犬や猫と比べると飼いやすそうに感じる鳥。SNSでかわいい姿を見る機会も増えました。しかし皆さんは、大きな鳥の場合、50年も60年も長生きすることをご存知でしょうか。

家庭の事情や入院、高齢化ーー。さまざまな事情から飼い主が飼えなくなってしまった鳥を保護・譲渡しながら、啓発活動に力を入れるNPOがあります。(JAMMIN=山本 めぐみ)

人と鳥と社会の幸せを目指して

TSUBASAの保護施設にいるオオバタンの「ピンキー」。「ピンキーは、鳴き声による近隣住民とのトラブルにより施設へやってくることになりました。今年51歳になりますが、撫でてもらうことが大好きな、甘えん坊な一面もあります」

埼玉県新座市にある認定NPO法人「TSUBASA(つばさ)」。20年以上にわたり、行き場を失ったインコやオウムなどの飼い鳥を保護・譲渡しながら、飼い鳥と飼い主が終生幸せに暮らせるようにと、飼い鳥に関するさまざまな情報の発信にも力を入れてきました。

「SNSでかわいい鳥の投稿を見ることも増えましたが、それは日常のごく一部。鳥を飼う前に十分な情報や知識がなく、『鳴き声がうるさい』『噛むから』と手放す飼い主が後を絶ちません」と指摘するのは、TSUBASAスタッフの高橋麻由美(たかはし・まゆみ)さん。習性や鳴き声の大きさ、どのぐらい生きるかなどを知った上で鳥を迎えてほしいと話します。

現在、TSUBASAの施設には、保護された100羽以上の鳥たちがおり、一羽一羽、特徴や性格にあわせて、スタッフがきめ細やかなお世話をしているといいます。

「それぞれにごはんのメニューも異なるので、ごはんは前日にすべて準備して、作り間違いがないよう気にかけています」と話すのは、スタッフの城ヶ﨑裕海(じょうがさき・ひろみ)さん。元の飼い主から何をもらっていたかや、鳥の大きさや体調にあわせても異なるため、一羽一羽、タッパーに内容を表記して管理しているといいます。

お話をお伺いした、左から城ヶ﨑さん、涌井さん、高橋さん

鳥の体調管理は、TSUBASAでの大事な仕事の一つ。

「毎朝、ごはんをどのぐらい食べたか、うんちをしたか、見てわかる範囲で異常がないかの健康チェックは欠かせません」と話すのは、スタッフの涌井智美(わくい・ともみ)さん。

「ケージの掃除や体重測定、ごはんを配ったりする合間に、交代で鳥さんたちを中庭に放鳥したり日光浴をさせたりしています。鳥さんのお世話をしながら、午後からは飼い主さんからの飼育相談や里親会の対応、事務作業などを、現在は非常勤も含め10名ほどのスタッフとボランティアさんで行っています」

健康について、寿命について…
飼う時に意外と知られていない、鳥の真実

キエリボウシインコの「タロット」は、50歳以上のおじいちゃんインコ。飼い主が倒れて家に一羽残されていたところを親族が発見し、今に至る。「引き取り時にはタロットの好きな物などが細かく丁寧に記されたノートを受け取り、大切にされていたことが痛いほど伝わりました」

TSUBASAでは、鳥に何かあった時、飼い主が気軽に悩みや心配事を相談できる場所として、「鳥さん電話相談室」も開設しています。コロナの間、おうち時間が増えた影響もあるのか、ここ最近は初心者の飼い主からの相談も増えているといいます。

「ご相談を聞いていると、わざわざ病院に連れていく必要があるのかという意識の方が少なくありません。実際に鳥さんを診察できる獣医師さんもまだ少ないという現実もありますが、鳥は一度体調を崩すとあっという間に悪くなります。元気なうちに健康診断や感染症の検査を受け、何かあった時にすぐかかれる病院を見つけておくことが大切だとお伝えしています」

TSUBASAの1日は、一羽一羽の健康チェックから始まる。「毎日100羽の鳥たちをお世話するためにはかなりの時間がかかりますが、ボランティアさん達のお力もあり、鳥たちの健康と安全が保たれています」

さらに、鳥を飼う際に知られていないこととして、その寿命があるといいます。

「セキセイインコのような小型の鳥でも、10年以上生きることは稀ではありません。30歳近く生きるオカメインコもいるし、大型の子になると4〜50年以上生きます。TSUBASAにいる鳥の中にも、40歳、50歳を超えている子が何羽かいます。それでも毛並みもツヤツヤで、年齢を知るとびっくりするような子もいます」

「長生きするので、飼い主さんが『この子を死ぬまでお世話をするのは難しいかもしれない』という視点を持って、何かあった時に引き取ってくれる先を探しておくことや、その時に鳥さんがすんなりと馴染めるような『鳥の社会化』を意識しておくことも重要です」

「正しい知識があれば、手放すことを回避できる」

キラキラと瞳を輝かせてこちらを見つめるキバタンの「ペリー」は50歳。「50歳に見えないくらい若々しい鳥さんです。表情豊かで、おやつにもらったくるみの殻を割ることができてとてもご満悦なその表情は、無邪気な子どものよう。とても癒されます」

「飼い主として、鳥を飼う上での知識をアップデートし続ける必要がある」と高橋さん。

TSUBASA代表の松本壯志さんは、「常に鳥さんのことを勉強して、新しい知識を得ていこう」と、ワンコインで気軽に受講できたり、知るとおもしろいと思ってもらえるようなセミナー開催など学びの場を多く作ることで、その土壌を少しずつ根付かせてきました。

「鳥さんの飼い方の常識も日々進化しています。たとえば、一昔前は2週間に1回の交換でいいというふうに言われていた水の交換は、今は毎日が基本ですし、環境変化に弱いので、外で飼うのではなく室内で、保温しながら飼うようになりました。ごはんも食パンやひまわりの種ではなく、今は必要な栄養がバランス良く配合されたペレットが登場しています」

引き取り時から毛引きをしている、キバタンの「ヤホー」。「毛引きは、一旦癖になってしまうと元の原因を取り除いても改善しないことが多いです。そのためTSUBASAではあまり神経質にならず羽がない部分もその子の個性として捉えています」

「鳥の種類や個体によっても異なりますが、鳥は全般的に環境変化やストレスに弱い生き物です。人のことが大好きな鳥ほど大きな声で呼び鳴きをしますし、飼い主さんが留守にしただけでごはんが食べられないとか、預けられただけで食べられないということもあります」

「鳥さんが噛む、大声で鳴く、毛引き(自分で羽をむしってしまう)が直らないといった問題行動の相談もよくお受けしますが、なぜそのような行動をするのか、どのように対策ができるのかという知識があれば、手放す以外の方法で対処できます。

多頭飼育崩壊現場から103羽の文鳥を保護。
「明日は我が身。誰にも起こり得る」

103羽の文鳥レスキューの現場。文鳥はマンションの一室で長年放し飼い状態で、部屋の中は積もりに積もった糞便と異臭、大量のハエやゴキブリが湧いていた。「今まで見てきた現場の中で過去最悪と言える環境でした」

最近では、多頭飼育崩壊の問題も顕在化しているといいます。2021年には、高齢の飼い主の自宅から、103羽の文鳥をレスキューしました。

「ご本人からの依頼ではなく、騒音や衛生的な問題から近隣住民の苦情があり、管理会社さんからご相談を受けてのレスキューでした。ごはんの量や気温など、繁殖の環境が揃うと、鳥の繁殖力は強くなります。知らずにオスとメスを同じ空間で飼育すると、一度に4〜5個の卵を産んで、さらに子どもたちがまた卵を産むので、数はどんどん増えてしまいます」

「現場に入ってみると、マンションの一室の6畳ほどの部屋が文鳥の部屋になっていました。文鳥たちは放し飼いで、部屋の真ん中にどんと置かれたごはんを自由に食べていました。締め切られた部屋には糞尿が積み重なり、悪臭が立ち込め、ごはんには蝿がたかり、ゴキブリがその辺をうろうろしていました」

「文鳥は昆虫も食べる鳥なので、ハエやゴキブリも食べていた可能性があります。衛生面はかなり悪く、実際に保護した文鳥たちの体内環境も良くありませんでした。近親交配が進み、なかには奇形の子も何羽かいました」

レスキューした文鳥たち。「外見上は健康そうな子も多かったですが、糞便検査から線虫等が排出される子がほとんどでした。 近親交配の影響からか足の変形がある子もみられました。レスキュー時より里親募集を始めて1年と少し、おかげさまで施設に残る文鳥は13羽となりました」

「保護した後、全羽に獣医による健康チェック、遺伝子検査、糞便検査などを行い、必要な治療を行いましたが、鳥は環境変化に弱いため、高齢だったり疾患があったりして変化に耐えうる十分な体力がなく、残念ながら亡くなってしまった子もいます」

「それでも69羽、事情を知って迎え入れてくださる新しい里親さんに出会うことができました。『飼い主は、なぜそんな状況になるまで放っておいたんだ』という批判の声もあるかもしれません。でも、明日は我が身で、鳥を飼っていたら、同じ結果になる可能性が誰にでもあります」

「病気になってお世話ができなくなってしまった、知らない間に鳥さんが卵を産んで、どうしたらいいかわからないまま孵化してしまった…、背景はいろいろです。レスキューした103羽の文鳥の飼い主さんも、私たちが当初、抱いていた印象とは異なり、鳥を愛する愛鳥家さんという印象を受けました」

「このような事例の結果を見て責めるのではなく、警告として受け止めて、鳥を愛する一人ひとりが、『自分は、一緒に暮らす鳥のために何ができるか』を考えるきっかけにしてもらえたらと思います」

点と点をつなげ、鳥が幸せに天寿を全うするお手伝いを

6月15日「オウムとインコの日」にTSUBASAで開催される慰霊祭。慰霊碑には、TSUBASAで亡くなった子たちが眠る。「全国の愛鳥家さんからご希望があれば、飼っている鳥さんのお塔婆を預かって、お坊さんに一緒にお経をあげていただきます」

「レスキューの現場から見ていると、その子の里親さんが決まった時の感動はひとしおです」と涌井さん。以前、レスキューで担当した一羽のセキセイインコのエピソードを話してくれました。

「飼い主さんが鳥を残して緊急入院し、病院の先生に申し出てくださって、所有権の放棄を含めて納得いただいた上で必要な手続きを踏み、入院から1週間後、不動産の方の立ち会いのもとレスキューに訪れました」

「ご自宅へ伺うと、荒れた部屋の中に布がかけられた四角い箱があって、その上に御守りが三つも四つも置かれていました。自分がいない間、この子が守られるようにと置かれたのでしょうか。飼い主さんがどんな思いで大好きな鳥さんの元を離れたのか、胸が詰まる思いでした」

「1週間が過ぎていたので、もしかしたらもう死んでいるかもしれない…と思いながら、怖い気持ちで布をとると、山盛りのごはんがあって、鳥さんはまだ生きていました。引き取り後も声を掛けるとすぐにこちらへ寄って来て、飼い主さんがどれだけ愛情を注いでいたかが伝わりました」

施設の中庭にて、羽繕いし合う「タロ」と「オッペン」。「それぞれ別々のご家庭からやって来ましたが、初見でフィーリングが合ったようです。普段は別々のケージで生活しているため、放鳥時間は2羽にとって特別な時間になっているはずです」

「その後、新しい里親さんに出会い、残りの人生を楽しく過ごしたようです。最初の飼い主さんとの別れこそあったものの、トータルで見た時に、この子は人に愛され人を愛し、きっと幸せな一生だったのではないかと思います。点と点をつなげ、鳥が天寿を全うするのを見守ることができるのはとても嬉しく、この仕事をやっていてよかったと心から思います」

「ペットショップで気軽に鳥を買えてしまいます。もちろん、飼い始めることはわるいことではありません。ただ、命を預かるわけなので、その動物のことを勉強して、知って、納得した上でお迎えしてほしいと思っています」

「もしお世話をする中でわからないことや悩むことがあったら、あるいは手放しを検討するような事態に直面した時に、ぜひ私たちのことを思い出していただいて、手放しに至る前に、何かできることがあればと思います。鳥と人が幸せに生きられる社会のために、私たちはこれからも発信していきたいと思っています」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、5/8〜14の1週間限定でTSUBASAとコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円がTSUBASAへとチャリティーされ、感染症の検査や医薬品・医療品、室温を一定に保つための光熱費など、保護した鳥たちの日々のケアに必要な資金として活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、羽を広げるキエリボウシインコの姿を描きました。力強く羽ばたくその姿は、鳥が飼い主のもとで、あるいは事情があって離れなければならなくなっても、新しい飼い主のもとで一生を幸せに、豊かに暮らしてほしいという願いが込められています。


JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

・飼い鳥との正しい付き合い方を知って。鳥を愛し、鳥に愛され、鳥にも人にもやさしい社会を〜NPO法人TSUBASA

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は8,000万円を突破しました。

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