タイヤはゴムでできている。皆さんそう思っていますし、僕もごく最近までそう思っていましたが、天然ゴムだけではなく合成ゴム(プラスチック)の割合の方が多いのです。消しゴムと言っても実はゴムではなく樹脂(プラスチック)でできているのと似ているかも知れません。
ゴムの産業化の歴史は、wikipediaの受け売りですが、19世紀末にあのグッドイヤーがゴム製品の工業化を実現し、さらに1888年にあのダンロップがニューマチックタイヤ(空気入りのチューブ式タイヤ)でゴム素材を自転車用タイヤに用い、その後自動車用タイヤに用いられるようになって――という流れだそうです。
ちなみに、自動車用の空気入りタイヤは、あのミシュラン兄弟が、1895年に開催されたパリからボルドーまでを往復する、全行程1,200kmのレースに使用したのが最初だそうです。
自動車に乗る人が増えてゴムタイヤの利用が増えると当然ゴムの需要も増大し、石油などを原料とする合成ゴムが発明されて、1931年にアメリカのあのデュポンが合成ゴムの大量生産を始めました。ここに出てくる企業名がどれも今も続く、あの超有名企業たちなのが興味深いですね。
で、現在、タイヤの原料は天然ゴムが約19%、合成ゴムが24%を占め、さらに金属やほかの素材が使われているそうです。
ということで、車に乗れば、タイヤは道路との摩擦で摩耗し、細かな合成ゴムのクズ(マイクロプラスチック)を撒き散らします。そこに雨が降って排水から川へ、川から海へとマイクロプラスチックが流れ込みます。ナショナル ジオグラフィック2019年12月号によると、海に流入するマイクロプラスチックのうち、タイヤ由来が28%を占めるそうです。
一般社団法人日本自動車工業会によると、全世界の四輪車の保有台数は2018年で14億3,318万台。その全てが動いているわけではないにしても、10億台レベルの車が走り回ってタイヤを摩耗させるのですから、そこから流れ出るマイクロプラスチックが膨大であることは容易に想像できます。
数年前にプラスチックストローが大問題になりましたが、現在、世界で海洋流出するプラスチック廃棄物は年間800万トン。そのうち、ストローの割合は0.1パーセントだと言われているので、タイヤからでるマイクロプラスチックの方がストローよりも数百倍も深刻な問題だと思います。
天然ゴムだけを使えばマイクロプラスチックは発生しませんが、その分タイヤの価格が跳ね上がりますし、天然ゴムの大量採取は森林破壊にもつながるため、タイヤ業界も難しい対応を迫られているようです。
自動車のエンジンがガソリンなどの内燃機関から電気によるモーターとなって環境負荷が減少しても、タイヤがこのままでは問題だなあと思うのです。
一番良いのはできるだけ自動車を使わない生活を送ることでしょうね。まあ、自転車のタイヤも無視はできませんけれど。
(※) サイエンス 2020年12月2日付け