日本ではあまり耳馴染みのない「チベット難民」の子どもたちに教育支援を行なっている特定非営利活動法人レインボーチルドレン(Rainbow Children Japan)。国境を越えることができず、金銭的にも進学を諦めざるを得ない状況の「チベット難民」の現状について理事長の石川辰雄さんに話を聞いた。(聞き手・Readyfor支局=吉田 梨乃)
※石川さんはクラウドファンディングサービス・Readyforによる国際協力活動応援プログラム「Readyfor VOYAGE」でクラウドファンディングに挑戦中です!国境を越えることのできないチベット学生と日本学生の交流を実現し、異文化を知った有能な学生を一人でも多く世界へ輩出していく学生会議の実現のため 145万円の寄付の呼びかけを行っています。寄付の受付は12月14日金曜日23時まで!<詳しくはこちらから>
――この活動をはじめることになったきっかけを教えてください。
石川:今までの人生の偶然が重なって全てが始まりました。もともと私は長崎出身で、被爆地として平和教育を受けてきました。また、子供がいない私はその時間・お金・愛を夫婦旅行に当てていました。
そして世界中を旅する中で、自分の人生は子供がいない代わりに、”より多くの子供達に愛を捧げることができる”という考え方に変わったんですよね。価値観を変え、何百人何千人の子供達と関わっていこうと決意をしました。
まず初めは、支援が行き届いていないイメージの強かったインドの教育を自分の目で見てみたいと思い現地に赴きました。インドでは学校建設プロジェクトも行ったのですが、知人からの強い勧めを受けたこともあり、次にチベットに向かいました。
チベット政府は意外にも教育に力を入れていて、高校生までは無料で教育を受けられる制度があります。しかし、政府からの支援はそこまで。どんなに優秀な子でも奨学金を得るしか大学に行けない現状があります。
その現実を知り、学校建設ではなく、大学に行きたくてもいけない子供達・また亡命政府の支援も行き届いていないところに奨学金の支援をしようと思い、翌年NPO法人「レインボーチルドレン」を立ち上げました。
――具体的にはどのようなサポートをしているのですか?
石川:チベット難民の子供たちは、進学以外は働くしか道がなくインドの社会の中では過酷な環境に置かれてしまいます。レインボーチルドレンで学習の機会を得た彼らは本当に勉強熱心です。小学生でさえ私の学生時代とは比べ物にならないほど。チャンスを与えられたら目の前のことにしっかりとしがみつく彼らの精神を持っています。彼らのやる気から私自身多くのことを学ばされます。
――彼らは何をモチベーションに勉強しているのでしょうか?
石川:実は、チベット難民社会の子供達は親と離れて寄宿制の学校で勉強するんですよね。まずは勉強しないといけないという教育熱心な文化が社会に根付いています。基本的に季節ごとにしか家に帰れないというのが当たり前で、遊ぶ環境もない中で勉強しています。彼らの中では卒業するまで勉強し、親も子供に対して勉強することでチャンスを掴んでほしいという思いが強いのだと思います。
勉強をしないと生き残れないというのが日本とは根本的に違うように思いますね。チベットは”国”ではないので”国家の代表”にはなれない。チベット難民はスポーツの道でも生きていけないんです。チベットの伝統を受け継いでアーティストの道に進む人も、中にはいるのですが99%は普通に学校で勉強しています。
――チベット学生が日本人学生と会議を開くことの意義を教えてください。
石川:今のチベットの学生のほとんどはインドの外に出られません。国境を越えようと思うと、難民としての登録証、パスポート、行こうとする国のビザの認定の3つのハードルが立ちはだかります。高額なお金がかかる上に、どれも困難です。少しずつ、日本で留学という形でも受け入れられ始めてはいますが、外に出たことのないチベット人学生がほとんど。
だからこそ、閉ざされた檻の中にいる状況の学生たちが国際交流の機会を得て世界をしる切っ掛けになると思っています。そのための目標として、オリンピックが開催される2020年にアジア学生会議という大きなイベントを日本で開催したいと思っています。日本でアジアの学生が集まる会議として国籍のない彼らをチベットの代表として招待し、違いを乗り越えた、学生同士の国際交流の場を作りたいです。
――最後に、クラウドファンディングへの意気込みをお願いします。
石川:この学生会議はマハトマ・ガンジーの「Be the change you want to see in the world.」の言葉から引用して、「Be the change Project(君が変化の主役になれ)」という名前にしたのですが、世の中を他人事にするのではなく、みんなが主役になって世界を変える中心になってほしいという私自身の強い願いから来ています。
日本人・チベット人学生だけではなく若い世代が行動の変化を起こす主役となり、一人一人が平和的なリーダーとなってほしいと思ってます。もともと団体を立ち上げた時も「教育は世界を変える」というキャッチフレーズで始めたのですが、私自身が長崎で育ち平和教育からその思想を持つようになったように、教育は人を作っていくと信じています。
今の世界をよりよく変えていくために教育を通してどのような「人」を生み出すのかをライフワークとしています。レインボーチルドレンから100名の奨学金授与者を生み出すことができたら、日本人の学生やアジアの学生と融合させて、高等教育のあとに世界を変えるリーダーを作っていくネクストゴールを考えています。その最初のスタートとして、このクラウドファンディングを必ず成功させたいです。あなたの一支援が一変化になります。行動する変化の主体とあなたもなってください!