の続き


Q.これからの企業の経済競争はどのようになっていくと考えますか?

松本:今までは消費者が企業によって「良い商品」というラベルを貼られた物を買う傾向にありました。そして、気づくと消費者が企業の経済競争に巻き込まれていました。
しかし、3月11日で確実に消費者の価値感が変わりました。高機能、高性能を追い求めて企業が開発した商品だけではなく、昔からある原始的なものでも十分役割を果たせることが実証されたのです。
よって、これからはその価値感の変化に企業が対応していかないといけません。今までは消費者目線を分かっているふりをしているだけで、実は分かっていなかったということがこの震災で浮き彫りになってきました。

昔からある原始的なもの。例えば、今夏ブレイクした緑のカーテン。ゴーヤの効果で日差しをさえぎり、さらにはゴーヤ料理を楽しむことができる。お金を払って快適性を追い求めたり、スイッチの切り替えで節電をするような味気ない生活とは違い、自然を活かした環境の中で生活に彩りを求める動きがはじまってきている












Q.この震災がキッカケで社会が変わっていくと思いますが、売り上げ重視だった資本主義の次に表れてくる時代はどのようなものでしょうか?

松本:資本主義を私たちが生きているうちにガラっと変えることは難しいかもしれませんが、このままの競争を繰り返していけば、地球が滅びてしまうと思います。この競争は必ずどこかでひずみが生まれてしまいます。
例えば、途上国の問題も先進国の経済競争が原因で起きていることがあります。このように社会的に弱者の立場にいる者が競争に巻きこまれて不幸になってしまっているのが現状です。
だからこそ、自分の利益が第一という考えだけではこれから先の時代で生き残っていくことはできないでしょう。消費者もそれに気づいています。

先進国が原因で途上国の爆発的人口増加が起きている。先進国ではわりと人口は安定しているが、途上国では人口は増え続けている。先進国の人口が安定しているのは自給自足が可能な社会だからである。食料の生産・供給以上に人口が増えることはない。
しかし、先進国の植民地だったか、現在先進国に資源や換金作物(コーヒーや紅茶など)を輸出している途上国では貨幣が入ってきて一時的に食料の供給量だけが異常に増えて、それが人口増加につながるのである。先進国の経済成長の裏には途上国の悲しみが隠されている


Q.これからは絶対的な価値感というものがなくなり多様な価値感が認められる社会になってくると思いますがどう考えますか?

松本:そのような社会になっていくと思います。しかし、懸念点としてどのような価値感も認められることになると、統治することが難しくなってきます。今よりもさらにお互いを認め合ったうえで話し合うことが重要になります。
しかし、その話し合いをせずに資本力だけで統治するようになってしまわないかと危惧しています。特にそれは東北地方の再生された姿を見れば、ある程度判断できると思います。再生されたが、資本力のある企業だけでその土地を支配していてはいけません。その土地に昔からあり地域に根ざしている中小企業が復興の旗を振っていないと、また今までと同じ企業の経済競争を繰り返してしまうだけです。

阪神淡路大震災が起きた当時、被災した地域を再生させようと国が選んだ手段は、復旧よりも復興であった。被災者の生活再建(復旧)は各地方自治体に任せることにして、政府はインフラや建造物(復興)などのハード面だけを担うことにして終始会議をリードした。
被災者の意向を度外視したその政策は最悪の結果となった。それは神戸空港建設と新長田地区再開発事業の現状で明らかにされている。かつて神戸市長が「希望の星」と言った神戸空港は膨大な赤字を垂れ流し続け、廃港の危機に面している。
また超高層ビル40棟が連立する新長田地区再開発事業も今ではほとんどシャッター通りと化している。その愚かな政策によって入居した住民たちは生き地獄を味わうこととなってしまった


Q.松本社長の窓にかける思いを教えてください。

松本:一言で言うと人間には語りつくせない可能性を秘めたものだと思います。窓に代替品はないですし。もし、窓がこの世の中から無くなってしまったとき大問題が起きます。そのように人間にとって重要な役割を果たしていることに気づくと、もっと窓の可能性を感じることができます。今では、その窓が安いか高いかだけで判断して、その窓の持つ機能やユニーク性に関心すら抱いていません。窓は素材ですから、まだまだどんな形にでもすることができるのです。そう考えると窓の無限の可能性に期待が溢れます。

窓が原因で死亡する人は年間に3万人いる。そのほとんどが高齢者である。部屋から部屋へ移動した際に気温の急激な変化によって心臓に付加を与えられるからである。MATEXの提供する窓は断熱性に優れていて、夏は冷房による涼しさを逃さない、冬は暖房による暖かさを逃さない。このようにして冷暖房の省エネを促進して、高齢者の突然死などの健康問題にもアプローチしている












Q.これから就職活動に向う若者に対してのメッセージを下さい。

松本:表面的なことに惑わされないでほしい。本質的なことを知るにはやってみないとわからないことだと思うので難しいと思いますが、できるだけ学生時代から何をすれば自分の人生が充実するのかを考えながら過ごしてほしいと思います。

現在の若者の就職率は過去最低を記録している。世は超就職氷河期である。今の学生が就職活動をするにあたって取り組んでいることで多いのは、新聞・ニュース番組に触れるようになった、資格を取るために学校に通った、選考試験対策をした、などである。表面的なことに捉われずに自分が決断したことになぜと問い続け、納得がいくまで自分自身と対話してほしい


編集後記

さて、今回は「働くとは」というテーマのもとでお話しを伺った。今までは働くことに求めるもので最も割合を占めていることは、給与であった。やはり、このことの原因として、経済成長重視の背景があったとされる。

しかし、そのことによって、格差が生じたり核家族化が増え、孤独死、鬱病が流布してしまった。

それでも、3月11日がキッカケでその傾向に歯止めがかかりそうである。震災後に行った意識調査では働くことに求めるものの上位には、給与ではなくて、大切な人と過ごす時間を取れることがあがってきた。お金を得るためにバリバリと休みを返上して働くことよりも、大切な家族や友人と過ごす時間を取りながら働くことを求めるようになってきた。

3月11日を契機にあなた自身の価値感を見直してみませんか?
あなたにとって働くとは何ですか?

マテックス株式会社

(オルタナS 特派員 池田真隆)