生物多様性の保全を促進するため、複数の企業が集まり「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」という団体で共同研究や啓発活動を行っている。3月9日、JBIBは生物多様性に配慮した土地利用調査を目的として、兵庫県の地方自治体、自然・環境再生の専門家とともに、大阪ガス姫路製造所を見学、意見交換を行った。
大阪ガス姫路製造所では、2001年より多様な生きものの住み処としてビオトープづくりや、地域の植物にこだわった植栽を行ってきた。2002年からは兵庫県立「人と自然の博物館」協力のもと、エビネやチトセカズラなどの絶滅危惧種の移植を開始し、80%の定着が確認されている。人が管理し、外来種や動物の侵入の少ない工場緑地は、実は絶滅危惧種の避難場所に適しているという。
同製造所での取組は、今回の土地利用調査で用いられた「土地利用通信簿」でも高得点を得た。「土地利用通信簿」とは、JBIBが開発したもので、事業所の緑地面積やその質、管理体制などを100点満点で採点し、生物多様性への配慮を評価するものだ。JBIBでは、この「土地利用通信簿」など生物多様性評価指標となる実践的なツールの開発に取り組んでいる。今後広く紹介していくことで、企業の生物多様性に配慮した土地利用を促進していく考えだ。
一方、生物多様性というと漠然として関わりが薄く感じる人も少なくないだろう。神戸市環境局の大嶋さんは「例えば医薬品などでも自然の恩恵を受けているが、私たちが生物多様性から恩恵を受けているということを忘れている人は多い。できることから取り組んでいくためにも、行政が中小企業や市民にもPRし、生物多様性の認識を上げていく必要がある」と話した。
参加者は、産学官それぞれの立場で考え協力し合いながら、生物多様性の価値を伝え、保全するための活動を企業活動や市民活動に組み込むこと(生物多様性の主流化)を目指している。(オルタナS関西支局特派員=小林律子)