「はあちゅう」という愛称で20代女性を中心に親しまれている伊藤春香さん(26)。学生時代に始めた日記代わりのブログが注目を浴び、書籍化やタダで世界一周をするという企画にまで発展する。「18歳までは引っ込み思案な性格で、やりたいことに何一つ挑戦できなかった」と語る彼女。何がきっかけで「はあちゅう」が誕生したのかそのルーツをたどる。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆 写真・オルタナS特派員=木村絵里)
「引っ込み思案な性格でした」と伊藤さんは幼少期を振り返る。
父親の仕事の関係で、小学4年生は香港、5年生からはシンガポールで過ごす。それまで神奈川県藤沢市で周囲の友人と仲良く暮らしていた環境から一変、いきなり転校生という立場になり、「新しい環境に慣れず友達と上手く付き合えなかった」と語る。
中学2年生の春に日本に戻ってきたが、結局そこでも馴染めずに卒業を迎える。高校でも、「外部の者がたまたまそこにいるような気持ちをずっと抱えていて、その環境に馴染めず、やりたいことにチャレンジできないままの高校生活を送っていました」と話す。
■ 転機はパナマ留学。ラテン系の人生観に衝撃を受ける
転機は、高校3年生の夏にユネスコの奨学金で留学したパナマで訪れる。現地では英語ではなくスペイン語しか通じず、思っていることを伝えることにとても苦労したという。
そんな環境の中で、ラテン系の人々の楽観的な人生観に影響を受ける。
「それまで私は、人生はこつこつと積み上げていくものというイメージを抱いていましたが、ラテン系の『その日が楽しかったら良い』という楽観的な価値観に衝撃を受けました」と伊藤さんは話す。
一日中絵を描いて過ごすホストシスターや、好きなときに好きな物を食べるホストファミリーを見ていると、今まで日本の狭苦しい中で、受験や人付き合いに悩んでいたことが不思議に思え、もっと色々な世界を見たくなったという。
そして、帰国後にある決意をする。
「小さなことには悩まない。やりたいことは全部やる」
これまで18年間の納得のいかない人生から、やりたいことをやる人生に変えていこうと決意した。
大学では、今まで体型や容姿に自信がなく挑戦できなかったチアリーディングや、女子大生の就職を支援するサークルなど、たくさんのコミュニティに所属した。
その後の伊藤さんの人生に大きな影響を与えるブログとの出会いも、その行動力がきっかけで訪れる。
■ ブログとの出会いはホームページの制作知識がなかったから
大学1年生だった2004年、伊藤さんが所属していたサークルの一つでイベントを開催することになり、急遽告知するためにホームページを作成しなければいけなくなった。しかし、制作知識がなく、困惑していた時にホームページの代わりとなるブログの存在を知る。
小学校1年生から日記を毎日続けていたので、書く事には慣れていたという。これを機に日記からブログへ移行する。
■ 企画ブログで一日47万PVを記録する
ブログを始めてすぐに学生ブログランキングというサイトに登録すると、すぐに一日に2000PVほどのPVを稼げるようになった。
「私は学生ランキング2位だったのですが、当時1位を取っていた静岡に住んでいる学生に親近感を感じました。その時に、朝日新聞の学生記者をしていたので取材という名目でお会いすることができました」
「しかし、このままだと、ただお会いして終わりになってしまうので、『一緒にブログをしてくれませんか』と依頼しました」
こうして、クリスマスまでの期間限定企画としてブログで「さきっちょ&はあちゅうの恋の悪あが記」を2004年11月に開始する。一日47万PVを記録して、当時世間の注目を集めていた堀江貴文氏のブログ「社長日記」のPVも抜かし、書籍化も決まる。
2歳の頃から小説家になりたかったと話す伊藤さん。書籍化したときには「こんな形で夢が叶ってしまったことに衝撃を受けました」と振り返る。
■ 25社の協賛獲得で、自己負担ゼロの卒業旅行へ
一つ夢を叶えると、さらに貪欲に生きようと思い、ブログを活用して前人未到の企画を構想する。それが、「70日間タダで世界一周旅行」だ。
ブログを活用した世界一周の事業計画書を作り、協賛企業獲得に動き出す。
行き先は、ペルーやモロッコなど南米やアフリカを中心に14カ国に決定。25社からの協賛を集め、自己負担ゼロの卒業旅行を実現した。
伊藤さんは旅の感想を「協賛企業のコック帽を被りイースター島でモアイ像と撮影した経験や、毎日歩いた歩数や食べたもの、その時の気分を記録することなど、協賛企業ごとの企画がありました。大変なこともありましたが、やりきったという実感と、多くの人とのつながりを得られました」と振り返る。
「協賛金の獲得や旅行中のエピソードをまとめた書籍を出版させて頂くこともできて大変貴重な経験を積めました」
大学卒業後、社会進出した伊藤さんはどのような活躍をしたのか、後半へ続く