「Living With Flowers Everyday」をコンセプトに、花や緑に囲まれた心ゆたかなライフスタイルを提案する「青山フラワーマーケット」。駅を降りたらすぐに、パリのマルシェをイメージした店舗が全国で70店以上。今回は「青山フラワーマーケット」代表、井上英明社長にお話しを伺った。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆)
早稲田大学を卒業後、1年弱アメリカに渡りニューヨークで会計士の仕事を務めてキャリアをスタートさせた井上社長、日本に帰国して青山フラワーマーケットを起こすまでの過程、起業して分かったこと、若者へのメッセージを伺いました。
Q.日本に帰国して青山フラワーマーケットを起こそうと思ったきっかけはなんですか?
井上:海外で就職したのは会計の仕事が好きだからではなく、条件に目がいってしまったことが動機でした。収入面や海外で働けるということです。
しかし、実際の会計の仕事は過去のチェックなどを行うことがメインなので、自分に合っていませんでした。
それで、1年と少しくらいで日本に戻ってきてプライベートセクレタリーとして個人でイベントを企画するようになりました。ですがイベント運営ではお金が入ってくるのがキャッシュフローで見ると不定期かつ遅いです。
そこで、毎日キャッシュが入ってくる商売をしたいと思いました。ちょうどその頃花博というイベントが大阪で開催されていたので、花だと直感で思い、市場で安く花を買って知り合いなどに売っていました。
まだこの頃は花を売ることを日銭商売として行っていたので本格的には時間をかけていませんでした。
けれど、ある日パリに行ったとき泊まったホテルに花がありませんでした。そこでなんとなく花を買って花瓶に飾ったとき、やっぱり花っていいなと思い、本格的に花を売ることに賭けてみようと決意しました。
Q.いざ、起業しようと決断するときの心境はどのようなものでしたか?
井上:僕は人生において時間を大切にしたいと思っています。
会計士のときは人のお金を管理することに時間をかけていたので、それは自分の性分に合っていなく時間の無駄だと思い辞めました。
起業しようと決意したときも、例え失敗したとしても自分のやりたいことを実現していくことに時間をかけていくのでその先の人生において無駄にはならないと思っていました。なので怖くはありませんでした。
Q.起業当初の思い出に残っていることは?
井上:当初は全国の花屋と比べて安く売っていたので、実際毎日かなりの量が売れていました。だから毎晩社員と焼肉に行ったりして楽しんでいました。(笑)けれど、ある日会計を見たらまったくお金が溜まっていないことに気づきました。
原因として原価率が6、7割で販売していたことが判明しました。しっかりと原価率の管理を行うことの大事さに気づかされましたね。
Q.経営してきて今までで一番の困難は何ですか?どのように克服しましたか?
井上:困難というより、私たちが商売で大事にしていることなんですが、お客さん目線で考えることです。
しかし、商売をしていくといつのまにか商売人目線からお客さんを見てしまいます。
例えば、花を売って袋に入れるとき花が袋から出ないようにセロテープを貼ります。ここまではどこのお店もしていることだと思うのですが、大事なのはこのセロテープの貼り方です。花を袋から出ないようにするためだけに配慮するのは商売人の目線です。
しかし、お客さんは花を袋から出す行為をします。なので、セロテープをきつく貼りすぎてしまうとお客さんがはがしづらくなってしまいます。このようにお客さんが行う行為を考えた上でのサービスが必要になってきます。
Q.経営してきて今までで一番うれしかったことはなんですか?
井上:渋谷にある当店で、高校生くらいの女の子が1本のバラを15分くらいかけて選んでいる姿を見ました。1本150円なのですが、その女の子にとっては人生で初めて自分のために花を買ったようなのでうれしく思いました。
このように今まで花を買ったことが無かったお客さんが当店をきっかけに買うようになっていく光景はいつ見てもうれしいですね。
また、社員との思い出なんですが、うちは全店年末31日まで営業していますが、青山の本店だけがビルの都合上30日までしか営業できません。ちょうどその時売り上げ目標にあとわずか届いていなかった状態だったので、本店の店長が閉まっているビルの前に花を飾って、道行く人に声をかけて見事売り上げ目標に到達したということもありました。とても感動しましたね。
後半に続く