■SDGsから考えるこれからのエネルギーの話(1)

2021年、国内では「SDGs」についての認知が急速に進み、「サステナブル」という考え方がある意味とても身近になったといえます。その一方、「SDGsにはどんな目標があるの?」「暮らしにどう関わってくるの?」といった具体的な受け止め方においては、まだまだこれからといったところかもしれません。

SDGsの中でも複数の国際目標と関わってくる「環境・エネルギー・脱炭素」の分野で15年近く新規事業や事業開発を手がけてきた秋田智一さんに、日本の環境対応の「今」と「これから」について尋ねる6回シリーズです。 (聞き手・松田ひろみ)

答える人:秋田智一 
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ代表取締役社長 2009年環境経営戦略総研(現アイ・グリッド・ソリューションズ)入社。主に事業開発責任者として太陽光発電事業、電力供給事業を推進。2017年には分散型電源の推進を目的として株式会社VPP Japanを設立し代表取締役に就任。

国内でも認知の高まったSDGs

―― この1、2年でSDGsという言葉の認知度が急速に上がったように感じます。秋田さんからご覧になっていかがでしょうか?

秋田:おっしゃる通りで、ビジネスにおいても、生活の中でもそう感じますね。SDGsというワードは今や一般の方にも広く浸透しています。

SDGsは2015年に国連サミットで採択された国際目標です。わたしなどはエネルギー業界にいますから、早くから社内外でもSDGsについて見聞きすることは多かったのですが、多くの方の話題に上るようになったのはやはり2020年頃からではないでしょうか。政府の広報の効果が出てきたという側面もあるでしょうし、SDGsに絡めたキャンペーンや広告を打っている企業も多いですよね。メディアでもよく取り上げられるようになりましたよね。

―― SDGsは身近になった一方で、「なんとなくよいもの」「大事なこと」というどこかふわっとした受け止め方にとどまっている部分が自分の中ではあって、もう少し踏み込んで勉強したいと思っています。

秋田:ひとつ断っておきますと、わたしはSDGsの専門家では全くありません(笑)。ただ、SDGsとも深く関わってくるエネルギー業界で長年仕事をしていますから、その点ではお話ができるかもしれませんね。

ご存知の通り、SDGsというのは持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略語です。全部で17のゴール、169のターゲットからできている国際目標なんですね。そしてSDGsのゴールの中には「7:エネルギー」と「13:気候変動」という項目があり、この2つは他のさまざまなゴールとも密接に結びついています。

SDGsのそれぞれのゴールは互いに結びついている

―― 7番目の「エネルギー」と13番目の「気候変動」はSDGsの他のゴールとも結びついている、というのはどういうことですか?

秋田:例えば7番は「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。これがゴールとして掲げられているということは、裏を返せば現時点では、世界には必要なエネルギーを十分に手に入れられない地域があったり、そういう人々がいるということです。この問題を解決することは必然的に1番の「貧困」や10番の「不平等」とも結びつきますよね。また、エネルギーというのは9番の社会の「インフラ」そのものだともいえます。

13番の「気候変動」もそうです。地球の気温上昇によって今後、農業生産が落ち込むことが予測されていたり、実際に魚の生息域が変わってきたりしていますから、これは2番の「飢餓」や14番の「海洋資源」とも結びついてきます。

また、温室効果ガスの累積によって気温が上昇し、暑さで住めなくなる、また海面が上昇して国土が減ってしまう国が出てくることなどは11番の「持続可能な都市」という課題ともつながりますよね。

―― なるほど、いわれてみると確かにそうですね。

秋田:ですから、SDGsは17のゴールに分解できますが、それぞれがバラバラなのではなく互いに深く関わり合っているんですよね。それらの多くを有機的に結びつけるものとして7番の「エネルギー」そして13番の「気候変動」があるように思います。

もちろん、4番の「教育」や5番の「ジェンダー」などレイヤーの全く違う重要な課題も入っているのですが、「エネルギー」と「気候変動」について知っていくことで、SDGsの他の多くのゴールについても考えが深まっていくといえるのではないでしょうか。また、SDGsが策定されるずっと以前から気候変動については国連で問題とされてきた、ということも付け加えておきたいと思います。

SDGsは2000年、気候変動は1992年から続く取り組み

―― SDGsも気候変動も、どちらも急に最近になっていわれるようになったものではないということですね。

秋田:その通りです。SDGsにはその前身となったミレニアム開発目標(MDGs)というものがあり、こちらは2000年に策定されています。

気候変動についての国際的な取り決めは、それよりも以前、1992年に採択された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が始まりといえるかもしれません。1997年の京都議定書や2015年のパリ協定などは名前をご存知の方も多いのではないでしょうか。

―― ありがとうございます。では、次回はもう少し具体的に、エネルギーと気候変動について、SDGsの各ゴールとの結びつきにもふれながら教えて下さい。