コロナ禍、自宅で過ごす時間が増えた中で、ペットを新たに迎え入れた家庭も増えたといいます。犬や猫と比べて安価で、またかわいらしくおとなしいイメージがあるうさぎ。よく知らないままに飼い、捨てられてしまうことが少なくありません。「捨てられるうさぎを減らしたい」と、二つのうさぎ保護団体が協働で取り組むプロジェクトがあります。( JAMMIN=山本 めぐみ)

「うさぎについて、正しく知って」

1歳になったばかりの「バニラくん」。「間違った飼育をしていたことで、多頭飼育となり環境が悪化していたところから保護しました。ほかのうさぎに噛まれた傷が10か所以上あったりして治療中ですが、今ではお腹を見せて気持ちよさそうに寝るようになりました」

飼いうさぎの保護・譲渡活動を行ってきた一般社団法人リバティと一般社団法人ウィル&ルイが、うさぎの正しい飼い方や終生飼養を啓発するプロジェクト「WELFARE OF RABBIT(ウェルフェア・オブ・ラビット)。

「うさぎの保護・譲渡活動を長くにわたりやってきましたが、啓発の大切さを改めて感じ、このプロジェクトに取り組んでいます」と話すのは、一般社団法人リバティ代表の藤田敦子(ふじた・あつこ)さん(55)。「思っていたのと違った」と手放されてしまう不幸なうさぎを減らすために、うさぎの正しい飼い方や終生飼養を啓発するセミナーや勉強会、パネル展などを行っています。

「ペットとして迎え入れられたはずなのに、なぜ遺棄や飼育放棄、ネグレクトという状態になるのでしょうか」と問いかけるのは、一般社団法人ウィル&ルイ代表の熊谷彩(くまがや・あや)さん(42)。

「うさぎを飼っている方やこれから飼いたいという方に、うさぎについて正しく知ってもらうことで、うさぎとの生活を楽しく幸せに暮らしてもらいたいですし、不幸になるうさぎをなくすため、うさぎという動物について広く知ってもらいたい」と活動しています。

お話をお伺いした熊谷さん(写真左)、藤田さん(写真右)

「コロナ禍、また今年は干支が卯(うさぎ)の年でもあり、巷ではうさぎを迎える方が増え、(販売店では)子うさぎが足りていないという話も聞きました。一方で保護うさぎについては、興味を持ったり迎え入れたりする方が増えたかというと、体感としてそれはありません」と二人。

「実は12年前も同様で、卯年ブームでうさぎがペットとして多く迎え入れられましたが、少し経つと捨てられてしまううさぎが増えました。このようなことを繰り返してはならないと活動しています」

「かわいい」「おとなしそう」
イメージとのギャップ

兵庫県内のお店の駐車場に兄弟と思われる3匹で捨てられていた「カヌレくん」。「駐車場やお店の周りをうろついていました。現在は新しい家族を探しつつ、施設ではリラックスできるように配慮しています」

「うさぎの場合、かわいくておとなしそうというイメージが先行し、飼ってみたらイメージと違ったということがかなりあると感じています」と藤田さん。

「譲渡会にお越しくださった方から、『抱っこできるうさぎを飼いたい。どの子だったら抱っこできますか』と尋ねられたことがありました。飼ったことがない方からすると、小型犬のように簡単に抱っこできるように思うのかもしれませんが、うさぎは簡単に抱っこできる動物ではありません」

「『基本、抱っこはできないですよ』と伝えると、『じゃあ、やめます』と帰られる姿を見ると、まだまだうさぎのことが、正しく知られていないのだと痛感します。最近はSNS上で、リードをつけて散歩したり抱っこしたりするうさぎの投稿も目にします。それはごく一部が切り取られたものに過ぎませんが、自分もこれがしたいと飼いたい方も少なくないのかなと思います」

「『もう飼えないから引き取ってほしい』と連絡してきた方に理由を伺うと、手に追えない、お世話する人がいないといった無責任な理由が少なくありません」と熊谷さん。

「たとえば最近あったケースでは、『子どもが飼いたいと言うので、お世話をちゃんとするという約束で迎え入れたけれど、お世話をしないので引き取ってほしい』というものがありました。しかしそれは、子どもの責任なのでしょうか。命を引き受ける以上、飼う際に十分な情報を得て、十分な想像をしなかった、保護者にも責任はあるのではないでしょうか」

熊谷さんが代表を務めるウィルアンドルイの保護施設での様子。「施設のうさぎたちの爪切りは約2ヶ月に一度、私が行います。うさぎにできるだけ負担がかからないように、その子に合わせたスタイルで行うよう心がけています」

「うさぎは小さな生き物ではあるかもしれませんが、だからといって命を雑に扱っていいということではありません。飼うとなれば、日々のお世話はもちろん、そのためのスペース、時間、お金も必要です」

「うさぎがどんな生き物で、飼うにあたってどんな覚悟が必要か、どんな生活が待っているのかということを、あらかじめしっかり知る必要があるし、私たちはそこをきちんとお伝えしたいと思っています」

「私たちがすぐにでもうさぎを引き取った方が話は早いかもしれないし、その方が幸せになるうさぎもいるかもしれません。もちろんうさぎの置かれている状況に応じてではありますが、自分の意思で迎え入れたのであれば、できる範囲で行動に移していただきたいし、そのためのアドバイスやサポートをしっかりしたいとも思っています」

犬や猫と比べて安価で、手軽に飼えてしまう

2022年に開催されたセミナーの様子。獣医師の講師を招き、高齢うさぎの飼育、病気や介護について学んだ

「犬猫に関しては、販売価格が上がっているように感じますが、うさぎの価格は変わっていません」と二人。

「血統書つきのうさぎが5〜10万円ほどで売られていることもありますが、子うさぎでも2万円前後や数千円のうさぎもいます。やはり犬や猫と比べて、手軽に購入できてしまうということがあります」

「私たちは里親募集をしているので、こう言うのはおかしな話なのですが、『うさぎの飼育は大変ですよ。飼うのはよく考えて』と思います。ただ、飼うと決めた以上は、ちゃんと最後まで、責任を持って飼うということを心がけて、守ってほしい」

「ペットを飼うということ自体が、ある意味人間のエゴかもしれません」と熊谷さん。

「うさぎに限らず、私たち人間側が命を好きに迎えるわけですから、お迎えした動物に対して学び、人とは違うことを認め、環境を整えてその子の人生を幸せにする、責任と義務があるのではないかなと私は思います」

声を出せないうさぎ。
問題が表面化しづらいという課題も

2017年8月、熊谷さんが初めて自分の手で捕獲した16匹のうさぎたち。「痩せ細り、傷がないうさぎは1匹もいないほど酷く、とてもショックを受けました。この出来事が、遺棄されたうさぎ、そして保護されたうさぎについて考えるきっかけの一つになりました」
 

「暴力という積極的な行動ではなくても、適正なエサや水を与えない、トイレ掃除をしないなどといったいわゆるネグレクトや、ケージから出さず閉じ込めたまま、雨風にさらされるような屋外での飼育など、グレーな状況が多々あるのではと感じている」と二人。

うさぎは基本的に受け身の動物であるため、虐待やネグレクトが表に出づらい状況があると指摘します。

「声を出して鳴くということができず、犬のように大きな声で吠えることができません。恐怖を感じてもその場に固まってしまったり、最悪ショック死することもあります。虐待や放置してそのまま死なせてしまうということが、実はあります」

学校の飼育現場。「床の汚れもそのままで、簡単に水を替えて、エサはお皿を洗わずに残ったラビットフードの上に足しているだけです。野菜は給食のにんじんの皮を数日おきにもらうので、夏場は腐っていることもありました。うさぎの主食である牧草はありません」

「過去に保護したうさぎの中には、すべての肋骨が数カ所ずつ折れていたり、目に何か刺されたような痕があるうさぎもいました。『うさぎにどうしても暴力を振ってしまう。このままでは危ないから引き取ってほしい』という連絡がきたこともありました」

「うさぎ独特の課題という点では、学校飼育の問題も避けて通れません」と藤田さん。

「多くの教育機関では、1年365日、暑い夏も寒い冬も、屋外の小屋で劣悪な環境で飼われていたり、病気になっても治療されないまま放置されるうさぎが少なくありません。まだまだ家畜のイメージが強いし、学校で飼育しているのというのがまたやっかいで、それを見て育った子どもたちは、それがうさぎの生態であり正しい飼い方なのだと、無意識に思ってしまうでしょう」

「うさぎを飼うにあたり、知っていてほしいこと」

うさぎをケージの外に出す際、うさぎが遊ぶスペースには絨毯などを敷いて走りやすいよう対策が必要。「爪がひっかからない素材を選び、足裏を保護するためにも施設の遊び場ではマットを敷いています」

これからうさぎを迎えたいと思っている方、あるいはうさぎを飼っている方に向けて、メッセージをいただきました。

「ケージはあくまでもうさぎが寝たり食べたりする部屋。外に出て運動したり遊んだり、飼い主さんとコミュニケーションをとったりということが必要です。ケージの外に出してコミュニケーションをとることで、うさぎさんの不調や病気が見つかることもあります。毎日ケージから出して、室内で遊ぶ時間を作ってあげてくださいね」

「室内で遊ばせる際、うさぎの手足には肉球がないので、絨毯などを敷いたりして、滑らないよう環境を整えてあげることが必要です。また、部屋の柱やコードを噛みちぎって感電する危険性があるので、噛まれたくないものや危険なものは、事前にカバーして対策が必要です」

ウィルアンドルイの施設にて。「施設のうさぎも毎日ケージから出て運動する時間を作ります。5匹同時にケージから出して、それぞれにサークルで遊びます。1人〜2人で毎日お世話をしています」

「温度管理も大切で、24時間365日、留守の間も季節によって、また地域によってはエアコンが必要で、光熱費もかかってきます。もうひとつ、私たちが譲渡にあたって一番時間をとってお話をしているのは、体調管理や病院についてです」

「うさぎは常に消化器官が動いている生き物で、消化器官の動きが滞ると、胃腸のみならず他の臓器の機能が低下し、最悪の場合は死に至ります。それはすなわち、目に見えてわかる不調があった時、時間を置かずすぐに病院に連れて行かなければならないということ。症状として見える頃には、だいぶ症状が進行していることが多いです」

「それができるかということと、うさぎを専門的に診られる動物病院さんも限られているので、そこまで行くことができるのかという点は、必ず確認させていただいています」

「うさぎは平均して10年ほど生きますが、最近は長生きするうさぎさんも増えてきました。かわいくてふわふわで、いつも元気に走り回っているようなイメージが強いかもしれませんが、いつかは寝たきりになり、介護が必要になることもあるかもしれません。そのことも頭の片隅に置いて、お世話の喜びを感じていただけたらいいなと思います」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、6/26〜7/2の1週間限定でWELFARE OF RABBITとコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円がWELFARE OF RABBITへとチャリティーされ、各地で勉強会やセミナー、パネル展を各地で開催するための資金として活用されます。

1週間限定販売のコラボデザインアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもバッグやキッズTシャツなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインは、うさぎをカレッジ風のデザインに落とし込みました。中央にシンボルとしてうさぎを描き、うさぎの福祉向上を目指して活動する人や応援する人たちが、意思を表明する目印としてほしいという思いを込めました。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

・「うさぎも人も、共に幸せになるために」。うさぎに関する正しい知識を〜WELFARE OF RABBIT

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は8,000万円を突破しました。

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