1年間に海に流れ出るプラスチックの量はおよそ800万トンだと言われています。でも800万トンと言われても良くわからないですね。という事で何かに例えてみます。(高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)

●ジャンボジェット機5万機分
●ウルトラマンなら230人分(ウルトラマンは人なのか?それにしてもウルトラマンは重い!!)
●初代ガンダムだと183,908機分(ガンダムは意外と軽い?)
●初代のゴジラだと400匹分(匹?頭?体?ゴジラは重いね)

いかがでしょうか。わかったような、よりわかりにくいような。それでは、次は誰もが絶対に知っていて一度はテレビで見たことがある、おそらく史上最大の建造物であるあのギザの大ピラミッドと比べてみましょう。

ギザの大ピラミッドは平均2.5トンの石灰岩を約270万~280万個積み上げたとされているので、おおよそ総重量700万トン。

1年間に海に流出するプラスチックは、ギザの大ピラミッドよりさらに100万トンも多い量という、とんでもない状況にあることがわかります。

ギザの大ピラミッド 
Alex more / CC BY-SA (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)

既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トンだと言われていて、毎年800万トンずつ増えているのだから、2050年には海の生き物より海に流れ出たプラスチックの量が多くなると言われているのも理解できます。

こんなに膨大な量のプラスチックが流れ出ているのだから、ボランティアが海岸で手作業で拾っても焼け石に水でしょ?みたいなことを言う人もいるけれど、たった1個でも拾えば確実に1個減るのです。拾わなきゃ1個も1グラムだって減らないのです。

プラスチックを拾う筆者。2020年9月 金沢市専光寺浜

実際に海岸でプラスチックゴミを拾っていると、拾っても拾っても、次にまた海岸に来たらまたプラスチックゴミで溢れていて、泣きそうになることがあります。

プラスチックゴミは次から次へと、陸から川へ、川から海へ、そして海岸へと流れてきます。海岸清掃は終わりの無い活動のように思えます。

でも、海岸のプラスチックゴミを拾うことはとても効果的です。海岸ではなく、海水中のマイクロプラスチックを回収することはとても困難。船が必要になるだろうし、回収するための設備装備も必要になるし、当然莫大な資金が必要となります。

2019年1月に九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授らが学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表した論文によると、日本周辺の海域ではマイクロプラスチックが1平方キロメートル当たり100万粒浮遊すると推計されていて、南太平洋の約1万粒や北太平洋中央部の約10万粒をはるかに上回っています。

これは、東アジアや東南アジアでプラスチック廃棄量が多いことが影響していると考えられています。

日本周辺の海域のプラスチックの数が1平方キロメートル当たり100万粒。マイクロプラスチックの重量は、大きさや素材にもよるけれど、1粒が約2mgだとすると100万個のマイクロプラスチックの重量は2キログラムに相当します。

マイクロプラスチックよりもずっと大きな海洋プラスチックが多い海岸なら1人で半日もかからずに2キロのプラスチックゴミを回収できます。その量は日本周辺の海1平方キロメートル四方のマイクロプラスチックを回収するのと同じことなのだそうです。

海岸に打ち上げられた大きな海洋プラスチックは太陽の熱と紫外線で劣化してマイクロプラスチックとなって海に流れ出ます。だから海岸で海洋プラスチックを回収することは、海水中へのマイクロプラスチックの流出を防ぐとてもとても大切な活動なのです。

カエルデザインHP

高柳 豊
エシカル、サスティナブルをテーマに活動するクリエイティブチーム、カエルデザインのクリエイティブディレクター。海外向けコンピューターシステムのシステムエンジニアを経てカルチャー教室で様々な文化教室の企画運営などを経験。その後、フリーランスになってから地域通貨の発行・運営、雑誌の出版編集、地サイダーやクラフトチョコレートなどの加工食品ブランドの立ち上げなど、商品企画、ブランディング、マーケティングなどを手掛けている。企画からデザイン、コピーライティング、写真撮影などクリエイティブ全般に携わる。
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