新型コロナウイルスの感染防止のため、大阪府は24日、新型コロナウイルス特別措置法に基づき休業要請に応じない大型パチンコ店6店の施設名を公表した。当初から、SNSでは「なぜパチンコ店はいまだに営業しているのか」という声が相次いで投稿されていた。そもそもなぜパチンコに依存してしまうのか、また、パチンコ依存症からどう抜け出すのか。オルタナSでは2013年に『私、パチンコ中毒から復帰しました (中公新書ラクレ) 』の著者・本田白寿氏に、「パチンコ中毒から抜け出すには」と題して記事を寄稿してもらった。一部編集して、再掲する。(オルタナS編集部)

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パチンコ中毒者の問題解決に向けて、なぜこれほどまでに論じられないのであろうか?

レジャー白書2012によるとパチンコ人口は1260万人。多くの日本人がパチンコを楽しんでいる。一方でパチンコにのめり込みすぎて、借金を抱える、授業や仕事をさぼる、家事・育児を放棄するといった人も少なくない。

本人だけの問題では済まず、多くは友人、家族を巻き込み、周囲の人間を悲しませる。一度でもパチンコにどっぷりはまると、そこから抜け出すことは中々難しい。

「お酒がやめられない」「甘いものがやめられない」「タバコがやめられない」のと基本的には同じである。この問題を解決させるための最も重要なテーマとは何か?

それは「本人がどうやったらパチンコをやめることができるのか?」である。

パチンコ中毒の問題は、時に犯罪や事件、自殺につながるほどの深刻なものである。にも関わらず、正面からこのテーマが論じられることはほとんどない。

本屋に足を運べばこのことがよく理解できる。うつ病から立ち直るための本、禁煙のための本、アルコール依存回復の本などは容易に見つけられるが、「パチンコ中毒から立ち直るための本」は皆無に等しい。

悩んでいる人の数の多さ、深刻さから考えると実に不思議な現象ともいえる。その理由は2点ほど考えられる。

一つは問題解決の方法が明らかになっていないことである。ほとんどの精神科医、社会学者、カウンセラーがお手上げ状態であり、パチンコ中毒から回復するための具体的な提案ができない現状にある。

そのため「パチンコをなくすべきだ」と結論づける傾向にある。「パチンコをなくすべきだ」と主張してもよいと思うが、現実にパチンコがすぐになくらないのであれば、「パチンコが街中で溢れている現状で、どうやってパチンコ中毒から抜け出すのか?」といった現状に即した即効性のある議論が必要である。

そして、もう一つの理由は他のテーマに乗っ取られてかき消されてしまうのである。他のテーマとは、例えば「パチンコはギャンブルであり違法ではないのか?」「パチンコ依存症という心の病気なのではないか?」といったことである。

これらのテーマで議論が行われるとどちら側の意見にも主張できるポイントがたくさんある。それゆえこのような議論は盛り上がりやすい。そして、盛り上がりやすいからこそ、一番大切なテーマがかき消されてしまうのである。

このようなテーマでの議論は中・長期的な視点で考えるならば必要かもしれない。しかし、「今すぐなんとかしたい」と思っている本人や家族にとっては、何ら有用性はない。

パチンコがギャンブルであろうがなかろうが、パチンコ依存が病気であろうがなかろうが、関係ないのである。うつ病の人にとって「どのようにして、うつを治すのか?」、アルコール依存の人にとって「どのようにして断酒するのか?」が大事なのであるのと同様、パチンコ中毒者にとっては「どのようにパチンコ中毒から抜け出すのか」が最も重要なテーマなのである。

もう少し「困っている人をどう救えばいいのか?」という観点の議論が必要ではないだろうか?

深刻なパチンコ中毒に陥っている場合、当事者はどのように行動していけばよいか?筆者なりの考察を述べていきたいと思う。(筆者も重度のパチンコ中毒者であった)。

パチンコ中毒は、お金を浪費することからはじまり、学業・職務怠慢、育児・家事放棄、食生活の乱れ、借金の増大、虚言癖、人間関係破綻へとつながり、時に社会的事件・犯罪、自殺につながっていく深刻な問題である。

なぜパチンコ中毒者がこのように追い込まれていくのかというと、その時々で生じる借金やうそのことを誰にも話せず、一人で抱え込むことにある。本当は誰かに相談したいのであるが、身近な家族に話せば非難されることは明らかであり、職場の同僚や友人にも恥ずかしくて話せない。

本当はどうにかしなければと本人も自覚しているのであるが、誰にも話せないため精神的な負担はどんどん膨らんでいく。精神的な負担が膨らむとそれを解消するためのごとく、さらにパチンコをしてしまい悪循環に陥ってしまうのである。

それゆえ、解決に向けての本当の第一歩は、「共感して受け入れてくれる誰かに、自分の恥ずべきこれまでの行為を洗いざらい包み隠さず話すこと」である。

本当に追い込まれている者は、これが出来るだけで「ふっ」と心が軽くなる。それが何より大切である。パチンコ中毒者は「本当はパチンコをやめたいのにやめられない」状態に陥っており、強烈な自己嫌悪に襲われている。

つまり、精神的に追い込まれ、弱っている状態なので、非難されることに耐えられない状態なのである。今から、そのような形で話を受け入れてくれる可能性が高い手段を紹介したいと思う。

まず、日本全国の各地域で行われているGA(ギャンブラーズ・アノニマス)と呼ばれる自助グループである。基本的なスタンスは、パチンコ中毒者だけで集まり、それぞれ話したいことを話す。

聞き手は決して「他の人の非難をしない」というルールが定められている。とにかく「同じ悩みを抱えている人間しか来ない」という点だけでも話しやすいだろう。

もし、「直接、人と顔を合わすのは苦手だ」という場合は、GREEやmixiなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の活用をオススメしたい。携帯電話から無料で登録でき、同じ悩みを抱えた仲間とつながることができる。

コミュニティーと呼ばれるサークルのようなものがあり、そこでは「パチンコをやめたい人のコミュニティー」がいくつも存在するのである。ここで、気の合う仲間を見つけ、洗いざらい自分の全てをさらけ出すのも一つの方法である。

それから、RSN(リカバリーサポート・ネットワーク)と呼ばれる電話相談機関がある。ここの電話相談の最大の特徴は「パチンコ依存に特化している」点にある。

それだけに、ここではどれだけ借金の話、うそをついてきた話、周囲に迷惑をかけている話をしても、まずは冷静に話を聞いてくれるだろう。そして、その対処法についてもこれまでの相談実績に応じた提案をしてくれる可能性がある。

一つ注意したいのは、「精神科に相談に行くこと」である。前回の寄稿でも少し触れたが、インターネット上では「パチンコ依存症は『心の病気』である」といった意見が溢れている。

これを見て「自分は病気だったのか!」と思い込み、精神科を受診しても、ほとんどの精神科医は対応できないのが現状である。また場合によっては非難される可能性もある。

「自分は『パチンコ依存症』という『病気』なんだ」と医者や家族に相談したところで、相談された方は困惑するだけだということをよく覚えておく必要がある。それであれば、まだ債務整理や自己破産を請け負っている弁護士や司法書士の方が親身に相談にのってくれる可能性が高い。借金を抱えた方はそれも一つの選択肢である。

いずれにせよ、深刻な状況に追い込まれている場合は、自分だけで抱え込まずにまずは全てを誰かに打ち明けることが重要である。もちろん、それだけで全てが解決するほど簡単な問題ではない。

パチンコ中毒から抜けるためには「どうしてもやめられない根本的な理由を知る」「やめるための心構えを完璧にする」「パチンコをやめること自体を目的にしない」など、本当に抜け出すためには様々な考え方や方法が存在する。

筆者が今現在ベストであると考えられるノウハウを一冊の本にまとめたが、もっとよい方法があれば改良を加えたいと思っている。関係各位にはぜひご協力いただければ幸いである。

パチンコ中毒者を本当に救いたいと思っているのであれば、パチンコ業界の裏側の話やパチンコ反対を唱える以上に、「今すぐ本人が行動出来る具体的な救済方法の提案」について、正面から取り組む必要がある。(寄稿・本田白寿)

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