世界では年間500万人を超える子どもたちが、本来であれば予防や治療が可能な下痢やマラリア、出産の際の合併症などによって命を落としています。「自分たちができることで、一人でも多くの命を救いたい」。カンボジアやラオスで医療支援や水環境の整備に取り組むNPOがあります。(JAMMIN=小林泰輔)

「少しでも多くの命を救うために今、できることをやる」

カンボジアやラオスで活動する認定NPO法人「あおぞら」は、「すべての命が大切にされ、その人らしく生きられる社会」の実現を目指し、医療支援や水衛生環境の整備を行っています。

「世界では、新生児(生後28日未満の子ども)だけでも年間約270万人が亡くなっています。これらの命を救うために大切なのは、医療環境の整備だけではありません。適切な医療技術があれば、半数以上の新生児の命を助けられます」と話すのは、理事の大音雄真(おおと・ゆうま)さん(28)。団体を立ち上げた理事長の葉田甲太さんは医師で、「葉田をはじめ、あおぞらには新生児蘇生法のスペシャリストや助産師が在籍しており、専門家が現地に赴き、蘇生技術の指導にあたってきました」と話します。

コロナ以降、海外渡航が難しくなり、医療支援の活動が制限される中、現地でも蘇生技術を教えられる人を育てるために、タブレットを使用したデバイスを用いて新生児蘇生法の講習を行うほか、「コロナ禍だからこそできることをやろう」と、現地の水衛生の環境を整える活動も始めました。

「私たちが支援を行うカンボジア・サンブール地域には7つの小学校がありますが、うち6つは手洗い場がなく、溜め池の水や瓶に貯めた雨水を使用している状況でした。そこで2020〜2021年のうちに、6つの小学校に新しい手洗い場を設置しました」

「誰かじゃなく、この人のために」。一人の女性との出会いが、活動のきっかけ

団体を立ち上げた葉田さんは学生時代、「150万円あれば、カンボジアに小学校が建ちます」と書かれたパンフレットをたまたま見かけ、仲間を募ってチャリティーイベントでお金を集め、2006年にカンボジアに小学校を建設。その過程を綴った葉田さんの著書『僕たちは世界を変えることができない。』は、俳優の向井理さん主演で、2011年に映画化もされました。

学校建設から数年後、医師になった葉田さんが小学校の継続支援のためにカンボジアを訪れた際、生後すぐの赤ちゃんを亡くした女性と出会います。その時に「この人のためにできることがしたい」と思い、あおぞらの前身となる活動を始めたといいます。

「亡くなった赤ちゃんや泣いていたお母さんに何かできないかと、カンボジアから帰国後、葉田は長崎大学大学院の熱帯医学講座にて、亡くなっていく赤ちゃんをどう減らせるかを学びました」

2022年には、「2021年度世界の人びとのためのJICA 基金活用事業」として、ラオス保健科学大学にて、1年間で3回にわたり、デバイスを用いた新生児蘇生法インストラクター育成講習を行った

「その後、最初に取り組んだのが保健センターの建設です。カンボジアのサンブール地域には保健センターがあったのですが、老朽化が進み、機材も故障していて安全な医療を提供できませんでした」

「当時は、一番近くの病院も車で数時間を要しました。そもそも住民の方は車を持っておらず、緊急の場合、救急車を手配する必要があります。しかし救急車に乗るにも高額なお金が必要となり、利用できるのは一部の人だけ。出産は自宅で、しかも分娩技術は発達していません。そのため、生後1週間のうちに亡くなる子どもたちが非常に多かったのです」

「近くに病院がなく、医療が遠い現実。葉田は小学校建設の際に活動を共にした国際NGO『ワールド・ビジョン』と連絡を取り、保健センターの建設を進めていくことになります。そこで2017年7月にあおぞらが設立されました。NGO団体の協力のもと、2018年2月にサンブール保健センターが開院しました」

その後、クラウドファンディングで1200万円を集め、タンザニアでも2020年に保健センターを建設。この保健センターは現在タンザニア政府に運営を引き継いでいるといいます。

「”100%完璧にできない”は、目の前の1%をやらない理由にはならない」

あおぞらのスタッフの皆さん。カンボジア サンブール地区の子どもたちと

12名のメンバーと共に、現在はカンボジアとラオスで支援活動をしているというあおぞら。メンバーは皆、本業の合間を縫って活動を行っているといいます。

「あおぞらの主な活動資金は、医療従事者や映画、これまでの活動に共感してくださった方々からの寄付金です。人件費は最低限で、寄付金はできる限り、現地での活動資金にしているので、現地への渡航費や滞在費は自腹ということもあります」

「私は医療従事者ではありません。主に経理や事務作業、運営、事務局を担当しています」と大音さん。

「基本的に現地に渡航するのは医療従事者のメンバーです。現地で活動するメンバーとは感覚に少なからず違いがあると思っていて、そのギャップに、時折『ちゃんと力になれているのかな』と考えることもあります」

「そのような時は、あおぞらのメンバーの一人が言った『100%完璧にできないからというのは、目の前の1%をやらない理由にはならない』という言葉を思い出します。医療従事者のメンバーは、『僕たちにはそれぞれにできることがあって、それぞれ必要な仕事なんだよ』と言ってくれる。なので、自分のできることを通して、現地のためになれたらいいなと思って仕事に取り組んでいます」

「継続して支援を行うことで、途上国の現状を多くの人に知ってもらいたい」

あおぞらは現在、カンボジア・サンブール地域の小学校へのトイレ建設プロジェクトを実施しています。

「今回の支援先となる小学校では、生徒が250〜280人くらいいるのに対し、トイレがたった2つしかありません。野外排泄が当たり前になっていて、衛生上の問題や女性の生理などの問題もあります。今回のプロジェクトでは5つ増設する予定です」

「費用は支援者の皆さまからの寄付金から賄うほか、国際協力に興味を持つ学生へのプログラムの一環として、有志の高校生をあおぞらがサポートするという形で、クラウドファンディングも実施しています」

「支援内容によっては一部、現地の方にもお金を出してもらうこともあります。金額の問題ではなく、自分たちがお金を出すことによって、支援に依存しないことや、支援されたものに対し、大切に継続的に使用してもらうためです」

「日本よりも不自由な環境で生活するカンボジアの子どもたちですが、日本の子どもたちよりも笑顔の子が多い。援のために現地に足を運ぶと、逆に元気をもらうこともあります」

「お金の課題は大きいです。現状、活動規模が団体としての収入だけでは追いつかない状態になっています。世界の富裕層上位1%で世界全体の4割の資産を占めると言われており、その中で慈善活動を行っている方もいますが、それでも解決できないのが貧困問題です。単純な問題でないことは承知の上ですが、途上国支援を行っている団体として、切っても切り離せない問題です」

「医療支援という話にピンと来ないという声も聞くので、今後、活動内容を知ってもらえる取り組みをさらに増やしたいです。誰かに喜んでもらえることは、結局は自分のためだと思うし、そのような感謝が増えていけば、社会は良い方向に向かうと思っています。さまざまな活動を通して、少しでも多くの方に私たちの活動を知ってもらえたらと思っています」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、4/3〜4/9の1週間限定で「あおぞら」とコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、カンボジアの水環境の整備のために活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(左・700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、地球を覆うようにハートマークやスマイル、花をラフなタッチで描きました。相手を思いやりながらポジティブな姿勢で課題に挑むことで、皆が笑顔になっていく様子を表現しています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

「誰かのためじゃない、あの人のために」。医療支援や水衛生環境の整備を通して、途上国の子どもの未来を守る〜NPO法人あおぞら

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は8,000万円を突破しました。

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