約450匹。これは平日に日本で殺処分される犬猫の数だ。人とペットはどのようにすれば共生できるのか。殺処分ゼロを目指すTOKYO ZEROキャンペーン呼びかけ人の宮本亜門さんは、「生体販売をやめてほしい」とペットショップに訴える。(聞き手・池田 真隆=オルタナS編集長)

宮本亜門さんは10月9日、TOKYO ZERO キャンペーンが主催したシンポジウムに登壇した

――英国やドイツなどヨーロッパでは、ペットを飼うとき、ブリーダーや保護施設から引き取ることが一般的です。ですが、日本では生後間もない犬猫がペットショップで売られています。

日本はモノで溢れた便利な国ですが、使い捨てを繰り返す残念な先進国でもあります。使い捨てが当たり前になり、命あるペットも、まるでモノとして扱うようになってしまいました。

店頭で蛍光灯に照らされている犬の光景など、海外では見たことがありません。ペットショップの存在が悪いわけではなく、生体販売だけやめてほしいです。

ペットを手軽に購入できるようになるほど、大量に生産するようになります。その結果、大量破棄につながってしまう。先進国として大変恥ずべきことだと思います。「かわいい」からと、ノリで購入することを避けなければいけません。

――生体販売をなくして、ペットショップにはどのようなことを望みますか。

ペットショップに犬猫がいることは悪いことではないと思います。ただ売らないでほしい。保護施設に同じような犬がいますよとビデオか写真で見せてあげて、里親探しを手伝ってあげればいい。そして、ペットを飼うことの楽しさだけでなく、難しさも伝えてほしい。そうすれば、すごく素敵なペットショップができるはず。

震災や豪雨などの災害で被災犬も増えています。一匹でも殺されないために、蛇口の元から直していくことが大切です。

――宮本さんはこれまでに捨て犬や保護施設から引き取った犬を飼われています。

最初に飼ったのは、沖縄県で見つけた子犬でした。当時、映画「BEAT」の撮影中で、撮影隊と、人が行かないような崖に行ったとき、口を針金で結わえられて、カゴの上には石が置かれた状態で捨てられていた子犬がいたんです。

その子犬を引き取り、映画にちなんでビートと名付けました。慶応義塾大学でドッグ部を創設するほど犬好きだった父と育て、10歳で天国に旅立ちました。いまは、沖縄の保護施設から引き取った2代目ビートを飼っています。

どちらも沖縄で生まれたのですが、海で泳ぐことは苦手です。でも、ぼくがリフレッシュするために海に浮かんでいると、泳げないのに、流されていると思い込み、犬かきして必死に探しにきてくれます。

一度捨てられているからでしょうか。その目は、「もう捨てないで」と訴えているように思えました。

――TOKYO ZEROキャンペーンでは、東京オリンピック・パラリンピックが開催する2020年までに東京での犬猫の殺処分ゼロを目指しています。この目標を実現するために若者には何ができるでしょうか。

動物保護施設を訪問したとき、そこで働く職員が発した言葉が脳裏に焼き付いています。その人は、タバコを吸いながら一人うつむきながら休憩していて、近づくと、「本当はこんなことしたくないんだ」と胸の内を明かしてくれました。

保護施設が悪いわけでも、ペットショップの存在が悪いわけでもないと考えています。何度も言いますが、生体販売だけはやめてほしい。

若い人には殺処分の現場をちゃんと見て、その上でペットの飼い主になる意味を自分の頭で考えてほしいです。この日本のペット問題を変えていくために、若い人の意識変革が必要です。

ペットの飼い主が増えることは良いことです。どんどん飼ってほしい。ただ、ペットショップでは購入しないでほしいと切に願います。

TOKYO ZEROキャンペーンでは、東京を動物福祉先進都市にするために3つの取り組みを行っている。

一つは、「8週齢規制」の早期実現。生後8週間(56日)にも満たない子犬が平然と売られているが、幼すぎる子犬を生まれた環境から引き離すと、精神的外傷を負う可能性が高い。無駄ぼえや無駄がみなどの問題行動を起こしやすくなり、飼い主の飼育放棄へとつながってしまう。

二つ目は、動物愛護センターを「ティアハイム」的施設へすること。動物愛護センターに引き取られた犬猫は劣悪な環境で、殺処分までの時期を過ごすことが多いが、施設を改修し、一般の人が気軽に訪れられる立地や建物に変えることを目指している。

最後の三つ目は、譲渡率の向上。2012年度の殺処分率は77.33%にも及び、現在も平日は一日で約450匹が殺処分されていることから、保護犬や保護猫と里親のマッチングを促進していく。

これら3つの取り組みを実現するために、オンラインでの署名活動を展開している。署名の提出先は、小池百合子・東京都知事や環境相。現在、10万人以上がこのキャンペーンに賛同している。

TOKYO ZEROキャンペーン



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