【連載】コロナ後の持続可能性、気候変動と再エネへ⑤

新型コロナウイルスが起きた背景を、再生可能エネルギーを軸に考察していく連載企画第5弾。今回は、5月下旬にみんな電力が実施したESGとコロナ収束後のサステナブル経営をテーマにしたオンラインイベントの模様を紹介する。登壇した三菱UFJリサーチ&コンサルティングのプリンシパル・サステナビリティ・ストラテジストの吉高まりさんは、「経営者層全体がESG経営への意識を持たないといけない。サプライヤーも含めた『サーキュラーエコノミー』が必須」と強調した。(寄稿・平井 有太=ENECT編集長)

オンラインのトークイベント

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未だ予断を許さないコロナ禍の下、みんな電力は5月23日、2度目となるトーク配信企画「コロナと戦う経営者 〜ESG投資の専門家が語るアフターコロナのサステナブル経営」を実施した。

参加者は、大きな打撃を受けた外食産業から骨太なSDGs、ESG経営で知られるゼットンの鈴木伸典代表取締役と、日本とマレーシアで飲食店を経営、コンサルでもあるスタートアップスクエアの恵島良太郎代表取締役。投資サイドからは政府委員も務められ、ESG投資に精通する三菱UFJリサーチ&コンサルティングのプリンシパル・サステナビリティ・ストラテジストの吉高まりさんをお招きし、ファシリテイターをみんな電力・三宅成也事業本部長が務めた。

対話は、鈴木代表の「このコロナ禍をどう切り抜けて行くか」ということと同時に、すでに「『どうESG銘柄になっていくか』というプレゼンを各企業に始めている」とのお話に、吉高さんからの返答は「コロナ禍の先行きが不透明な世界でも、短期的利益を追い求めるのではなく、長期目線で経済を見るESG投資の傾向は、実はすでに投資手法の中で事実上一つの基準になりつつあります」と、噛み合いながら進行。

恵島さんから、さらに一歩踏み込んだ「ESG経営というものは無形資産で、そこが評価されるからこそESG投資が受けられるのではないか?」という提議にも、吉高さんは「今は業界を超え、他者と繋がることで生き残りや成長を考えなければならない時。特にコロナ禍以降、それがもっと必要。そもそも投資家は、その企業一社だけを見て評価せず、サプライチェーンまで見ようとしている。欧州では今や再エネへの投資は当たり前で、投資対象の課題は『サーキュラーエコノミー=循環経営』となっている。そんな今だからこそ、投資家との長い付き合いを通じてファンづくりをしていくことは、大変重要」とのお答え。

そこも、今後のキーポイントを「フードシステム」と打ち出し、実際にサステナブル・シーフードの採用を始め、かねがね「仕入れの移動距離をいかに短くするか」、「国内で仕入れを成立させられたら、それは一つ大きなサステナビリティの取り組みになる」と語られてきた鈴木代表ときれいに合致する部分だった。

特にサステナブル戦略経営のためCSOを任命したゼットン、分散型電源で地域の自立や生き残りをいち早く支えてきたみんな電力は、取り組みそのもので本気度を社員や社会に示してきた。また、ESG投資家に対してもわかりやすいコンテンツを提供し、良質なコミュニケーションをとってきたことで大きな調達も実現させてきた。

ご存知の通り、2025年の大阪万博の招致プレゼンにも「SDGs達成への貢献」が掲げられていた。東京オリンピック招致時はSDGsの採択前だったが、今東京オリンピックの調達は「持続可能性に配慮した調達コード」を採用している。つまり、万博に向けて何らかのビジネスに関わろうとする頃には「SDGsウォッシュ」ではない、本業でいかに本気のSDGsをやっているかどうかがカギになっていく。

最後にESG投資の未来について、恵島さんは「コロナ前から続いているのがお金余りの状況。ということは、どこかで別のリセッションがくる。つまり、そのリセッション前にコロナが来たので、そこは経営者としてウォッチしないと」と警鐘を鳴らし、吉高さんには、「企業はESGを経営のど真ん中に入れていかないと、投資家から、いつまでも期ごとの収益や業績だけで評価されることになる。経営者層全体がESG経営への意識を持たないといけないし、そこでこそサプライヤーも含め、すべてが繋がった『サーキュラーエコノミー』が必須。それはつまり、企業経営は『自然循環の中でどう持続可能なのか』ということが重要で、ESG投資家もそこに関心を持っているのだから」という指摘をいただいた。

この続きはこちら⇒【初回】コロナと戦う経営者|アフターコロナのサステナブル経営

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