを見て、そのリアリティに言葉を失った。
プラスチックを誤って食べてしまった海鳥の死骸から出てくる大量のプラスチックを見て顔をしかめた。
あんなに胃がパンパンになるまで食べてそれが原因で死んでしまうなんて、それは他人事ではないと思った。
「何で脱プラスチックするの?」
そんな疑問を抱いてる人こそ是非観て欲しい一作だ。
マイクロプラスチックの断面に吸着した化学物質や、プラスチックが燃焼した煙が我々の人体にどんな影響があるのか。
実がこれがあまり知られていない。
それはそうだ、どんな影響が及ぼされるのか、研究者も含め人類の誰もが明確にはまだわからないのだから。
それほどまでにプラスチックは歴史が浅く、社会問題も未熟だ。そしてそれは、それほどまでにとんでもないスピードでプラスチックが普及していったということだ。
プラスチックの害が人体にどれだけの悪影響があるのか、それはどの成分によるものなのか、
まさに研究者たちが解明へ挑んでいるシーンもこの映画の見所だ。
日本のプラスチックリサイクルはほぼ燃焼させてエネルギー転換させる「サーマルリサイクル」だ。これは海外ではリサイクルと認められてないという。
ペットボトル一本からペットボトル一本へリサイクルできているのは全体の数パーセントだ。
日本だけで年間250億本ほどのペットボトルが使用されている。
これをまずマイボトルにすることから我々は始められると思う。
“from knowing comes caring,from caring comes change.”
「知ることから思いやりが来る、思いやりから変化が来る」
この映画はこのようなメッセージを伝えている
まず世界で起きていることを知ること。
私はそれはプラスチックの問題だけでなく、気候変動や森林火災や絶滅危惧種が増えていること、珊瑚礁が白化していることなども、
これからも地球で生きるものとして知った方が良いと思う。
そして、そういった環境問題が自分の日頃の行動や購買にどう繋がってるのかを知ることもとても大切な事だと思う。
でも、知った上で行動しないことを選ぶならば、それはその人の自由だと思う。何故なら科学やエビデンスはある種の仮説でしかないからだ。何を信じるかは個人の自由だとは思う。
しかし、今世界で起きている事象を知らない人が多いので、まずはこういったドキュメンタリーなどで「知ること」は大切なことだと思う。
私個人としては、人の「利便性」のために動物たちが被害に遭っているのは気持ちが良くないので、これからもプラスチックを減らす努力をしていきたいと思う。
石田吉信:
株式会社Lond代表取締役。美容師として都内3店舗を経て、28歳の時に異例の「専門学校のクラスメイト6人」で起業。現在銀座を中心に国内外、計22のサロンを運営中。1号店のLondがHotpepper beauty awardで4年連続売り上げ全国1位を獲得。「従業員第一主義」「従業員の物心両面の幸福の追求」を理念に、70%以上という言われる高離職率の美容室業界で低離職率(7年目で160人中5人離職)を実現。また美容業界では未だほぼ皆無であるCSR、サステナビリティに向き合い、実践の傍ら普及にも努めている。instgram
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