プロレスラーの木村花さんがSNS上での誹謗中傷によって亡くなったことを受け、署名サイトではプロバイダ責任制限法の改正を求めるキャンペーンが始まり、賛同者は4万人を超えた。(オルタナS編集長=池田 真隆)
署名サイト「change.org」でキャンペーンを立ち上げた渡辺大和さんは、「インターネット上で匿名アカウントから誹謗中傷を受けても、発信者開示請求までのプロセスの煩雑さとハードルの高さにより、被害者のほとんどが泣き寝入りしている現状がある。自分も10代の頃に2ちゃんねるで実名を晒され叩かれたことがあり、22歳の木村さんの苦悩は、他人事ではない」と署名を集めた経緯を話す。
「この問題は単に、『誹謗中傷をやめよう』という道徳論を説くだけでは解決しない。SNS登場以前の時代である、2001年に制定されたプロバイダ責任制限法の改正こそが本質的な問題解決の道だと考えている」
現行の「プロバイダ責任制限法」では、相手が匿名アカウントである場合は、名誉毀損などの要件を満たしていても、サービスの運営者に発信者の情報開示を求めたり、投稿の削除を依頼したりするには相応の時間と金銭がかかり、被害者側が泣き寝入りするケースが多かった。
渡辺さんは、2001年に制定されたこの法律の3つの問題点を指摘する。それは、①発信者情報開示のための要件がそもそも高すぎる、②プロセスが煩雑で、弁護士費用をかけなければ高確率で開示請求に応じてもらえない、③削除要請後の対応に応じなくても「プロバイダ」が刑事責任を問われない。
そこで、今後、匿名アカウントでの誹謗中傷行為を根絶するために、①発信者情報開示のための要件を下げる、②費用をかけて弁護士に頼まなくても開示請求出来るように、開示までのプロセスを簡略化・デジタル化する、③削除等の要請に応じず被害者の不利益を拡大する「プロバイダ」には、刑事罰を下す――ように法改正することを求めた。
署名の提出先は、高市早苗総務相。26日に行われた閣議後の記者会見で、高市総務相は、「匿名で人を中傷する行為は人として、ひきょうで許し難い」とし、「制度改正を含めた対応をスピード感を持ってやって行きたい」と述べた。
渡辺さんのキャンペーン「SNSの匿名アカウントによる誹謗中傷を撲滅するために、プロバイダ責任制限法の改正と刑事罰化を求めます!」
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