【連載】コロナ後の持続可能性、気候変動と再エネへ⑥

新型コロナウイルスが起きた背景を、再生可能エネルギーを軸に考察していく連載企画第6弾。今回のテーマは、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」。第一人者である中石和良・一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン代表理事は、コロナ後の社会で持続可能性を追求していくには「サーキュラーエコノミーへの移行以外に方法はない」と言い切る。(寄稿・平井 有太=ENECT編集長)

サーキュラーエコノミーの第一人者である中石和良氏

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6月11日、日本ーEU戦略パートナーシップ協力実施支援ファシリティにおいて、「グリーンリカバリーの推進」という趣旨のセミナーがあった。コロナ以降の経済復興において小泉環境大臣が提示した3つの「移行」は「脱炭素社会への移行」、「分散社会への移行」、そして「サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行」だった。

昨今、巨額投資家や大手銀行の担当役員から、コロナパンデミック以降のESG経済の動きについて伺っていても出てくる、「サーキュラーエコノミー」というキーワード。その第一人者である中石和良氏は「それこそが今、世界が目指すべきゴールとしての2030年アジェンダ(SDGs)、パリ協定を達成、気候危機を解決する方法論。サーキュラーエコノミーへの移行以外に、他のオルタナティブはないんです」と語る。

それには2つ、重要な論点がある。

まず1つは、世界において先進国は成長が鈍化するにしても、途上国や新興国は今後も成長していくということ。そこで、「幸福のための経済成長を実現しながら、どう地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)を超えないようできるのか?」という姿勢が必須な時、「デカップリング(切り離し)」という考え方がある。

それはつまり、人々のウェル・ビーイング向上や経済成長と、資源使用や環境影響との「切り離し」。サーキュラーエコノミーとはそれを可能にする経済・産業システムであり、中石氏は「もともとは、いわゆる『資源効率』からスタートし、進化した。その中で社会性の問題、経済の繁栄、そして『持続可能な社会経済全体を生み出す仕組み』となっていった」と続ける。今やずいぶんメジャーな言葉となった「SDGs」や「パリ協定」だって、その賜物なのだ。

もう1つ、サーキューラーエコノミーを先進的に進めているEU経済は、グローバル社会を基軸に見れば停滞、衰退している。彼らが、アメリカにおけるGAFAMに代表される情報産業プラットフォーム、中国を中心とするアジアでの工業や工場、BATH(アリババやバイドゥetc.)といった新たなデジタル産業の隆盛を受け、ひねり出したことこそが、「サステナビリティ=持続可能性(倫理)」と「法・規制」。

そこにはEUとして、「この方向でアドバンテージをとる」選択肢を突き詰め、アメリカ、中国の2強に対抗できる競争力をつけるべく、「新たな経済成長を生み出す糧に」という戦略を描いてきた背景がある。

彼らは、「そもそも自分たちが持っている文化をどう活用するか」ということを考え抜き、自然環境を再生し、社会を護りながら経済成長させ、かつ、国際的な競争力をつける実践を重ねてきた。しかも30年間という長期スパンで、実際にそのビジョンの実現に向けて着々とロードマップを進めている。

今、再エネ、プラスチック、ファッション産業、都市、食品システムといった流れでトレンドがつくられている。その中で、東京都が昨年末に公開した「ゼロエミッション東京戦略」には希望がある。その、2050年に都が「CO2、GHG=温室効果ガスの排出を実質0にする」という構想に対しては、様々なセクターでのロードマップが明示されている。

中石氏は、「大事なのは、長期の明確なビジョン。官民が同じ方向に向かえるようなリーダーシップが必要」と語り、「問題は、格差をなくし、公正に働ける環境をつくり、成長もしながら資源を使うことをいかに切り離し、いかに環境負荷をかけない活動(もはや、環境を再生する活動)を続けていけるのか。すべてはそこに帰結していきます」と続けた。

この続きはこちら⇒【初回】サーキュラーエコノミー|第一人者・中石和良さんに聞く