近年、アイヌが注目されている。「アイヌ新法」成立は記憶に新しく、大ヒットコミック「ゴールデンカムイ」により、多くの人がその文化の多様性や自然との共存を大切にする精神性に新たに魅せられている。(Lond共同代表=石田 吉信)

今年も北海道白老町にオープンしたばかりのアイヌ文化施設「ウポポイ」など、話題が尽きない。長編デビュー作『リベリアの白い血』で、ニューヨークに渡るアフリカの移民の苦悩を描き、国内外で高く評価された新鋭・福永壮志監督が5年をかけて作り上げた2作目となる今作は、自身が生まれ育った北海道を舞台に、阿寒湖のアイヌコタンで暮らす少年の成長を通して、現代のアイヌ民族のリアルな姿を瑞々しく映し出している。

本作で初主演を果たしたのはアイヌの血を引く新星・下倉幹人。演技は初めてとなるが、力強い眼差しが印象的な主人公・カントを演じ、アイデンティティにゆれる等身大の役どころに挑戦した。

その他主要キャストもアイヌが務め、カントの父の友人デボに扮するのは、阿寒に暮らし多岐にわたる活躍をみせる秋辺デボ。アイヌの伝統を重んじるデボ役を体現している。カントを優しく見守る母のエミ役は下倉幹人の実の母親でミュージシャンの下倉絵美が担当した。三浦透子、リリー・フランキーら実力派がゲスト出演し、作品に重厚感をもたらせている。(アイヌモシリHPから)

フィクションではあるが、映像のタッチはまるでドキュメンタリー

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