近年、プラスチックが悪者になって、例えばプラスチックストローの代わりに紙製や竹、木製、麦のストローなどが出てきて、包装容器でも原料が植物由来のバイオプラスチック製品が続々と出てきています。(高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)

富山名物の「ます寿し」

このバイオプラスチックに関しては原料が植物だからなんとなく環境に優しいイメージがありますが、植物由来なので石油を消費しないという利点はあるものの、製品となったプラスチックの特性は石油由来と同じで、自然環境で分解されるわけではないのです。

さらにややこしいことに、バイオプラスチックとは別に生分解性プラスチックというものもあって、でも生分解と言いながら自然環境で分解されるものはほとんどなく、実験室内の特殊な環境でしか分解しないものがほとんど。現在大問題となっている海洋プラスチック問題を解決するものにはまだなっていません。

さて、食品の包装材としてのプラスチックは薄い、軽い、丈夫、清潔、透明で中身が見える、安価ということで現在の食品流通業界には無くてはならない存在です。

そんな今では当たり前のプラスチックの包装容器ですが、例えば食品用ラップの登場は日本では1960年のクレラップが最初。それも普及するのは電子レンジが広く使われるようになってからです。

それまでは食品を包むのに何を使っていたのか?新聞とか、竹の皮とか笹の葉とか経木(きょうぎ)と呼ばれる木を薄くスライスしたものとか。

僕は1963年生まれですが、僕が子どもの頃、お肉屋さんで肉やコロッケなどの惣菜を買うと、薄紙に包んでそれを経木に包んでくれていたように記憶しています。まだレジ袋はなくて、紙袋だったように思います。

それが、いつ頃からか、おそらく近所の肉屋や八百屋や魚屋さんが減ってきて、スーパーが増えて、コンビニができてくると、レジ袋が登場し、食品包装のほとんどがプラスチック製品に変わってしまいました。

大量生産した食品を安全に安価に全国に流通させるためには、清潔で空気を遮断できるプラスチックが不可欠だったでしょう。

それでも、未だに変わらず自然素材を食品包装に使っている食べ物があります。僕の故郷、富山県の名物の筆頭と言っても過言ではない「ます寿し」です。

ます寿しは、塩で味付けした鱒(ます)を使った押し寿司で、木製の曲物(わっぱ)の底に笹を敷いて、塩漬けしてスライスした鱒の切り身を並べ、そこに酢めしを押し詰めてから、笹を折り曲げて包み込んで重石をして作ります。笹には抗菌作用があって日持ちがするのと、食べる時に笹の香りがほのかに漂って美味しさが増すのです。

ます寿しの包材の基本は、木製の曲物(わっぱ)と笹と竹

よく名物に美味いもの無しなどと言いますが、富山名物のこの「ます寿し」は本当に美味しいのです。

江戸時代には現在と同じような姿になったと言われる「ます寿し」ですが、有名になったのは明治の終わりに駅弁として販売されるようになったのがきっかけ。駅弁で販売される「ます寿し」の製造元は限定されますが、実は「ます寿し」を作る店は富山市内を中心になんと40ほどもあって、酢の強さ、塩加減、鱒の切り身の厚み、寿司の押し加減など様々で、富山市民、県民はそれぞれ贔屓のお店があるのです。

今はコロナ禍で、観光で北陸に来て買って下さいとは言いにくい状況ですが、「ます寿し」は北陸新幹線の車内販売の他、富山駅や高岡駅、金沢駅及びその地域を通る特急列車の車内販売、北陸の高速道路のサービスエリア、東京駅、大阪駅、そして大都市圏の百貨店などでも販売しているところがありますし、もちろんネット販売しているお店も多いので、「ます寿し」食べたことが無いという人がいらしたら、ぜひお試しください。

バイオプラスチックや生分解性プラスチックの開発も大事なことでしょうが、日本人が昔から使って来た自然の素材を今一度見直してみることもサステナブルなことだと思うのです。

高柳 豊 エシカル、サスティナブルをテーマに活動するクリエイティブチーム、カエルデザインのクリエイティブディレクター。海外向けコンピューターシステムのシステムエンジニアを経てカルチャー教室で様々な文化教室の企画運営などを経験。その後、フリーランスになってから地域通貨の発行・運営、雑誌の出版編集、地サイダーやクラフトチョコレートなどの加工食品ブランドの立ち上げなど、商品企画、ブランディング、マーケティングなどを手掛けている。企画からデザイン、コピーライティング、写真撮影などクリエイティブ全般に携わる。