まずはこの写真を見ていただきたいのです。今年の1月30日に金沢を流れる犀川河口部のレジ袋などが絡みついた護岸ネットの写真です。僕は障害を持つ仲間たちと海洋プラスチックをアクセサリーにアップサイクルする事業を行っているので、時々海岸にプラスチックごみを回収しに出かけます。レジ袋は軽くて風に飛ばされやすいためか海岸で見かけることはほとんど無いのですが、こうしてネットに絡まったレジ袋を見ると胸が痛くなるのです。

ネットに絡まっているのはほとんどレジ袋だと思われる。2021年1月30日 金沢を流れる犀川河口部

昨年の2020年7月1日から全国でプラスチック製レジ袋が有料化されました。それから半年が過ぎて、その後どうなったのか。

様々な調査、アンケートの結果が発表されていますが、例えば、ゼネラルリサーチが昨年の11月に全国20代〜60代の男女を対象に行った「レジ袋有料化」に関する意識調査では、40代以上でエコバッグを持ち歩く率が高く、20代30代はレジ袋を購入する率が他の年代より高い傾向が見えます。

「レジ袋有料化」がきっかけとなって、環境や地球に対する意識が変化した割合は5割以上となっていて、環境問題の啓発という点で「レジ袋有料化」は意味があったと思われます。

さて、この「レジ袋」は、石油精製時に出来てしまう副産物であるポリエチレン(精製量の1.4%)で作られているため、「レジ袋」を削減しても石油の消費量が減るわけではないし、「レジ袋」を含むプラスチック袋のゴミは自治体ごみの0.4%、海洋プラスチックごみの0.3%に過ぎないとされていて、「レジ袋有料化」は環境保護にはほとんど役立たないという人たちもいます。

日本は2030年までに使い捨てプラスチックごみ排出量を25%削減することを目指していて、「レジ袋有料化」はその目玉政策だったのでしょうが、プラスチック製品に占める「レジ袋」の割合で言えば25%削減達成にはほとんど影響しないように思えます。だからと言って、実際に冒頭のような光景を見ると「レジ袋有料化」は無駄だとは思えないのです。

問題なのはレジ袋やプラスチックそのものでなくて、それらがゴミとなって海に流れることなのですけれど、これはモラルの問題なのでしょうか?

いくら日本人のモラルが低下してきているとは言っても、ほとんどの人は「レジ袋」やペットボトルなどのポイ捨てなんてしないと思います。それなのに、海はこの写真のような状態です。

いくら「レジ袋」が占める割合は少ないと言ってもこれは酷いと思います。これらの「レジ袋」が幽霊のように海中を漂い、海洋生物が餌と間違って食べてしまって死んでいるのは現実です。

ポイ捨てしなくても「レジ袋有料化」前の日本でのレジ袋消費量は300億枚とか600億枚とか推計されていて、仮に500億枚としてその僅か1%でも自然環境に流出したら、5億枚ものレジ袋が川から海へと流れ出てしまうことになるのです。5億枚ですよ。5億枚。

割合の多い少ないではなく、この現実を海で目の当たりにすると、やはり「レジ袋」は削減すべきだと思います。それも「有料化」ではなく「禁止」すべきなのでしょう。

世界的に見れば「レジ袋禁止」の国もありますし、日本でも今年の1月1日から京都府亀岡市が市内のすべての小売店でプラスチック製レジ袋の提供を禁止する条例を施行していますので、できないことは無いはずです。

色々異論反論は多々あるでしょうが、「プラスチックストロー」、「レジ袋」、「ペットボトル」・・・。使い捨て前提のプラスチック製品は作らない、売らない、買わない、そして捨てない。

この海の現状を見て、それ以外の選択肢を考えられますか?

ペットボトルを含め、大量のプラスチックゴミが散乱する金沢の専光寺浜 2020年2月12日