クラウドファンディングという言葉をご存知だろうか。資金調達や企画実現のためインターネット上で企画を公開し、賛同した不特定多数の人々が協力することで、企画を実現する仕組みだ。「FAAVO(ファーボ)」は全国の都道府県ごとに密着した地域支援型クラウドファンディングのサービスで、京都でも今年8月から京都FAAVOが立ち上がった。この運営を始めた、京都の経営者のサポート事業を行う一般社団法人「京都こころざし倶楽部」理事の箱井孝さん(37)に話を聞いた。(オルタナS関西支局特派員=吉田怜奈)
2012年6月に宮崎から始まったFAAVOは、現在京都を含め、全国11府県に展開した。それぞれの地域で暮らす人はもちろん、就職や結婚などで故郷を離れてしまっても、住む場所に関係なく誰でも参加できる。
今年6月29日に、京都こころざし倶楽部が経営者に対して交流会を行った際「若い力に頼りたい」という意見を聞いた。「京都を盛り上げる団体として新しい切り口のコンテンツを持ちたい」(箱井さん)と考え始めたときに、インターネットでFAAVOの存在を知ったという。
京都に住む一人ひとりの声に耳を傾け、より多くの人々と接する京都支援をしていきたいという考えに合致し、瞬間的に京都で運営を始めたいと感じた。同時に他のクラウドファンディングも調べていたが、FAAVOの地域支援に特化した点に魅力を感じたそうだ。
観光や文化継承など、日本にある多くのビジネスモデルが京都で発祥された。「100年企業の多い、京都全体を活性化したい」。京都こころざし倶楽部が今年の4月1日に立ち上がるきっかけになった想いだ。同団体はその第一歩として、京都の経営者に対し、セミナー開催や会員制倶楽部の運営、ビジネスマッチングなどの事業を行った。
運営団体として地域特化型のクラウドファンディングに関わるのは、新しいジャンルの仕組みを取り入れて、パイオニアになりたいからだという。以前から京都を盛り上げたい気持ちは大きかったものの、実際には京都市内の経営者の方へのセミナーが主だった。今後は企業だけでなく地域とも交流が深まることを期待している。
事業を通して実際に多くの経営者と接したところ、新しい案に賛同するが参加には消極的な様子が見られ、チャレンジ精神があまり強くないように感じられた。特に交流の薄い府下や郊外に多く潜んでいるビジネスチャンスをどう取り上げるかについて、考えていたそうだ。「今までのノウハウをもとに、サポートできる窓口が広がり、より多くの人々へ貢献できると考えている」と箱井さんは話す。
京都FAAVOの運営をしながら、商工会議所や観光課などに、活性化のツールとして使わないかと直接訪問をしている。実際に話を聞くと、クラウドファンディングの存在を知る人は多いが、特産品が売れない難しさや後継者不足など、地域の問題を知ることができたという。
箱井さんは「これらの問題を把握し、それをどうして改善していくかが我々の義務。また、問題が当てはまるのは京都だけに限らないと思う。京都を活性化させる1つのモデルになり、地域支援の方法として全国の人へ広めたい」と話す。
現時点での京都FAAVOの手ごたえについて尋ねると、8月31日に開催したプロジェクト立ち上げのためのワークショップが一番大きかったという。ワークショップには約15人の異なる立場や考えの人が集まった。
FAAVOを新たな地域活性化の手段として考える参加者にはそもそもクラウドファンディングとは何か、立ち上げの手順や規則などを伝えた。箱井さん自身も参加したところ、参加者は普段疑問に思っていることや不安要素などを吐き出し、とても積極的に意見が飛び交う印象を受けた。
「初めての試みだったので、不完全燃焼で終わるかもしれないと思っていた。しかし、参加者の意見が合致し一つのプロジェクトが立ち上がるまで話が進み、 驚きと喜びでいっぱいだ」(箱井さん)。このプロジェクトは現在、公開に向けて準備中だ。セミナーは今後も何度か継続して行う予定で、その模様を記事にしてインターネット上に掲載する。
クラウドファンディング自体、日本に入ってきてから月日が浅い。最近では、iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥(やまなか・しんや)さんが、2012年3月11日に開催された京都マラソンを完走することを条件に参加し、1000万円以上の研究費用を集め、話題となった。
京都活性化に特化した「京都FAAVO」の注目度は大きくなりそうだ。「京都は学生の街。参加者の肩書や経歴に関係なく企画を発表できるため、若い人でも参加しやすいクラウドファンディングの力を使って、より京都を盛り上げていきたい」と箱井さんは意気込んだ。