医療的ケアが必要な子ども、重い病気や障害がある子どもとその家族に、「命に向き合い、強い緊張感を持つ日常生活の中で、少しだけはねを伸ばしてほしい」とレスパイト(ひとやすみ)を届けるNPOがあります。「今も昔もこれからも、人は、人の中で生きていく。すべては人と人、それが原点」。活動への思いを聞きました。 (JAMMIN=山本めぐみ)
「つながりによって、家族を元気にするお手伝いがしたい」
「親子はねやすめ」は、医療的ケアが必要な子ども、重い病気や障害のある子どもとそのきょうだい児、家族を支援する認定NPO法人です。
代表の宮地浩太(みやち・こうた)さん(58)は、東京・神田で洋紙や紙製品を扱う会社を経営しながら、親子はねやすめを立ち上げ、重い病気や障害のある子どもたちとその家族のレスパイト(ひとやすみ)を支援してきました。
コロナ前は、医療ボランティアさんたちとともに家族を外に連れ出し、リフレッシュしてもらう旅行やイベントの開催がメインの活動でしたが、コロナ禍でオンラインに切り替えて活動を続けてきました。
「重い病気や障害のあるお子さん、医療的ケア児のいるご家庭の場合、その家族は24時間体制に近いかたちで介護を続けています。1ヶ月とか2ヶ月と限られた期間の話ではなく、それが何年もずっと続くわけです」
「医療の進歩に伴い、救われる命が増えている中で、医療者は医療の面から、福祉関係者は福祉の面から、専門家として生業として、お子さんやご家族の健康や生活をサポートする。それはなくてはならない必要不可欠なものですが、とはいえ実態の中で、医療や福祉だけではカバーしきれない、ご家族の疲弊や孤立が存在しています」
「僕たちは、医療や福祉のプロではありません。皆それぞれ生業を持ちながら、ボランティアとしてこの活動に携わっていますが、僕たちが関わることで、負担が軽減できないか。福祉や医療以前に、あるいはそれ以外に、『人と人』としての関わりがあると良いのではないか、そのつながりによってご家族を元気にするお手伝いができるのではないかというのが、僕たちの思いです」
コロナ禍、オンラインで家族とつながり続ける
「外出することでリラックスしてはねを休めてもらいたい、いろんな人に出会ってもらいたい」と活動を続けてきた中で、「新型コロナウイルスの流行でそのかたちがとれなくなった時、自分たちとして何ができるのか、とても悩みました」と振り返る宮地さん。
「訪れる各地の方たちに受け入れていただいての活動でもあったので、東京から行くに行けないし、ご家族を呼ぶに呼べない。でもそんな中でも、孤立や疲弊しやすい環境にある家族、息抜きが必要な家族はいるわけです」
「『人と人』という僕たちが大切にしたい原点に立ち戻り、『オンラインがあるじゃないか』とアプローチを切り替えました。時代に助けられたなと思います」
活動を通じて交流のあった桝形徹(ますかた・とおる)さんに相談し、子どもたちに人気の遊び歌ユニット「あきらちゃん&ジャンプくん」のオンラインコンサートを定期的に開催してきました。
「孤立や疲弊しやすいご家族が、さらに外出を制限され、きょうだい児もマスクをつけて、どうしようもない環境に置かれている。せめて自宅で、ただ一方的にテレビを見るのではなく、コミュニケーションをはかりながら、つながりを感じられる場をつくってはどうかと」
「不慣れな中でオンラインをスタートし、よちよち歩きで続けてきました。お会いした家族、まだ出会っていない家族…さまざまですが、定期的なイベントがあれば、外出はしなくてもコミュニケーションがはかれます。どんな状況下であってもつながり続けること、それは僕たちにとっても大切なことだったと思います」
「残された時間で、思い出をつくりたい」家族の声に、応え続けた
コロナの間、「それでも、レスパイトの依頼を打診されることがありました」と宮地さん。
「余命が少ない子のために思い出をつくってあげたい、一緒に過ごしたいといったご家族です。限られた命と向き合って過ごすご家族にとっては、もうコロナどころではないんです。一刻を争いながら、とはいえ家族だけではどうすることもできないという声を聞き、自分たちができることを模索しながら動いていました」
「ある5歳の男の子のご家族には、『もしよければ、ご自宅で演奏会をやりませんか』とご提案して、医療チームのメンバーとクラリネットの演奏家、親子はねやすめのスタッフ、最小人数でご自宅を訪れ、ご家族を交えた10人ぐらいの小さなコンサートを開催しました」
「彼は目を閉じていましたが、『耳ではちゃんと聴こえている』とお母さんは喜んでくれました。さらによかったのは、お父さんがミニコンサートを録画して、コロナのためにリアルで会えないおじいちゃんおばあちゃん、お友達や近所の方に配信してくださったんです」
「開催にあたって、コロナ感染のリスクやプレッシャーはありましたが、直接会いたくても会えない、励ましたくても励ますことができない…そんな状況の中、コンサート会場にいる男の子の姿を見ながら、皆が心を一つにして『一緒にいる』と感じられる空間を作ることができたのは、とてもよかったことでした」
「このようなご家族は、おそらく全国にたくさんいらっしゃると思うんです。全国各地で、『自分たちも』と支援の輪が広がっていくといいなと思いますし、親子はねやすめの活動が、何かそのきっかけになってくれたらと思っています」
「僕らは皆、『人と人』の中で生きている」
宮地さんの活動へのモチベーションを尋ねました。
「僕の中にあるのは、『人と人』。常にそこしかありません。僕たちは皆、『人と人』の中で生きています。僕は昭和39(1964)年の生まれなのですが、当時はまだ一人に一つの部屋なんてありえない、家族が川の字になって寝るような環境で育ちました」
「今、核家族化が進み、いつしか近所付き合いも減り、人の関係は疎遠で希薄になりました。社会全体が、まるで人が人の中にいないような錯覚に陥っていると感じます。世の中のニュースは悲しく寂しいものが多く、やはり『人と人』という感覚が冷めていると感じます」
「『人と人』の中にあるという感覚を、僕らは失ってはならない。『人と人』の中にいると感じられることで、あたたかい気持ちになれること、生きる勇気が湧いてくることは、きっとたくさんあると思うんです」
「静かに一人でいる時間も、皆でわいわい過ごす時間も、人の中にいることには変わりはありません。人は人の中にあるからこそ、時にはねをやすめ、喜びや楽しさ、生きる力を得ることができる。つながっているという安心感やあたたかさを、誰もが感じられる社会であってほしいと願っています」
団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は2/27〜3/5の1週間限定で「親子はねやすめ」とコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。
JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、重い病気や障害のある子どもとその家族を対象に開催するコンサートやライブのための資金として活用されます。
JAMMINがデザインしたコラボデザインには、ピアノを弾くフクロウ親子を描きました。楽しい音の周りに人が集まり憩う様子は、「親子はねやすめ」の活動そのものを表現しています。
JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!
・「今も昔もこれからも、人は、人の中で生きていく」。重い病気や障害のある子どもたちとその家族の「ひとやすみ」を支援〜NPO法人親子はねやすめ
「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は8,000万円を突破しました。