世界的にプラスチックゴミによる海洋汚染が問題となっていて、ペットボトルもその汚染源の1つ。環境省が平成28年度全国10地点(稚内、根室、函館、遊佐、串本、国東、対馬、五島、種子島、奄美) で漂着ごみのモニタリング調査を実施した結果、飲料用ボトルが、重量で7.3% 容積で12.7%、個数で38.5%とペットボトルが大きな割合を占めています。

PETボトルリサイクル推進協議会のデータによると2018年のペットボトルの販売量は244億本で、その回収率は91.5%。回収された使用済みペットボトルは、様々な工程を経てペレットに加工されてから、繊維、シート、プラスチック成型品など様々な用途で再利用されています。再生繊維は綿状に加工されて自動車の内装などとして利用され、シートは卵パックや防草シートに、成型品は洗剤ボトルや文房具などに利用されます。

金沢の専光寺浜と呼ばれる海岸の様子。2020年5月9日撮影

しかし、回収率が91.5%ということは、残りの8.5%はどうなっているのでしょう?次の写真はとある日の金沢のゴミ回収場所の様子です。回収かごに入り切らずに道路にはペットボトルが散乱していました。そしてすぐ傍を用水が流れ、用水は川に流れ込みやがて海にたどり着くのです。

日本で1年間に販売される244億本のうち、8.5%が未回収。本数にすると20億本以上が回収されずにどこかにあるということです。そのうちのかなりの数が自然界、海に流出していると考えれば、海岸を埋め尽くすように散乱するペットボトルの存在にも納得できます。

今、企業は使用済みペットボトルのリサイクルを積極的に進めています。例えば、パタゴニアはすでに1993年にペットボトルからリサイクル・ポリエステルの製造を始めていて、使用済みペットボトルをフリースに変革させた最初のアウトドア・アパレル企業として知られています。

アパレルメーカーでは最近、ユニクロもペットボトルから作られる再生ポリエステルを30%使用したファーリーフリースを出していて、GUはペットボトルから作られる再生ポリエステルを使ったシャツも出しています。

スニーカーではナイキやステラマッカートニーなど多くのブランドがペットボトルから作られた再生ポリエステルを使用しています。

でも、それら企業が使うものの多くは資源回収されたペットボトルを原料としていて、海岸に漂着するペットボトルゴミを使っているものはほとんどありません。

これはペットボトルに限ったことではないのですが、海岸に漂着したプラスチックは、紫外線による劣化、海水による塩分の付着などの汚れの問題や、同じプラスチックと言っても複数種類のプラスチックが混在していることで産業用資源として再利用することが非常に難しいものです。

今回、福井県の若狭湾を拠点として海ゴミを資源に変える方法を模索する女性中心のチーム、アノミアーナさん http://www.anomiana.org/が商品化したオーシャングラスは、福井の海岸で回収したペットボトルをアップサイクルしたサングラスで、メガネで有名な福井県鯖江市の内田プラスチックさんとの共同開発で誕生したものです。

海岸に漂着したペットボトルをアップサイクルしたサングラス、オーシャングラス。メガネケースはカーテン生地の端材をアップサイクルしている

既にリサイクルペットボトルフレークでメガネフレームの製造に成功されていた内田プラスチックさんにアノミアーナさんが「海ごみのペットボトルでできないか」という相談を持ちかけてスタートしたオーシャングラスプロジェクト。一朝一夕で製品化とはならず、試行錯誤が続いたそうです。

普段、内田プラスチックさんは高度に工業化された純度の高いペットボトルフレークを使っていて、それでも開発に1年かかったそうです。

そして、今回初めて、ペットボトルの形をしたものから、それも海岸で回収されたものから作るのですから、困難は想像できます。内田さんは「海外製のペットボトルは組成が違うのかな…」とおっしゃっているようですが、アノミアーナの西野代表は、付着物含め糖分や塩分除去が十分でなかったのではないかとも考えています。

オーシャングラスプロジェクトのために回収した若狭湾のペットボトル

オーシャングラスプロジェクトの一番の目的は「ビーチクリーン参加者の層を広げること」。「自分たちでオリジナルデザインのサングラスが作れるなんて、面白そう!!」ということで、これまで海やアウトドアを楽しんで来た人たちが「環境も守ろう」とビーチクリーン活動にも足を踏み入れてくれる。オーシャングラスをそのためのツールとしたいと西野代表。

全国のビーチクリーン団体やマリンスポーツのグループなどに「みんなで拾ってみんなで作るオーシャングラス プロジェクト」を呼びかけていきたいそうです。

そして二番目の目的として、一般の方々に海ごみに関心を持ってもらって、「なかなかビーチクリーンには行けないけど、でも応援したい」という気持ちのもとで買っていただきたいとのこと。

まだオンラインショップはありませんが、現在、東京のJR新橋駅日比谷口改札隣のPOPUPショップ、Upcycle Collectionで5月28日まで販売していますので、コロナ禍ではありますが、良かったらぜひお立ち寄りください。

ちなみに、海洋プラスチックのアップサイクルアクセサリーブランドの「カエルデザイン」https://kaerudesign.net/と、同じくプラスチックメーカーの株式会社テクノラボさんが開発した海洋プラスチックをアップサイクルしたインテリア雑貨のブランドの「buoy (ブイ)」さん http://www.techno-labo.com/rebirth/ もご覧いただけます。

JR新橋駅日比谷口改札隣のPOPUPショップ、Upcycle Collection 5月28日まで